真夜中の街頭に思案にくれて立ち尽くしている日本人旅行客夫婦の姿がある。
この状態を、獲物に狙われたらひとたまりもない。
そういえば最近セブ島刑務所から9人が脱獄、6人がまだ逃走中と新聞で読んだ。
3人は家族と会ってから刑務所へ帰って行ったという。
危険を感じた私たちは、先ほどのホテルに引き返した。
ロビーでルームキーを見せ「ゴールデンピークホテルへ帰りたい」とお願いした。
するとホテルマンは、「OK!」と外へ出て停車中のタクシーに「この二人をゴールデンピークホテルへ」と告げているようだ。
しかしこのタクシーは、ホテル専用のタクシーではない。
単に客待ちしているタクシーである。
ホテルマンは「プリーズ」と車のドアーを開けて待っている。
大丈夫かな?と思いながら乗り込んだ。
オレンジ色した街灯がこうこうと深夜の街を照らしている。
しかし、真夜中の1時近くになると人通りは全くなく森閑としている。
次第に不安になって来た。
どうしてまた、こんなことになってしまったのか。
一難去ってまた一難。
先ほどもみほぐしてもらった肩はガチガチに固まっていた。
リスク管理は人当てにできない。
自分で確認しなければならない、と反省するがこれまた後の祭り。
車は、大通りから突然、静かな小道へと入っていく。
「あれ!」来るときはこんな小さな道は通っていない。
すべて賑やかな大通りを来たではないか。
なぜこんな小さな道を行くのかと疑念がわいてきた。
「大丈夫か?」と言いようもない不安が襲いかかってきた。
でも、運転手とうかつに話しもできない。
「日本人だな」と見破らてしまう。
したがって妻とも会話ができない。
いや、すでに敵さん、感づいているかもしれない。
そういえば、この運転手、時々ミラーで私たちを睨む。
人相も悪い。
口ひげをはやし、眼光も険しい。
脱獄囚が運転手に化けているやも?
気持ち悪いことこの上なし。
車内に異常な緊張が走る。
沈黙のまま車は走る。
私の目も再びサル眼で血走る。
マニラ空港での恐怖が頭を走る。
(続く)
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