散歩と俳句とスワローズ

2016年に大野鵠士宗匠と出会い
芭蕉・支考由来の「美濃派獅子門」に入会
日々俳句生活を楽しんでいます

【10月号・主宰の24句】青竹の一と節満たす冷し酒 鵠士

2022年10月15日 | 主宰句・主宰句鑑賞
初秋  大野鵠士
【獅子吼1002号(2022年10月発行)掲載】

海の日や海より生まれたる命
・季語 海の日(晩夏) ※七月第三月曜日
・羊水は海水と同じ成分。生き物は全て海の中で生命をもらって生まれてくる。

まだ飛んでゐたる飛魚雨よ止め
・季語 飛魚(三夏) ※傍題:あご、とびら
・トビウオの飛行距離は普通で100mから200m、高さは最高で10mにも及ぶとか。

老鶯の声の谺よ小糠雨
・季語 老鶯(三夏)
・夏になれば鶯の生息地は山中に移り、森の中に谷渡りの激しい声が谺する。

恋路てふもの蟇にもあらむ
・季語 蟇(ひきがえる、三夏)
・見かけはグロテスクな蟇も恋をする。恋路は闇、悩ましい思いをしている蟇も。

核の傘海月の傘といふもあり
・季語 海月(くらげ、三夏)
・核の傘に守られている日本。実は海月の傘のように頼りないのかもしれない。

宇宙より戻りし金魚健やかか
・季語 金魚(三夏)
・宇宙酔実験で毛利さんとスペースシャトルに乗った弥冨の金魚、今も元気か。

賭け事は一切知らず冷奴
・冷奴(三夏)
・清廉潔白、俳句一筋。芭蕉、支考と同じ道を行く。でもお酒は嗜まれます。

麻暖簾亭主は昔力士とや
・季語 麻暖簾(三夏) ※主季語 夏暖簾
・相撲観戦は大好きです。ちゃんこ料理のお店の夏のメニューは何だろう。

青竹の一と節満たす冷し酒
・冷し酒(晩夏) ※主季語 冷酒
・梅雨明から冷酒の季節が始まります。青竹から酌む冷し酒は香りも良くてさぞや美味しい・・。

杖となる前に食はるる藜あり
・季語 藜(あかざ、三夏)
・アカザは畑地に自生する一年草で若葉は食用に。茎は丈夫で乾かして杖とする。

桃源郷より帰りけり昼寝覚
・季語 昼寝覚(三夏) ※主季語 昼寝
・会員の句の選句や俳句誌への寄稿は夜中になる事も多い宗匠は昼寝も必須。桃源郷でどんなよい夢を。

堪へてをりこの世涼しく生きむため
・季語 涼し(三夏)
・気になる事も腹の立つことも。自分のペースを守りながら生きるためには、堪えることも多くあり。

一つ葉の取り囲みたる石井かな
・季語 一つ葉(三夏)
・一つ葉は常緑のシダで葉の長さは20センチほど。尖った長楕円形で肉質厚く、長い柄に一枚ずつ直立する。
・石井は石で囲んだ井戸、または、岩を穿って作った井。

向日葵は直立地球回りつつ
・季語 向日葵(晩夏)
・ちょっとシュールな一句です。音読すると、「り」の反復が耳に心地よく響きます。

蝉時雨摑み所のなき形
・季語 蝉時雨(晩夏)
・音を形として捉えようと試みますが、摑みどころなく茫洋と広がります。

かたばみの花にやさしくなる心
・季語 かたばみの花(三夏) ※主季語 酢漿の花
・小さな黄色いかたばみの花。眺めているだけで硬い心がほどけて来るようです。

峰雲に届きさうなる梲かな
・季語 峰雲(三夏) ※主季語 雲の峰
・梲(うだつ)の町並みは美濃市によく見られると聞きます。梲の上がる家は裕福なお家。

星合や駅のピアノも奏でられ
・季語 星合(主、初秋) ※陰暦七月七日
・牽牛織姫の天の川のデートシーンに、駅ピアノの美しい演奏が響きます

秋暑し小骨丸ごと嚙み砕く
・季語 秋暑し(初秋) ※主季語 残暑
・小骨をしっかり噛み砕いて初秋の暑さを吹き飛ばす。

皆影絵めきて動ける踊かな
・季語 踊(主、初秋) ※傍題 盆踊
・越中小原風の盆のモノクロームの風景。傘を被った踊り子のしなやかな手足の動きが美しい。

秋蝉や水も電波も透きとほり
・季語 秋蝉(しゅうせん、初秋) ※主季語 秋の蝉
・秋の蝉の声。透き通るものの例として水と電波とは、独特の組合せ。

秋萩を慕ふか虻の黒光り
・季語 秋萩(初秋) ※主季語 萩
・黒光りする虻は愛でる対象には程遠いけれど、萩の花は美しい。

   「オカリナ三十分温めて」宗次郎
新涼や土の中より音生まれ
・季語 新涼(主、初秋)
・8月28日、オカリナ奏者の宗次郎さんと大野宗匠のコラボイベントあり
・陶器製のオカリナの奏でる澄んだ音色は土の中から生まれた音。

初秋の駅鬢付けの余香かな
・季語 初秋(初秋)
・鬢付け(=鬢付け油)の香りとはどんなもの?経験不足で鑑賞が出来ず、もどかしい。

2 コメント

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オカリナ (きりぎりす)
2022-10-16 07:08:30
何とも物悲しくなつかしい音ですね😊
蟇、シラノの悲しい気持ちなんでしょうかネ😥
切ないネ。
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今回も (健人)
2022-10-16 15:57:21
好きになった句がいくつもありました。
中でも表題にも取り上げた、
青竹の一と節満たす冷し酒 は、
きりぎりすさんの嗜好にもピッタリかと思い、
この句でコメントを頂けるかと期待してましたが、
オカリナとシラノと来ましたか。
それも良いですね。
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