作 小川未明
絵 酒井駒子
偕成社
小川未明の代表作として名高い “ 赤い蝋燭と人魚 ” は、いわさきちひろを含め何人かの絵本作家が絵を手掛けている。
その中にあって、この絵本は『幽玄』という言葉が非常に似つかわしく、酒井駒子の仄暗い世界観が文章と上手く溶け合い、また、見事に凝縮されている。原作の童話からして人間の業や人魚の感情起伏を鋭く描き出しているのだが、そこに酒井駒子の絵が挿す事で一層それは能弁さを帯びる。
何より特筆したいのは、物語冒頭における文章と、それに付帯する絵の頁配分である。これ程までに読者をドギマギさせる絵本もそうそうないだろう。原作からこの物語に触れた者としては、「よくぞこの手法で制作してくれた!」という思いにさせられる。
蝋燭の描き方もいい。とりわけ23頁で見られるその美しさには暫し目を奪われる。
荒れ狂う海と、沈静した海。そこに棲む生き物達の、声無き声。作品の全体像は物静かな気配であるはずなのに、酒井駒子のタッチはその感興だけを抱いて読み終えるのを許さない。本を閉じても、海鳴りに交じって底知れぬ、畏敬すべき魂が立ち昇ってくる。
心の奥まで轟いてくる、“ 赤い蝋燭と人魚 ” の傑作である。
絵 酒井駒子
偕成社
小川未明の代表作として名高い “ 赤い蝋燭と人魚 ” は、いわさきちひろを含め何人かの絵本作家が絵を手掛けている。
その中にあって、この絵本は『幽玄』という言葉が非常に似つかわしく、酒井駒子の仄暗い世界観が文章と上手く溶け合い、また、見事に凝縮されている。原作の童話からして人間の業や人魚の感情起伏を鋭く描き出しているのだが、そこに酒井駒子の絵が挿す事で一層それは能弁さを帯びる。
何より特筆したいのは、物語冒頭における文章と、それに付帯する絵の頁配分である。これ程までに読者をドギマギさせる絵本もそうそうないだろう。原作からこの物語に触れた者としては、「よくぞこの手法で制作してくれた!」という思いにさせられる。
蝋燭の描き方もいい。とりわけ23頁で見られるその美しさには暫し目を奪われる。
荒れ狂う海と、沈静した海。そこに棲む生き物達の、声無き声。作品の全体像は物静かな気配であるはずなのに、酒井駒子のタッチはその感興だけを抱いて読み終えるのを許さない。本を閉じても、海鳴りに交じって底知れぬ、畏敬すべき魂が立ち昇ってくる。
心の奥まで轟いてくる、“ 赤い蝋燭と人魚 ” の傑作である。