ブーゲンビリアのきちきち日記

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『PPS(新電力)のすすめ』、『電力改革と脱原発』天野惠一(「市民の意見」編集委員)

2016年02月09日 19時59分03秒 | たんぽぽ舎
以下たんぽぽ舎より転載

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┗■2.<書評>2つ
 |  『PPS(新電力)のすすめ』、『電力改革と脱原発』
 └──── 天野惠一(「市民の意見」編集委員)

  『PPS(新電力)のすすめ』(布施哲也 七つ森書館・1000円+税<2012年>)
  『電力改革と脱原発』(熊本一規 緑風出版・2200円+税<2014年>)

  2016年4月1日から電力の「完全自由化」が始まる。この状況を踏まえ、原発を持っている電力会社から、電力を買うことをストップし、新電力に切り替えよう。あれだけの被害をもたらす終わりなき事故を起こしながら、企業のトップたちは、一切責任を取らず、国から税金を大量につぎ込まれ、平然と黒字会社であり続けている東京電力ら、電力会社。彼らの特権システムを壊すチャンスだ。原発ゼロ社会へ向けて、新電力への切り替えを。今、こういう声が、私も事務局メンバーである「再稼働阻止全国ネットワーク」の中でも、あげられ、それを、どう運動化していくかをめぐって、討論が開始されている。

 私たちがこの問題を考えていくために、実に役立つテキストを2冊紹介する。

  1冊目は「阻止ネット」の事務局メンバーとして共に活動していた、「反原発自治体議員・市民連盟」の中心メンバーでもあった(一昨年、突然亡くなってしまった)布施哲也の『PPS(新電力)のすすめ-電力会社の電気を買ってはいけない』(七つ森書館・2012年)である。

 「経済産業省・資源エネルギー庁は管理下にある東京電力、関西電力などの10電力会社を一般電気事業者と名付けている。一方、電気の小売事業者に新規参入している事業者のことは、特定規模電気事業者(PPS=Power Producer and Supplier)としている」。

  2000年にスタートした電力「自由化」(利用者の販売が可能になった)が生み出した「新電力」(経産省がPPSをそう名付けた)会社についてのこうした説明から始まる本書は、電力会社が発電、送電、配電、販売を独占してきた体制に、新電力が、着実に風穴をあけつつある事態を、具体例も豊富に示しつつ論じている。その具体例のトップは、霞が関の経済産業省ビルの別館に入居している資源エネルギー庁である。この、原発を所管する省と庁は、東電からではなく、PPSから電気を買っているのである。

 そして外務省、総務省、文部科学省などもそうであり、「各省庁の出先機関も、ほとんどがPPSとなっている」というのだ。

 また民間企業でも、ビルや工場の電気は、PPSから購入している所が決して少なくない、この世間には知られていない事実が、具体的に明らかにされている。

 もちろん、理由は、PPSの電気の方が安価だからである。

  2011年3月11日の東電福島第一原発事故以降、この事態にマスコミも関心を示し始めた。「電気事業連合会」の、多額の広告宣伝料によるマスコミ支配のタガが緩み、タブーが破れだしたからである。

 本当は、日本の電気(電力)料金は高い。なぜ高くなっているのか。「総括原価方式」「地域独占」「発送配電一貫」という、国に保護された電力会社の独占体制こそが、その元凶であると著者は論じ、第一の元凶「総括原価方式」について、こう説明する。

 「電力会社は経費すべて合算し、その額に会社の利益である一定の率をかけて事業報酬を算する」、「すべての金額を電気料金として徴収する」。

 国策であり税金の支援があり、経費はかけ放題、すべて料金に上乗せする、発送配電一貫の地域独占企業だから可能なシステム。

 都市工学者・熊本一規の『電力改革と脱原発』(緑風出版・2014年)は、2014年に閣議決定した政府の、原発を「重要なベースロード電源」と位置づける「エネルギー基本計画」に対し、原発は、実は、ベースロード電源としては「失格」である点を、事実に即して明快に論証していることから書きだされている。

 熊本は、順次「自由化」の範囲が広がり、ついに個々の家庭でも買える完全「自由化」が始まるが、それをステップに今までの「名ばかりの自由化」(送電線を持っている電力会社に、新電力が金を払って「託送」を委ねざるを得ないシステムが支えているそれ)を突破するところまで「自由化」しなければと力説している。

  電力会社から、まず電力を買うことをやめようと主張していた布施の先駆的な問題提起と、それは重なる分析と論理である(熊本のそれは、放射能被害の拡大を隠蔽し続けている国の原子力政策全体を批判射程に入れ、専門用語をキチンと説明的に解き明かしてくれている点が便利)。

  「新自由主義(市場万能主義)」に原理的にNO!の私でも、原発ゼロへ向けた決定打と言われているこの方法については、とりあえず加担してみるしかないか。そう思わせる、2冊の本である。

    (「市民の意見」No154.2016/2/1より許可を得て転載)

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以上転載

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