トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

大アンコールワット展

2006-05-30 21:17:51 | 展示会鑑賞
 先週の土曜日、仙台市博物館で催されていた『大アンコールワット展-壮麗なるクメール王朝の美』を見てきた。半数以上が日本初公開となるプノンペン国立博物館の所蔵品82点が展示されているので、とても見ごたえがあった。

 石や青銅で作られた彫像はやはり保存が効き、とても千年以上前に創られたとは思えないほど像の表面は滑らかで、意図的な破壊を除けば傷もさして目立たない。アンコール朝時 代の仏像やヒンドゥーの神像の特徴はその微笑んだ表情にある。柔和、優美、時には不気味な印象も受けるが、扁平な鼻と口角が上がり気味の分厚い唇のパター ンはほとんど同じだ。中国や日本の仏像がより生真面目な顔をしていて、微笑み度が劣るのは何故だろう?文化様式ばかりではなく民族性もあるのだろうか。

  今回の展示では結構ヒンドゥー教の女神の神像も多かった。女神像はいずれも腰がくっきりとくびれ、インドほどではないが巨乳といってもよい豊満な胸をして いる。インドの女神像はその胸の大きさに圧倒されるのが多いが、その様式の影響が色濃いのだろうか。彫刻だからデフォルメは多少あるにせよ、アーリア系の 印度女性はともかく、カンボジア女性もバストが大きめなのかは、現地に行ったことがないから不明だ。これが中国、日本の女神像だとスリムになってくるのは 面白い。

 上記の画像は大都城アンコールトムを建造したジャヤヴァルマン7世(在位1181-1218頃)のものだが、国王は現人神として神格化されたそうだ。彫像を見ると穏やかな表情だが、これも神格化ゆえで現実には異なる顔立ちだったと思われる。後ろを見るとこの王様の後頭部は絶壁で、他の彫像も同じだったので、絶壁頭が多いのはアジア人の特徴かもしれない。

  現代のカンボジアといえば小乗仏教の国で、内戦と周辺諸国の軍事介入に翻弄された小国のイメージが強いが、アンコール朝当時はインドシナ半島のほとんどを 版図にする大帝国だった。それ故あれだけ見事な仏教寺院を建立でき、軍事遠征もしばしば行う。栄枯盛衰は人間社会の常だが、繁栄を極めた王朝のその後は物 悲しい。王朝崩壊の主因はシャム(タイ)のアユタヤ朝との激戦や過酷な徴税、賦役動員などによる疲幣が挙げられているが、これはアンコール朝に限らず他の王朝も似たようなパターンで衰退している。人間のやることは洋の東西変わらないようだ。

よろしかったら、クリックお願いします。


最新の画像もっと見る