銀河夜想曲   ~Fantastic Ballades~

月が蒼く囁くと、人はいつしか海に浮かぶ舟に揺られ、
そして彼方、海原ワインのコルクに触れるを夢見、また、眠りにつく……

バッハ フルート(ヴァイオリン)・ソナタ ト短調 BWV.1020

2007年04月20日 23時56分28秒 | クラシック音楽
J.S.バッハ作のフルート・ソナタは無伴奏のものを含め全部で7曲あるが、このBWV.1020は偽作とされていて、次男のC.P.E.バッハが作曲したと考えられている。更にこのソナタを伝える全ての資料はヴァイオリンをソロ楽器として掲げているそうだが、ヴァイオリンの機能(特に音域)が十分に活用されていなく、またJ.S.バッハのフルート作品との共通点が多いため、フルートで演奏してこそ真価が発揮されるとの事。

偽作であろうとも、この曲(とりわけ第1楽章)の構築美と典雅なメロディーには確固たる作品としての存在感を受けるし、また、確かにヴァイオリンで聴くよりはフルートで演奏された方が耳に心地良い。上記の7曲のフルート・ソナタの中に加えてもこの作品の力強さは揺るぎなく、好みで言えばそのトップクラスに入る。

一聴して心を奪われるのが、トップ画像のニコレ&リヒターのCD。1963年10月の録音で、決して流麗とは言えないが1音1音がはっきりと自己主張しているニコレのフルートがこの曲想に似つかわしく、そして特筆すべきは、何と言ってもリヒターの奏でる音色の厚み。マイクの集音効果(作用)もあるのかもしれないが、前へ前へと進み出る勢いと、線香花火の火花が2倍3倍ぐらいにまで膨らんだかの様な音の煌き・その響きが素晴らしい。

併録は、
フルートとチェンバロのためのソナタ 第1番 ロ短調 BWV.1030
フルートとチェンバロのためのソナタ 第2番 変ホ長調 BWV.1031
カンタータ 第4番 “ キリストは死の縄目につながれたり ” BWV.4
直輸入版 WPCS-4818
輸入版 0630-11427-2



ちなみにBWV.1020を含め、フルートとオルガンで演奏されたフルート・ソナタのCDもある。

ウィーン・フィルの第1フルート奏者ディーター・フルーリーと、ヴェグマンというオルガニストによるものだが、こちらはオルガンが通奏低音を務めている事もあって各作品の生命感の稜線が際立って浮かんでこない。良く言えば幻想的。一方、フルーリーの音色はニコレとは対照的で非常に流麗。聴いているとそのままどこか遠くへ誘われていかれそうな、そよぐ風の歌の様である。