MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2091 働かない若者が増えている件

2022年02月17日 | 社会・経済


 3月25日に全国の映画館で公開予定の劇場アニメ「おそ松さん」では、漫画家赤塚不二夫の名作ギャグ漫画「おそ松くん」を原作として、その後の不況下で「クズでニートな大人」に成長してしまった松野家の六つ子の姿を描いています。

 松野家の六つ子、おそ松、カラ松、チョロ松、一松、十四松、トド松は20歳を過ぎても定職につかず、実家で親の脛をかじるいわゆるニートとして暮らしています。アニメは、仕事にも女性にも縁がない個性的なこの6人が、(イヤミやハタ坊、デカパン、ダヨーンのおじさんら)おなじみの地域住民らと様々な問題を引き起こす日々を、少しシュールでブラックなギャグコメディに仕立てています。

 6人は、親にもらった小遣いでコンビニやパチンコに行ったり、時に簡単なアルバイトをしたりしながら、基本ゴロゴロと暮らしています。一方、松野家のお父さんもお母さんも、いつまでも大人になれずずるずると子供部屋で暮らす子供たちに、自立を促す風はありません。

 言うまでもなく、こうした状況が視聴者に違和感なく受け止められているのは、現在ではこれが(いかにも)「ありがち」なシチュエーションであるからに外なりません。昔は「家事手伝い」などという便利な言葉もありましたが、中学や高校を卒業し一旦は就職したもののすぐに辞め、その後は定職にも付かずに地元でぶらぶらしている若者というのは、今どきそんなに珍しい存在ではありません。新装開店のパチンコ屋の店先に開店の何時間も前からたくさんの若者が行列を作るのも、今では見慣れた光景と言えるでしょう。

 「ニート(NEET)」とは、Not in Employment、Education or Training…つまり「就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人」を指す言葉。内閣府が毎年発表している「子供・若者白書」で言うところの「若年無業者」の類似概念として捉えられています。その定義は「15~39歳の非労働力人口(状況をかんがみて求職活動をしていない人など)のうち家事も通学もしていない人」で、病気、失業、引きこもりなどの様々な事情によって、生産的な活動に携わっていない(特に)若い世代を、ある種の「問題意識」を持って捉える際に使われる場合が多いようです。

 さて、新型コロナの感染拡大により先の見えない日々が続く中、近年、「学校にも行かず、働いてもない」ニートの増加傾向があらわになっていると、総合情報サイトの「幻冬舎GOLD ONLINE」が報じています。(2022.1.26配信「恐ろしい…日本で「働かない15歳~39歳」が急増しているワケ」)

 内閣府が昨年6月に公表した『子供・若者白書』によれば15歳~39歳の若年無業者は全国で「87万人」。当該人口に占める割合は2.7%で、5年前(平成27年)の前回調査時よりも10万人以上増加していると記事はしています。その内訳をみると、男女では男性がやや多く、男性「53万人」に対し女性は「34万人」。年齢別では、15~19歳が「19万人」で20~24歳が「18万人」。さらに、25~29歳「14万人」、30~34歳「18万人」、35~39歳「18万人」と、ニートは(ある意味)各世代に「満遍なく」散らばっていることが見て取れます。

 若年無業者の中には、もちろん働きたい気持ちはあるものの、求職活動をしていない(できない)人々も多いはず。「なぜ働かないのか?」の理由として彼らが挙げた中で、全年齢で最も多かったのは「病気・けがのため」の33.5%。次いで「知識・能力に自信がない」が11.8%、「急いで仕事につく必要がない」が7.3%、「探したが見つからなかった」が6.3%と続いているとされています。

 特に、「知識・能力に自信がない」と答えた人の割合に注目すると15~19歳では7.9%だったものが、20~24歳では12.0%、25~29歳では13.4%、30~34歳では15.8%、35~39歳では12.2%と、本来働き盛りであるはずの20代が、自身への信頼を失っている状況がうかがえると記事はしています。人生が最も充実する20代、30代を無業で過ごさざるを得ない背景には、精神的な問題が大きく影を落としているということなのでしょう。

 いわゆる「ニート」の状況とともに、記事は「ひきこもり」の問題にも触れています。同調査(内閣府「子ども・若者白書(2021)」)によると、15~39歳の引きこもり推定数は「54.1万人」。これは、「自室からほとんど出ない」、「自室からは出るが、家からは出ない」、「ふだんは家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」、「ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する」と回答した人の総数だということです。

 一口に54.1万人と言いますが、この数字は仙台などの100万都市の約半分。それだけで政令市になれる大都市の人口に匹敵します。日本中でこれほどの若者が、自宅かその近辺だけを生活空間としほとんど外出もしていないと考えると、日本社会が抱える問題の根は(相当)深いと考えざるを得ないでしょう。こうした現状について白書は、「厚生労働省は、若年無業者等が充実した就業生活を送り、我が国の将来を支える人材となるよう様々なサポート事業を展開している」としています。

 これまで(ある意味)「個人的な」もしくは「家庭内の」問題とされてきた「引きこもり」に対処するために行政が税金を使い、あるいは権力的に介入することには各方面からの批判も多いと聞きます。しかし、全国で50万人以上、その他の世代も含めれば100万人以上といわれる規模感を考えれば、もはや政府も座して見ているわけにはいかないというのが本音のところなのでしょう。


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