goo

電子メディアと脳

2012年11月06日 | 研究
今日、コンピュータ脳、ゲーム脳、ケータイ脳など、メディア技術が人の脳活動に及ぼす影響について論じたものは数多ある。脳科学は、1970年代、脳波や血流の状態を簡単に測定できるようになったことから急速に発展した。マクルーハンは晩年の1970年代、最新の脳科学の成果を取り入れながら、自身のメディア論の正しさを立証することに熱心だった。ロバート・H・トロッターが『もう一方の脳半球』で示した左右の脳半球の働きの違いの図を引用しながら、東西文化の違い、文字文化と非文字文化の違い、活字文化と電子メディア文化の違いは、メディア諸技術が左右の脳半球に及ぼす異なるバイアスの結果である、との論を展開した。

しかし、今日でもそうだが、脳科学者、脳神経学者たちは、専門外の者が脳について軽々に論じることをひどく嫌う。右脳開発とか「脳力」開発の類の本はベストセラーになればなるほど、似非科学、トンデモ本的な扱いを受けることになる。マクルーハンのメディアと脳の主張も、当時としてはあまりに新奇すぎて真面目に取り上げられることはなかった。しかし、「活字メディアは左脳の断片的、直線的、連続的、分析的、論理的思考を強化し、口承あるいは電子メディアは右脳の包括的、象徴的、同時的、情緒的、抽象的な思考を強化する。西欧文化はアルファベット識字の影響で優勢となった左脳の文化であり、口承あるいは非アルファベットの東洋文化は右脳の文化である」とのマクルーハンの主張は、今日、経験的に受けいれられる主張である。欧米人の論理思考はアルファベットと無関係ではなさそうだし、文字は何であれ「本の虫」は総じて理屈っぽく、全体把握ができず融通が効かない。一方、ケータイ世代に理屈を言っても通じないし、忍耐を必要とする分析的思考は苦手のようだ。四六時中何らかの電子メディアを身にまとっている現代人は、そのメディアのリズムと形式の中で生きているのであり、脳がそれに順応していくことは当然と思われる。メディアの流すコンテンツにだけ注意を奪われていると、「本当の強盗」に心を奪われかねない。そうした影響の事象、事件が確実に増えている。
goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする