蟻の兵隊

2006年08月08日 | 読書、そして音楽と芝居と映画
渋谷のイメージフォーラムにて「蟻の兵隊」を見る。

終戦のとき中国の山西省にいた日本軍のうち2600人が国民党系の軍閥に合流して、その後4年間も国共内戦で共産党軍と死闘をつづけた。生き残った人々は昭和29年になって帰国したが、かれらは自分たちが残留したのは、日本軍の命令によるものだったと主張して日本政府に補償をもとめる訴えを起こす。しかし、裁判ではポツダム宣言に違反するためか(終戦後も戦争をつづけたという事実を政府は認めたくないから)退けられたままである。

 カメラは80歳半ばになる奥田和一氏を追う。奥田は、当時の日本軍の司令官が戦犯追及を逃れるために軍閥の将軍と密約をかわして部下を売り、自分は偽名で日本に帰国したという証拠を探すために、中国の役所、公文書館などを訪れる。かつての戦場では、当時のみずからの体験を振り返る。
彼の口から語られる言葉は重い。陸軍での訓練、彼らの行動を見ていた中国人、はては強姦された女性自身による回顧もある。この老年の中国人女性の顔の、なんと穏やかで美しいことよ。奥田自身の戦争体験、戦争犯罪も語られ、このドキュメンタリー映画にひとかたならぬ感銘を受けた。

この映画と日本の戦争を風化させてはならない・・・という思いを抱く。

わたしは映画館よりチラシを持ち帰って、近所にある街の掲示板に張りまくってしまった。
どうしても見て欲しい映画である。