MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2347 なぜ公立ではダメなのか

2023年01月24日 | 教育

 東京都が来年度予算に向け、都内の私立中学校に通う生徒の授業料について、各家庭に年間10万円の助成金の給付を検討していることがわかったと、大手新聞各紙が報じています。

 報道によれば、東京都の小池百合子知事は1月19日、都庁内で都議会自民、公明両党の幹部と面会。私立中学に通う生徒の親(年収が910万円未満)に対する助成を求められたのに対し、「急ぎ検討する」と回答したということです。

 東京都の「公立学校統計調査報告書」によれば、2022年度の都内の中学生は31万3364人で、そのうち私立中学校に通う生徒は25.5%にあたる7万9896人とのこと。特に都心部における私立への進学率は高く、教育熱が高いことで有名な文京区では、50%近くになるとされています。

 来年7月に選挙を控える小池都知事は、既に(2023年度から)0~18歳以下の子供全員を対象に月額5000円、年6万円を給付することを公表しており、また同じタイミングで2歳までの第2子の保育料無償化もスタートするということです。

 (タイミングがタイミングなだけに)メディアを巻き込み、給付、給付で一気に支持率の巻き返し(と自・公都議団の取り込み)を図る小池氏の手法に、舌を巻いている関係者も(きっと)多いことでしょう。一方、潤沢な都財政を後ろ盾に札びらを切るこうした小池氏のやり方に、批判を投げかけるメディアも多いようです。

 1月23日の総合情報サイト「日刊ゲンダイDIGITAL」は『小池都知事「私立中学校世帯10万円助成」は不公平…特定のバラマキは“選挙対策”と批判殺到』と題する(かなり辛口な)記事を掲載しています。

 都議会自民・公明両党幹部からの要請を受け、小池百合子都知事が私立中に通う生徒のいる世帯への年間10万円の給付を都の当初予算案に盛り込むという。都内で私立中に通う中学生は25.5%(22年度)。75%は公立中学に通っているため、不公平さに焦点が集まっているが、問題はそれだけではないと記事はその冒頭に記しています。

 東京都「令和5年度 都内私立中学校の学費の状況」によれば、都の私立中学校の23年度の初年度の学費(授業料、入学金、施設費などの総額)は、調査対象となった182校のうち既に43校(23.6%)が値上げを決めている。値上げ幅は上位から実践学園の27万8400円増(値上げ率28.9%)、日本学園の11万3600円増(同14.5%)、清明学園の10万5000円増(同13.5%)などとなっており、授業料(平均額)だけでみても、21年度は48万2168円、22年度は48万6976円、23年度は49万2209円と、年々上がっているということです。

 こうした中、今回の子育て支援策の対象が“私立中学”と極めて狭く、それも急遽の予算付けとなった背景には、今後も値上げが予定されている私立中高への選挙対策が考えられると記事は見ています。公明党の支持母体の創価学会には系列中学があるので、こちらも政治的に引き込みやすいというのが記事の見立てです。

 子育て支援でいえば、2023年度から(国が財源を負担する)出産育児一時金が42万円から50万円に引き上げられるとされている。そのタイミングで、都内の有名な産科が今年4月から8万円弱の値上げを発表していて、SNSでも騒がれたと記事は言います。全国旅行支援の際に開始後のホテルの便乗値上げが問題になったように、業界の値上げに合わせて補助を出している傾向はあるというのが記事の指摘するところです。

 ツイッターの反応を見る限り、《意味不明…好き好んで私立中学へ行かせてるところへ助成?いつものパターンだがこれ助成したら多分学費上げるよね?東京のことやし関係ないけど選挙対策に金ばらまくのやめーや…》《政策意図が全然分からん…。私立中学が値上げして終わるのでは。》などと冷めた反応だと、記事はしています。

 ツイッター上の少数意見を大きく取り上げるのも「いかがか」とは思いますが、(ただでさえ、私立学校の運営には国や都から莫大な補助金が交付されている現状を踏まえれば)学校ごとに任意に決められる授業料や入学金に(さらに)公金を投入することには、納得がいかない納税者もきっと多いことでしょう。

 今回の報道に対し、投稿サイト「2ちゃんねる」の創設者で実業家のひろゆき氏は、1月21日のツイッターに「『お金がないなら公立に行け』という話しかと…」とつぶやいたとされています。

 「都内の私立の学校は『有名デザイナーの制服』とかで学費が高かったりもします。それを当事者ではない赤の他人が税金で払わされるのは違うと思うんですよね。『お金がないなら公立に行け』という話しかと。」とツイートし、助成の必要性はないという見解を示したということです。

 さて、そのココロは、「中学は義務教育なんだし、無理をしなくても(近所の)公立があるじゃないか」ということなのでしょうが、今回の件に関しては私も(珍しく)ひろゆき氏と同じような印象を持っています。

 都内の公立中学の運営には、東京都の教育委員会にも大きな責任があるはずです。であれば、都は公立中学の教育内容の充実にこそ、お金をかけるべきではないかと思わないでもありません。

 公立学校は一体何のためにあるというのか。私立中学に行けないお金のない家の子は、(私立で「ちゃんとした教育」を受けられなくて)「可哀そう」なのか。少なくとも都内の公立中学の教員たちは、今回の小池知事の決定に怒り、奮起しなければならないと感じるのですが、果たしていかがでしょうか。



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