ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

衝  動  買  い

2024-01-13 11:46:00 | あの頃
 どうやら、『事前の計画がなく、来店してから衝動的に
買いたいという意志が働き購入すること』を、
衝動買いと言うらしい。
 
 振り返ると、そんなスタイルの買い方がなんと多かったことか。
自分自身のことだが、無計画性といい加減さといい、
改めて驚くばかり。
 しかし、結果は失敗もあったが、それで良かったことも多い。
その中から 2つ・・・。


 ① 息子2人が大学生になり自宅を離れた。
家内と愛猫との暮らしが2年目を迎えた夏休み、
二男が1週間ほど帰ってきた。

 久しぶりに3人で買い物をと、
駅前の大型スーパーへ向かった。
 その途中に、近くで建設中の高層マンションの、
モデルルームが公開されていた。
 そのマンションの販売を目的にしているところだ。

 ふと、その日の朝刊にあったチラシを思い出した。
そこに『最終販売』の文字が躍っていた。
 2棟の30階建てが、すごい勢いで売れていると言うのだ。

 それだけの動機だったが、突然興味が湧いた。
「そんなに人気があるマンションがどんな造りなのか」
 モデルルームを覗いてみたくなった。

 家内と二男は、私の誘いにあきれ顔だったが、
「ちょっとだけ」と言う後ろを付いてきてくれた。

 入店すると、待ち構えていた販売員がすぐに応対した。
スーツ姿の男性だった。
 控え目でていねいな感じに好感が持てた。
 
 私は、正直に言った。
「買い物に行く途中、たまたまここが目に入ったので、
どんな感じか見たかっただけです」
 すると彼は「どうぞ、遠慮なくご覧下さい」と、
先頭になって私たちを、2つのモデルルームに案内してくれた。

 その1つが、マンションの角を活用した
モダンな間取りだった。
 居間の片面が広いガラス窓で、眺めのいい南向きだった。
3LDKの配置も工夫されていた。
 そのお洒落な造りに、
私はすっかり魅了されてしまった。

 「最近のマンションは、こんな素敵なんですね」
私の驚きに彼は静かな口調で応じた。
 「ご覧頂いたもう1つのモデルルームに比べると、
こちらはずっとずっとお買い得かと思います。
 でも、この物件は1階から20階までに1室ずつで、
残りの3室も抽選になるかと思います」

 買う気など全くなかったはずだ。
家内と新居を話題にしたこともなかった。
 ただペットを飼えない団地で、
愛猫と居ることだけは気がかりだった。
 だから、突然訊いた。
「このマンションでは犬や猫を飼うことができますか」
 家内は、ビックリした顔をした。
「はい、ペット登録をして頂くとご一緒に暮らせます」。

 そこから先は、応接セットのある部屋へ通され、
価格や契約手続きの説明を聞いた。
 そして、印鑑がないのに仮契約書にサインまでして店を出た。

 さて、これには後日談がある。
契約から1年後に、マンションは完成し入居した。
 その翌年、大学を卒業した二男は、
そのマンションを販売した不動産会社へ入社した。

 大手不動産だが、社内でたまたま、
モデルルームのあの販売員男性と一緒に、
仕事をすることになった。
 彼は言った。
「あんなに簡単に売れたお客さんには,
今までに出会ったことないよ」と。

 
 ② 次は、マンション購入とは、
比較にならない買い物である。
 当地で暮らし始めて数年が過ぎた時のことだ。
 
 年齢からなのか、
睡眠に不満を感じるようになった。
 思い切ってベッドを変えてみようかと考えていた。

 当地には、老舗の家具店がある。
新聞にチラシが入ってきた。
 ベッドのセールの案内だった。

 急いで買わなくてもいいが、
快眠できそうならと行ってみた。
 
 まんまとベテラン店員さんのセールスに、
その気になってしまった。
 きっといい眠りが待っていると期待した。

 「いいベッドには、あわせてもう1つが必要です。
それは、羽毛の掛け布団ですよ」
 店員さんは自信満々に言った。

 これまた当地には、老舗の寝具店がある。
それに、羽毛布団なら通販でも買える。
 そう思っていた矢先だ。
「当店でも数は少ないのですが、売っています。
いかがですか?」
 ビニールケースに入った布団を2点、
棚から下ろしてくれた。
 
 売れ残り品のようで、ほこりも一緒に降りてきた。
その1つの値札を見た。
 10数万円が2万数千円に訂正されていた。
 
 「2枚お買い上げならば、4万円丁度にします」
「じゃ、それも!」
 思わず言ってしまった。

 翌日、ベットと羽毛布団が届いた。
ベットを置き、羽毛布団をその上に広げてみた。
 意外だった。
今まで使っていた羽毛布団に比べ、
はるかに厚みがあったのだ。

 数日、その布団で寝てみた。
見た目の印象からか、重みを感じ心地良くなかった。
 やはり売れ残った粗悪品を買わされたかと悔いた。

 快適なベットでの睡眠のためにと、
今までの薄くて軽い羽毛布団に切り替えた。
 よく眠れた。

 それにしても、
あの厚手の羽毛布団が目障りになった。
 目にするたびに、すぐに不快感が蘇った。

 1年半前になるだろうか。
当地に2件目のリサイクルショップが開店した。
 開店記念に高額買取セールをしていた。

 「この機会に思い切って!」
あの羽毛布団を買取ってもらおうと、
勇んで、お店に持ち込んだ。
 しかし、「残念!」
1度でも使用した布団は「買い取れない」と、
断られてしまった。

 落胆した。 
「粗大ゴミにするしかないか!」
 すると、急に4万円の羽毛布団がかわいそうになった。
「なら、もう1度使ってみよう!」

 ところが、使い続けると「意外や意外」、
そん色のない軽さだった。
 その上、厚みの分だけ動きが少なく、
ゆったり感があった。
 
 羽毛だから、当然季節によって快適さが違う。
冬の今は、目覚めてからもいつまでも、
ぬくぬくとその布団に包まれていたくなる。
 そして、時々ふと思い出して苦笑いをする始末だ。




       雪景 有珠善光寺

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 晴れたり曇ったり その11... | トップ | 私『楽書きの会』同人 (8) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

あの頃」カテゴリの最新記事