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月子のティーハウス(絵本)を作成しております

月子のティーハウス 番外編・つばき

2024年07月18日 | 月子のティーハウス(番外編・エピソード)

ご訪問ありがとうございます

月子のティーハウス
(moon child's tea house)

番外編 つばき

風返しの坂の上は、木枯らしが吹いている
窓に当たる風も冷たく寒い日だった

おしゃまな女性がティーハウスを訪れた
「おじゃまします、月子さんですね」
(コホッ)
女性は咳をしていた

「いらっしゃいませ、お風邪ですか?」月子はお迎えをした
「大丈夫です」女性は話し、「つばき」と自分を名乗った

つばきは三つ編みツインテールヘアだった
ファッションはクラシカル
そして面立ちには、幼さが残っていた

「つばきさん、素敵なヘアスタイルですね」
「本当ですか、うれしいありがとうございます」
(コホッ)

「それでは暖かいお飲み物などいかがですか?」
「お願いします、私もらい水ばかりだったから…」
(コホッ、コホッ)
「承知しました」月子は頷いた

ティーポットにセイロン茶葉を入れて熱湯を注ぎ
十分に抽出した後、牛乳を入れたティーカップに月子は紅茶を注いだ

角食ぶどうパンを斜めにカットしてオーブンで焼き
大きめのプレートに盛ると、バターを乗せ蜂蜜をかけた

「お待たせいたしました」月子は静かに運んだ

つばきはセイロンミルクティーをそっとすすった
そして蜂蜜をこぼさないように、ぶどうパンを口に運んだ

「月子さん美味しい!はちみつってのどに良いんですよね」
「咳が収まると良いですね」月子はにっこりと微笑んだ



「私、ベビーシッターだったんです」つばきは話し始めた
「つばきさんは、子供がお好きなんですね」

「いいえ、そうでもないんです」つばきは悲し気だった
「ベビーシッターは子供が泣けば叱られて、風邪をひけば怒られるから」

「それから私は咳をするようになりました」
月子は頷いた
「だんだん止まらなくなると1人きりにされて、それっきり…」

(静かな時間が流れた)

「ごちそうさま月子さん、ありがとうございました」
「つばきさん、またいらしてください」月子は答えた

つばきが帰ったテーブルの上には小さな風車があった
(忘れ物?)
でも月子はそれを貰っておこうと思った

ご一読ありがとうございました

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ひとみのお話し

2024年07月10日 | 月子のティーハウス(番外編・エピソード)

のお話し

今回は、月子のティーハウス 第3話
ひとみのお話しをさせてください

ひとみのストーリーは
遠い過去にあった、ニエのお話しをベースに作成いたしました
ニエは英語に訳すと
スケープゴートやサクリファイスなどが近いようです

古代においては
地震や日照り・豪雨などの天災は予測が難しく
原因も分からなかったことと考えます

人間の力では、なすすべが無く
最も大切な人命を捧げることによって
お願いをしたのだと思います

古代インカ・メソポタミア文明などでは
実際に行われていたようです

やがて時を経て、人の代わりに饅頭が生まれ
人形(ひとがた)も生まれたとも聞いております

しかし今でも地震や酷暑・豪雨など天候不順は続き
時として、尊い人命が巻き込まれてしまいます

やはり自然の大きな力の前では、私たちは小さな存在です

ニエとなってくれたひとみのストーリーは
少し切なかったかもしれません

しかし人を憂い、ひとみを悼む気持ちで
月子はおもてなしをしたかったのだと思います

酷暑や天候不順が続いております
皆さま、どうぞお気をつけてお過ごし下さい

ステキなデザインがありました
さらりと描いたラフ画の様です
少し悲し気な表情が美しいと思いました


(お疲れの時は、くつろいでください

ご一読ありがとうございました

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ほごねこお兄さん

2024年05月01日 | 月子のティーハウス(番外編・エピソード)

ほごねこ

今回は、保護猫のお話しをさせてください
駅前の広場では、時々保護猫の譲渡会が行われております
ケージに入った保護猫たちが
新しい家族との出会いを待っております

ある時、保護猫の募金活動をしているお兄さんに私は出会いました
大きな声で道行く人に呼びかけ、深々と頭を下げております

これほど熱心な呼びかけを聞いたことはありません
真摯に頭を下げる訴えに、私は心を動かされました

少額ですが寄付をさせて頂くと
チラシを持って、お兄さんが挨拶に来てくれました

私の住まいでは、ワンちゃんやネコちゃんの飼育は禁じられております
それをお断りした上でお話を聞きました

チラシの一番上に掲載されている子を何とか救いたいと
ガラガラ声で、お兄さんは言いました

「この子はFIV(猫エイズ)で、事故にも合っており
家族として迎える条件が厳しいのですが…」

そこでようやく私は気がつきました
この子を救いたいからこそ、熱心にお兄さんは呼びかけていたのです

弱いものを守ってあげたい
小さな命を救いたい

これがお兄さんの気持ちだったのです
悲しい保護猫、そして何て心の優しい若者でしょう

ネコが悪いのではなく、飼育を放棄するヒトに原因があるのでは?
私がたずねると、お兄さんは小さく頷きました

月子のティーハウス・第1話は
どなたにも親しみやすいストーリーで始めたいと
私は考えておりました

猫を登場させよう!私は思いました
その猫を、さくらと私は名付けました


(僕たちを大事にしてね

ご一読ありがとうございました

コメント (2)
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月子のティーハウス 番外編・つぐみ

2024年04月19日 | 月子のティーハウス(番外編・エピソード)

ご訪問ありがとうございます
今回のストーリーは、子供の頃に暮らしていた
地域伝承をベースにしております

月子のティーハウス
moon child's tea house

番外編 つぐみ

ティーハウスの周りは春めき、楠の葉は美しく輝いている
そして地面からは太陽の匂いがする

藤のバスケットにキッチンバサミを入れ、月子はエントランスの外にいた
自生しているミントの葉を手際よく摘んでいた

風返しの坂を、小さな女の子が1人で歩いてきた
「どうしたの?」月子は尋ねた

「わたしの名前はつぐみ、お姉ちゃんは?」
「私は月子、…でもお姉ちゃんって呼んで」

「お姉ちゃん、私はお山へ行かなくてはならないの」
…少し時間をおいてから、月子は答えた
「お山はこの道を通って、ずっと先なの」

「つぐみちゃん、パイナップルミントの葉っぱを食べる?」
バスケットに入っている、ミントの葉を月子は手渡した

「スースーして美味しい」
少し苦そうな顔をして、つぐみは笑った

キッチンバサミを借りると、つぐみは自分の髪を切り月子へ渡した
髪の毛を受け取り、月子はバスケットへそっと入れた

「お姉ちゃん、ギュッとして」
月子はつぐみを抱きしめた
月子の胸に、つぐみは深く顔をうずめた

「お家が揺れたの、ガタガタガタガタ」
「怖かったわね」
月子の目から、涙がほろほろとこぼれた

「私1人きり、お山は怖いの?」
「そうではないわ、この辺りではみんなお山に集まるの」

「春になると山桜が咲いて、野鳥もさえずるの」
月子はつぐみの肩をさすった

「さみしくない?」つぐみは泣いた
「さみしくなったら、いつでもお姉ちゃんのティーハウスへいらっしゃい」

「お姉ちゃんありがとう、私はお山へ行ってみる」
つぐみは、もう一度1人で歩き始めた

ずっとずっと霞んでいくまで、月子はつぐみを見送った


(お山へ行ってみます

ご一読ありがとうございました



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微笑むお友だち

2024年02月23日 | 月子のティーハウス(番外編・エピソード)

ご訪問ありがとうございます

微笑む

今回は「月子のティーハウス・第2話」に登場する
まつざわたかしくんをご紹介させてください

彼は幼稚園・うめ組の同級生でした

思い返しますと、まつざわくんは自*症であったかと思います
また身体的特徴もありました

彼のお話しを私は聞いたことがなく、先生方も気遣っておりました

しかしお弁当の時間は、まつざわくんと一緒です
いつもニコニコしてお弁当を食べておりました

幼稚園でお友達と会い、優しい先生と接することが
何より楽しかったのだと思います

そして祈るような気持ちで、ご両親は彼を送り出したことでしょう…

やがて成人し社会人となり、私はお釈迦さまのエピソードに出会いました

拈華微笑(ねんげみしょう)

拈華微笑は、華を拈(ひね)り微笑むということです
言葉を使わずに、心から心へ伝える以心伝心の意味です

霊鷲山(りょうじゅせん)にて、お釈迦さまは大切な教えを伝える時
言葉の代わりに蓮華(れんげ)をひねったそうです
(にっこり微笑んだ、とも聞いております)

すると弟子の1人、迦葉(かしょう)が
この意味を理解し、微笑み返したというエピソードです

この時、私は気がつきました
まつざわたかしくんの微笑みは、言葉では伝えることのできない
心からの想いだったのです

無邪気な子供を見るとき、人は微笑みます
大好きなペットを見るとき、人は微笑みます

幼稚園のお弁当の時間
この「微笑み」をみんなで共有したのだと思います

まつざわくんに大切な事を、私は教えてもらいました

こちらこそありがとう、まつざわたかしくん


(微笑む男の子)

ご一読ありがとうございました



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