ネイチャーサロン by こうちフィールドミュージアム協会

 自然をより深く知ることの楽しさを,お茶会のような雰囲気で語り合いましょう.

プラナリアを切ってみよう

2021-11-30 16:28:04 | 日記
 さて,プラナリアを切ってみましょう.
 切るための道具は写真の通り.1は手術解剖用のメス.2と3はカミソリ.4はカッターナイフ.どれを使っても良いけれど,1は刃がカーブしているのに対し,2〜4は直線です.
 直線の刃の場合,プラナリアを置いた台の表面と刃が平行でなければ,プラナリアを切断することができない.そのためには,図示しているように,台をけっこう高くする必要がある.私は腰高シャーレ(深さ6cm)を上下ひっくり返して台にしています.解剖用のメスで切る場合は,高い台座がなくても,特に問題ありません.

 切り方は簡単.「まな板」の上に1匹のプラナリアを置く.その場合,水をできるだけ少なくしておくと,プラナリアがあまり動けないので,切りやすいでしょう.
 うまく切れたら,別に用意した小さな容器にプラナリア飼育用の水(汲み置き水道水)を入れて,切れたプラナリア断片をそこに回収します.その時,小さなピペット(スポイド)があると便利です.

 まずは2つに切ってみよう.虫の中央部を横断するように切る.すると前半分は頭部は無傷だけれど尾がない.後半分は尾は無傷だけれど頭がない.
 前半分は尾をつくる.後半分は頭をつくる.それぞれ,どの様に作られるのか? 毎日,どういう状態なのかをスケッチしておこう.観察した時刻を記録しておくことも大切です.
 たとえば,眼のない断片に眼ができて来るまでの時間(日数)は,断片の大きさとか,切られ方によって,変わってくるだろうか? 

 言わずもがなですが,プラナリアを切断するときは,必ずおとなが立ち会うこと.事故が起きないように,刃物はしっかり管理してください.
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プラナリアを探そう

2021-11-27 19:38:42 | 日記
 実体顕微鏡を利用できる状態が実現したら,野外でプラナリアを探してみましょう.家庭排水などで汚染されてないような場所で,水がチョロチョロと流れている側溝などを探すと良いでしょう.

 プラナリアを探していて最近よく遭遇するのが,鼻や耳の尖ったプラナリア.これは外来種で,アメリカツノウズムシといいます.模式的に描くと,図のaが日本の在来種(ナミウズムシ).図のb が外来種(アメリカツノウズムシ)です.再生実験をするのが目的であれば,在来種でも外来種でも問題ありません.しかし,時には在来種を,時には外来種を使って,というのでは話がまとまりません.混ぜこぜにしないで,在来種なら在来種を使う,というふうに決めておいた方が良いでしょうね.

 水量が多かったり,流れが急だったり,というような場所では,外来種に遭遇することが多いような気がします.あちこちの側溝や小川で探してみて,プラナリアのいた場所,いなかった場所を記録しておくと良いでしょう.地図の上に,いた場所,いなかった場所を,印(しるし)を付けておきます.
 「プラナリアはどういう所にいるか?」だけでも,自由研究の立派な課題になります.「どういう所にいるか.在来種と外来種の比較」などという研究もできそうですね.
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実体顕微鏡を使ってみる

2021-11-25 23:04:10 | 日記
 プラナリアは面白そうだけど,問題は道具. 実体顕微鏡なんて持ってないし.... 

 というわけで,さて,手軽に実体顕微鏡を使えないものか?

 ネットオークションがお薦めです.ヤフーのネットオークション「ヤフオク」で「顕微鏡」を探すと,実体顕微鏡も出ています.

 写真は私のお気に入り.「ヤフオク」で入手したものです. 解剖顕微鏡 DN-30.製造元は中村理科工業(現在の社名はナリカ)だそうです.古い顕微鏡です.もう製造してないでしょうね.

 ニコンの「ファーブル」などと同じ,いわゆる実体顕微鏡だけれど,双眼でなく単眼です.
 単眼はシンプルで軽く,使いやすい.また接眼レンズ(1)は,通常の顕微鏡の接眼レンズを流用できる.本来は拡大率(総合倍率)が20倍程度だけれど,接眼レンズを変えることで簡単に総合倍率を変えることができる.

 ちなみに,照明(2)は百均店で見つけた電池式のもの.見たいもの(3)をポンと置いて観察します.

 ステージ(4)は円盤で,オモテが白,ウラが黒.この写真では黒の面を使っています.プラナリアとかボルボックスを見るには白い面を使うと良い.一方,ヒドラとかアメーバを見るには,黒い面のほうが適しています.

 ネットオークションでは,「ファーブル」は,あまり出ていません.メーカー品(ニコン)だし,価格もよく知られているせいか,出てもすぐ高値がつきます.「ファーブル」と類似の実体顕微鏡としては,狙い目はビクセンの「ミクロボーイ」という機種.これならネットオークションで,かなりリーズナブルな価格で入手できます.

 いずれにせよ,机上にデンと置いて使うような重い大きな機種でなく,シンプルな小型軽量のものを選べば良いでしょう.拡大率が可変のものは機械も重いので,固定倍率のもの(x20程度)がお薦めです.

 ネットオークションは冒険です.失敗しても痛手をこうむらないために,あまり高額な取引にならないように,注意が必要です.
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プラナリアを調べてみよう

2021-10-14 04:57:13 | 日記
「理科の自由研究」のテーマ.今回は,プラナリアを紹介します.

 頭をチョンと切り落としても死なないで,やがて頭ができてくる.切っても切っても,どんな切りかたをしても,やがて元の形になる.ふしぎな動物プラナリアについて調べてみよう.
プラナリアをさがせ.
 プラナリアは,きれいな水が流れていて,土や泥がたまってないコンクリートの側溝などにいる.水の中の小石をひっくり返してみると,丸くなったプラナリアがくっついている.絵筆を水にぬらして,それでプラナリアをそっと石からはがして採集する.
 あちこちの側溝や小川でさがしてみよう.プラナリアのいた場所,いなかった場所を記録しよう.かんたんな地図をかいて,いた場所,いなかった場所を,しるしを付けていこう.
 「プラナリアはどういう所にいるか?」を説明してみよう.

飼ってみよう.
 小さな容器を用意する.プラスチックのタッパーが良いかもしれない.私は「100円の店」で見つけた直径6cm,高さ4cm程度のタッパーウェアを使っている.この小ささなら,飼育しているプラナリアをそのまま実体顕微鏡で観察できる(写真).
 水深は1センチぐらい.それにプラナリアを入れる.1匹だけでも,たくさん入れてもかまわない.
 このとき水は,「くみ置き水道水」を使う.ペットボトルに水道水を入れて,ゆるく栓をして,1日以上置いたものを使う.使ったぶんを水道水で補充しておくと翌日また使える.
 プラナリアを飼っている水は,毎日とりかえる.つまり水をできるだけ捨てて,新しく水を入れる.餌(えさ)をやったら水がよごれるので,その時は早めに水をかえる.水がよごれると,プラナリアは死んでしまう.
 とりあえず,餌は与えないことにしよう.餌がなくても大丈夫です.
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さわやか自然百景

2021-03-23 19:26:20 | 日記
 NHK「ダーウィンが来た」で今も使われている「天敵」という用語.もういい加減にやめてほしいものです.
 10年以上前に書いた記事ですが,ここに転載しておきます.

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June 26, 2010
さわやか自然百景 (2)

 NHKの「さわやか自然百景」という番組がある.ネイチャーもの,というのだろうか.放映の時間やチャンネルを知らないけれど,偶然に遭遇するとつい見入ってしまうことが結構ある.
 今朝もそのパターンで,川魚やエビの映像につられて見てしまった.水俣川の生物とか不知火海の藻場が紹介されていた.その中でナレーションが「捕食者」という言葉を使った.これは大ニュースである.

 捕食者とは,生態学の用語である.
 食物連鎖,つまり「食う - 食われる」の関係を扱うとき,「食う」ほうを捕食者(predator),「食われる」ほうを被食者(prey)という.生物学では基本的な概念の1つであり,特に難しい意味付けもないのだけれど,日本語で日常的に使用される語ではない.そのせいか,テレビ番組などでは従来使われて来なかった.
 つまり「捕食者」ではなくて,「天敵」という語がしばしば使われてきた.天敵(natural enemy)の正確な意味を知らないが,害虫や害獣を駆除するために利用される動物,というような意味合いの言葉だろう.「ハブの天敵マングース」などという言い方もされることから,「あいつはオレの天敵だ」などと言う表現も発明された.この場合は「苦手な相手」という程度の意味だろうか.

 マングースはともかく,「天敵」には害虫害獣を退治するものというニュアンスがある.つまり純然たる生物学の用語というよりは,人間中心の価値観を内包する語である.具体的には捕食者だけでなく寄生者(寄生生物,parasite)をさすことも多い.たとえばトビコバチ類は農業や園芸関係では重要な天敵生物である.
 じつは寄生蜂(トビコバチなど)や寄生蠅は厳密には寄生者ではなく,捕食寄生者(parasitoid)という.が,話が面倒になるので,深入りしないことにしよう.

 とにかく,「捕食者」と「天敵」とは意味内容が少しズレている.「捕食者」は一般になじみの薄い語であり,多分それに対する抵抗感から,NHKは「天敵」という語を使うようになったのだろう.悪く言えば放送局が言葉の本来の意味をねじ曲げて使用し,一般に広めてしまった誤用である.「公害」がマスコミを賑わし,「生態学」や「食物連鎖」が耳新しい分野であった時代ならともかく,生物の生活に対する人々の興味や知識が大きく拡大してきた現在,いまだ「天敵」の語を使用することに,あまり価値があるとも思えない.「天敵」という語の使用は本来の用法に限定し,本来の用語である「捕食者」を使うようにした方がよいと思う.

 そもそも学術用語は,難しすぎたり不合理に見えるものもあるが,別の言葉を発明したり恣意的に転用したりなどということは,本来あってはならないことである.仮にプロの研究者がそういう事をしたら,大きな批判を受けるだろう.もちろん非プロないし一般人なら批判を受けることもないし,仮に批判されてもどうってことはない.しかしマスコミはどうだろう? 非プロだからといって言葉を恣意的に使い流布させて良いのだろうか? 私はおおいに疑問に思う.

 同じ趣旨のことを,かなり以前に書いたことがある.
http://plaza.rakuten.co.jp/tosana/diary/200712280000/
その時は「天敵」のほかに「受精卵」という語も問題にした.「受精卵」(fertilized egg)はマスコミでは,しばしば「胚」(embryo)と同義に用いられる.こちらの方も,そろそろ再考すべき時期だと思う.

 水俣川でカワムツを狙っているのも,不知火海の藻場にいるのも,「天敵」ではなくて「捕食者」である.その方が正しいし,それで何の問題もない.すっきりしたナレーションを聞いて,番組のタイトル通り「さわやか」な気分になった.



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