原爆とТVドラマ・ホロコースト その一

　8月17日の河北新報の国際面に、「原爆式典うんざり」「ネットでイスラエル元高官」という見出しの記事が載った。紙面のやや下で、横13㎝縦7㎝ほどとサイズも小さめだったが、以下はその全文である。

【エルサレム共同】イスラエル政府の元高官が広島と長崎に投下された原爆について、「日本による侵略行為の報い」とした上で、犠牲者を悼む両市の平和式典は「独善的でうんざりだ」等とインターネット上に書込みんでいたことが16日までに分かった。日本の外務省などが明らかにした。
　この元高官はダニエル・シーマン氏。イスラエル紙ハアレツ(電子版)によると、ネット交流サイト「フェイスブック」の自身のページに記していた。

　日本政府はイスラエル側に事実確認をした上で「極めて配慮を欠く内容だ」と抗議した。シーマン氏は、近く首相府のインターネットを使った広報戦略の責任者に赴任する予定だったが、今回の問題を受けて停職となっている。シーマン氏は「日本が追悼すべき相手は、(日本の)帝国主義や大量虐殺の犠牲となった中国人、韓国人、フィリピン人らだ」とも書き込んだ。

　この発言はネット掲示板やブログでも取り上げられ、「本気でそう思っているとしたら、精神が正常とはとても思えない」「ダニエル・シーマン氏は、原爆の恐ろしさをまったく理解していないから、こんな暴論を吐いてしまうのであろう」と書いていたブログ記事も あった。
　しかし、私の見方は全く違う。むしろユダヤ人エリートに相応しい精神の持ち主であり、原爆の恐ろしさを理解した上での発言だと見ている。ユダヤ教の選民思想とはレイシズムの権化に他ならず、ナチズムもその亜流なのだ。古代ユダヤの建国神話である旧約聖書には民族純血主義はもちろん、ジェノサイド(聖書式に言えば「聖絶」)が誇らしげに明記されている。ナチス高官もユダヤ人迫害への非難に、聖書を引用して反論していた。

　たかだか60数年程度の式典を「独善的でうんざり」と腐すユダヤ人だが、初版が1968年といささか古い『遠くて近い国トルコ』(大島直政著、中公新書)の150頁には興味深いことが載っている。
　著者がトルコで会ったユダヤ人が、「明日は我々にとって忘れ難い大虐殺記念日です」と言う。ナチスによるものかと思いきや、新バビロニアのものと言われ、著者は愕然となったという。ユダヤ人は2千5百年前の大虐殺を記念日としていたのだ。また著者の住んでいたアパートの家主はユダヤ女で、税務署に申告している家賃と実際に取っている家賃の差が実に7倍ちかくあったという(28頁)。

　wikiによるとシーマンは、「1961年、ドイツのアメリカ空軍基地で生まれた。1971年、両親はアメリカからイスラエルへ移民、アシュケロンに定住することとなった」。歴代内閣でスポークスマンなどを務め、外国メディアを担当したこともある。外国メディア担当時、イスラエルに批判的な記事を書いた記者を、事実上の国外追放にしたことも載っている。
　また河北新報には載っていなかったが、シーマンは2013年7月にもイスラムの断食を、「イスラム教徒が日中、共食いするのをやめることを意味しているのか」と、フェイスブックに投稿していたという。もっとも、2001年4月17日のIndependent紙記事「ジャーナリストがイスラエルについて真実を語ろうとしないとき」には、イスラエル高官による差別発言が紹介されている。アラブ人を「ビンの中のゴキブリ」「ヘビ」「ワニ」と呼んでも咎められることもなく、日本のメディアが報じることはない。
その二に続く

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