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教育(3)

2012年11月11日 | 研究
プラトンの時代に起きた口承から識字への移行の完成は、西欧においては紙の導入が遅れたこともあって、グーテンベルクの発明まで残された。プラトンの時代の口承とアルファベット識字の文化抗争に最初に注目したのはE.ハヴロックであるが、マクルーハンはハヴロックとは別に、アルファベットが西欧人の知覚環境を変えてしまったことに、エリザベス朝期の文芸の研究を通じて気づいた。グーテンベルクの発明から100年を経たエリザベス朝の人々は、中世の共同体的世界と活字本の浸透による個人主義との間で引き裂かれていた。それは、現代の西欧の個人主義が電子的技術の同時的・共同体的な志向性の前に宙吊りになっている状況にそっくりであった。ジョージ・スタイナーは、マクルーハンのこの主張に同意しつつ、西欧の個人主義が電子情報環境に適応することの困難さをこう述べている。

「だがわれわれは、電子的経験の<場>の新たな自発性、偶有性、<全体性>を、まだ身につける用意ができていない。印刷物や、印刷が西欧人の心に無理に植えつけた感情や思考の習慣のいっさいが、五感のもつ創造的な原初の統合力を破壊してしまっているためである。ひとつの感官-読む眼玉-しかないコード言語に、<すべて>を翻訳することで、印刷術は西欧人の意識を催眠にかけ断片化してしまった。われわれは、ブレイクのいう<ニュートンの眠り>の中に、身動きもならず横たわっている」(「マーシャル・マクルーハンを読むには」)

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