朝比奈伝の装丁

2008年04月05日 | 指揮者 朝比奈隆伝 取材日記
大フィルに岡さんというフルート奏者がいた。
朝比奈は豪快にみえるが、大フィルではすべての楽員とわいわいやっていたわけではない。お気に入りの楽員はいたのである。女性にかぎらず男性でも。

たとえば、男性なら日名弘見だ。彼のことはまた後日。
それで岡さんである。岡さんへの取材で、わたしはその部屋の壁に不思議なものを見つけた。
「あれは?」
「あれは朝比奈先生の指揮を絵に書いたものなのよ」

それはいま明確にどのようなという説明ができない。もうそれを見たのが何年にも前になるからだ。朝比奈がどういう指揮ぶりなのか、音楽の楽譜の上にその指揮の絵が描いてあったように思う。なんでも朝比奈にある絵描きさんがくれたものだそう。それを朝比奈が岡さんにプレゼントしたのだ。

それは額装されていた。
私はあれを本のカバーかなにかに使えないかと、そのときから考えていた。
「そう、じゃ、いついらっしゃる?」

日時を約束した。
「じつはきょう(四月四日)は、わたしの誕生日なの」
と岡さん。
「大フィル時代の思い出を書いた本をつくって、きょうのコンサートでみなさんにお配りしようと思うの」
彼女は阪神間でリラックスコンサートを主催している。
「朝比奈先生の指揮の悪口なんかもたくさん書いてあるのよ」
「読みたいですね。岡さんがいってらした大フィルの扇町時代の楽しい雰囲気が出ている本なのでしょう」
「え? ええええ!! そうね、そう。出ているかもしれない。いらっしゃるの楽しみにしているわ」
どんな絵だったか、わたしいまからわくわくしている。









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