トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

ドイツは過去を反省している

2005-06-17 23:13:27 | 読書/小説
 わが国の“良心的”マスコミや馬鹿の一つ覚えよろしく歴史認識を言い立てる中国・韓国は、しきりにドイツは反省していると事ある毎に強調する。しかし、本当にドイツは戦争行為を真摯に反省しているのだろうか?

 以前から私はドイツの反省とやらを胡散臭く感じていた。ドイツの過去への態度を賞賛する人の姿勢に、違和感というのか、欧米人のやる事なすこと全てを讃える白人コンプレックスの影が見えたから。ドイツ人がそんなに高尚な民族なら、何故ナチズムを生んだのか。
 そんな私の疑念を晴らしてくれたのが『オデッサ・ファイル』、『五千万人のヒトラーがいた』という二冊の本だった。英国のベストセラー作家フレデリックフォーサイスの小説が前者で、後の本はドイツに家族で滞在した八木 あき子氏の手記。

『オ デッサ・ファイル』は小説としても第一級だが、日本では知られざるドイツの裏面も出てくる。ドイツ政府は表向きは否定するが、旧ナチ党員が国内に今も隠然 たる勢力を持っていて、あらゆる階層に入り込んで相互に助け合っている。ナチスの戦争行為をもっと断罪せよと主張する政治家は、連邦議会や州議会レベルで 当選した者はいないとか。何故なら「死んだ六百万のユダヤ人は投票しないが、五百万の元ナチスは投票する機会がある」からだ。
 また、ナチ党員の逃亡を手助けした“紅はこべ”と呼ばれる聖職者さえいた。党員たちは教会の介入により身分証を持って南米へ逃れる。情報収集で定評のあるバチカンはナチの行為などとっくに知っていたが、完全に黙殺していたのだ。

『五千万人のヒトラーがいた』は、ドイツ占領下にあった国の人々がユダヤ人狩りに協力した話が出てくる。それも当然で、ポーランドなどたびたびポグロム(大量虐殺)をやらかしていたのだから。反ユダヤ主義は欧州全体にあったのだ。
 著者の八木さんの小学生の子供が、ドイツのクラスメートから旧日本軍の残虐行為を質問されたらしいが、彼らはナチスのことは知らなかったそうだ。逆に日本人の子供がナチスのことを知っていたとは皮肉というのか・・・

 ドイツにヒトラーの誕生日を祝っていけないという法律があるそうだ。そんな法があること事態、祝いたい者がいるとの証拠ではないか。欧米のインターネットではホロコーストを讃えるサイトが絶えないという。


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2 コメント

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コメント、ありがとうございます (mugi)
2005-06-19 00:06:10
Marsさん、コメントありがとうございます



ナチスが民主的に選ばれたのは歴史の皮肉ですよね。ワイマール共和国から第三帝国の変化も極端の典型そのもの。

反ユダヤ主義と無縁な欧州諸国などないでしょう。キリスト教が力を持っている限り教祖を殺害した異教徒として、これからも反ユダヤ主義は続くと思います。



残念ながら、人種、宗教問わず偏見を持たない人間などいないでしょう。ヨーロッパもボスニア紛争などあれほど浅ましい事例もありません。人間は自分の事は棚に上げ、他人を批判する生き物です。完全な人間などいませんが・・・
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ヨーロッパ (Mars)
2005-06-18 00:55:38
何故、ナチスだけが悪で、ドイツ国民はただの被害者であり、加害者たりえないのでしょうか?

ヒットラー率いるナチスが政権を取ったのも、最初は国民により選ばれたのに。



また、反ユダヤの思想を持っていたのはドイツだけですか?大量虐殺には非難するものの、ユダヤ人が迫害されるのには、内心、賛同するものは他国でもあるでしょうに。



日本は人権に疎く、ヨーロッパは成熟されているといわれますが。いまだに、アジア人に対する人種差別が残るヨーロッパは完全なのでしょうか?

(そもそも、人間が住む世界に、差別がない世界はあるのでしょうか?)
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