杉村春子没後10年

2007年03月22日 | 読書、そして音楽と芝居と映画
今年は、杉村春子没後10年にあたる。「女の一生」「欲望という名の電車」「華岡青洲の妻」「鹿鳴館」など、杉村ほど多く当たり役をもつ女優はほかにない。

映画監督の小津安二郎は「杉村は僕の映画の4番バッター」といい、黒澤明、成瀬巳喜男らの作品でも欠かすことのできない女優でした。

実の父母を知らない出生の秘密、「女の一生」の作者森本薫との恋愛、三島由紀夫や福田恒存との確執から起きた上演中止意見、文学座の分裂・・・。GHQの恋人。その人生は毀誉褒貶相半ばし、波乱万丈のものでした。

四月四日が命日です。

明日は、白河郡山「マイタウン白河」にて19時より、立教志塾主催の文化講演会で同様のものを行います。
昨年は桜井よし子さんが講演をしたそうです。この団体はかつて藩校であった「立教館」から名称をとった地域振興を促進するための推進役となっている白河の団体です。地域の暮らしをどうやったら発展させることができるか・・・などなど。くわしくは以下のほーむページで。
http://www.shirakawa.ne.jp/~rikkyou/menu.htm







幽閉者

2007年03月06日 | 読書、そして音楽と芝居と映画
わたしの年上の友人に、赤軍派の重信房子と高校時代に弁論大会で一、二を競ったという女性がいる。
この人、とっても面白い。
彼女自身は人生を縦横に、左寄りでなく、右に左に(!)と謳歌している人物である。
この彼女は、重信房子が逮捕された直後、赤軍派になる前の高校時代の重信房子を「文藝春秋」に書いた。

その彼女とともに、岡本公三がモデルという映画「幽閉者」を見た。
最初の出だしはテルアビブで乱射するシーンだが、これは抽象化されていて、なかなか面白かった。しかし、その後逮捕されてから延々とつづく拷問に観客には席をたつ人もあった。

ちょっと長すぎるのでは。ここでは岡本という名前も、赤軍という名前も出てこない。イスラエルということもなく、イスラエル風の国旗とか、パレスチナ風のものとか、すべてが明らかにされないのである。

拷問が主題だったのかと思うほどだが、本来ならパレスチナ解放をめざす爽やかさなどが示されるべきだったのでは、と思う。

獄中の重信は、この映画が黒字になること、儲かることをねがっているようである。
男が解放され、キャンプにもどると、そこには重信風の女性がまっていて、これが荻野目慶子だった。「あら、シゲに似てる」とわたしの脇で、重信の友人がささやく。

映画館は80席ほどのユーロスペースであるが、十名もはいっていなかった。
これではあまりだとおもったが、封切り後はもうすこし入りはよかったらしいよ、重信さん!


途中、埴谷雄高の小説やら評論やらの文章が用いられているようである。それも果たしてこの男の内奥をしめすのかどうか。
どうもわたしとしては、これは映画としてはあまり感心できない。

もうちょっとなんとかならないものか。
時代を代表する人物なのだから、それに直接彼をしっている人が監督なのだから、実在の彼を浮かび上がらせて欲しかった。もうすこし、彼らの時代を知らないわれわれに迫る実在人物を造型してほしかったと思うのである。