拾い読み★2017-164≪コラム記事≫

ロッテの新キャラ「謎の魚」に賛否も話題沸騰。その誕生戦略の背景とは？

ロッテが5月下旬から登場させた新キャラクター「謎の魚」が話題を集めている。口をポカーンと開き、ボーっとした目の深海魚風の巨大な“被りもの”にアンバランスな細い足で走りまわる。そのキモカワ系の不思議なキャラがファンの間でじわじわと人気が上昇。メジャーの公式動画サイトに再び取り上げられたが、11日の交流戦のヤクルト戦では「第3形態への奇跡の変身」を予告されて5回裏に登場。

　魚の口から骨だけになった第3形態という名のぬいぐるみの中のぬいぐるみがひょいっと飛び出すという、なんとも、間抜けな変身シーンに球場のファンは、口をポカーン。続いて失笑が。
　SNSでは「なんで魚？」「大敗ゲームでやっている場合？」などを賛否が相次いだが、そのナンセンスさが話題となり、ヤフートップにまで取り上げられ、この日、広報が発表したリリースによると、球団公式ツイッターに、その衝撃の変身動画シーンを午後8時にツイートしたところ、直後に時速1万500RT（リツイート）を記録、その時間帯でのRT勢い順1位となった。また「本日、午前11:00時点で1万9000件のいいねをマークして大きな反響を呼んでいます」という。
　
　さっそく「本日、午前10:00に幕張浜より海に戻っていきました」とのお知らせが発表され、謎の魚の「疲れました。昨日は反響の大きさにビックリ玉手箱でした。目立ち過ぎて街も歩けなくなりました。当分は静かにします。そっとしていただけると嬉しいです。6月末頃に戻ってこようと思っています・・・」というコメントと共に、海へ帰る画像も提供された。おふざけも、ここまで手が込んでいるとなかなかのもの。

　仕掛け人の一人、梶原広報にーーあのう。第3形態への変身は奇跡でもなんでもなかったんですけど？ と聞くと、「口から出てくるって奇抜でしょう？　奇跡ですよ。あれだけ話題になってくれれば、我々としたら大成功。勝った試合の中でできたら、一番良かったのですが」と手ごたえ十分の様子だった。

　映画「シンゴジラ」で形態を変えながら進化していくゴジラが話題になったが、「謎の魚」も、ゴジラ同様に、さらなる進化を続けていく予定だという。

そもそもロッテにはカモメをモチーフにした「マーくん」「リーンちゃん」「ズーくん」という3体の球団マスコットが存在している。マーくんがメインで、その彼女がリーンちゃん、マーくんの弟がズーちゃんという設定で活動をしていて、子供たちにも大人気で、その立ち位置がかぶらないか心配になるが、梶原広報によると「まったくキャラクターが違うので、ファンにはまた違った角度で楽しんでもらえればいいですね。この新キャラは、プロフィールも名前も発表していません。ファンの方々に、色々、推測、議論して欲しいし、直接、コミュニケーションをとるのが特徴なんです。試合前にスクリーンを使って、スタンドにいるお客さんにマイクを向けて質問をしたり、絡んだりして、コミュニケーションをとっています。ファンとチームの距離を縮められば」と、いうことらしい。球界では、中日のドアラ、ヤクルトのつば九郎のキャラが立っているが、どうも、これまでのマスコットは可愛いけれど個性に欠けるため、シュールな路線で、球界の第3の人気マスコットをなんとか誕生させたいというのが狙いのようだ。

　その背景にはチームの成績低迷と共に観客動員が落ちつつある切実な現状がある。もちろん、新キャラの企画時点では、このような成績は、想像もできなかっただろうが、スポーツエンターテイメント事業は、チーム成績と、観客動員には、切っても切れない相関関係がある。

　近年、楽天や横浜DeNAに代表されるように「負けてもお客さんに来てもらえるスタジアム」を目指して“ファンファースト”で積極的に球場のハード面や飲食を充実させながら、マーケティングを丁寧に行い、様々なファンサービスや、ファンクラブ拡大などの営業努力練るチームが増えつつある。

　加えて現場からの情報発信、魅力ある話題の発信も同時進行で行わねばならない。それらの細やかな仕掛けがジワジワと拡大すると、相乗効果となって集客につながる。コアなファン以外をいかに取り込むかがポイントになっている。

　ロッテサイドが、新キャラを5月下旬に登場させたのも、「開幕前後は、チームの話題で盛り上がるので、ちょうど話題が切れてくるような時期に何か注目を集めるような話題を提供したかった」という。

　話題作りという点では、まずは成功。今後の「謎の魚」の形態の変身に注目していきたいが、最終的には怪獣になってしまいそうな勢い。まだまだ、最終章まで奇想天外な展開が続きそうだ。　　

(THE PAGE)