MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2253 Z世代の働き方

2022年09月12日 | 社会・経済

 数年前から、新しい感覚持った若者世代を表す呼び名として「Z世代」という言葉がよく使われるようになりました。

 Z世代の年齢に明確な定義はないようですが、一般的には1990年代半ば(もしくは2000年代序盤)以降に生まれた10代後半から25歳くらいまでの若者を指すことが多いとされています。

 その特徴は、(あくまで一般論ですが)自分らしさを大切にする一方で、他者からの評価に敏感で承認欲求が強い傾向にあること。生まれたときからデジタル技術と密接に関わるソーシャルネイティブで、SNSが当たり前のコミュニケーションツールになっており行動はきわめて合理的。

 一方、「面白いと思ったことや感動したことを共有したい」「自分の考えや行動を受け入れられたい」と考える傾向が強く、「他者の評価を気にしすぎて保守的になってしまう」「指摘を受けた際に落ち込みやすい」といった評もあるようです。

 まあ、いつの時代も、それまでのルールに囚われない若い世代の行動は、社会や組織の中で「浮いて」見えるもの。デジタルデバイスやコミュニケーションツールを軽々と使いこなす彼らへの「やっかみ」も含め、その評価は辛口なものになりがちです。

 そうは言っても、Z世代は2020年時点で既に世界人口の約3分の1を占めており、ミレニアル世代を上回る存在感を示しています。さらに、今後は「消費者」として経済を動かす主役になると考えられており、経済的な影響力についても世界中から注目されているところです。

 翻って、国内に目を向ければ、少子高齢化が進んだ日本におけるZ世代の人口はいまだ総人口の13.9%程度。相対的に影響力が弱く、世界に比べれば注目度もまだまだ低い存在です。

 しかし、日本における彼らZ世代が、消費の面ばかりでなくこれからの社会を引き継ぎ支えていく世代として、重要な位置を占めていることもまた事実。新時代を担う若者の価値観が変化する中、今後は日本の社会や経済の在り方も変容を迫られる機会が増えてくることでしょう。

 そうした折、8月22日の総合経済情報サイト「東洋経済ONLINE」に、ライフプランサービスの相談事業を展開するマネーセージCMOの佐藤健太氏が、「初任給が上がっても会社を辞めたい若者が多い訳」と題する一文を掲載していたので、参考までに紹介しておきたいと思います。

 相次いで社会人デビューの時期を迎えている日本の「Z世代」たち。ソニー生命保険が今年3月に行った新入社員と就職後1年を経た社会人2年目の20代男女を対象とした調査よれば、就職する会社で「定年まで働きたい」と回答している割合はわずかに25.0%に過ぎないとされています。

 さらに、「2~3年くらい」が19.8%、「4~5年くらい」は16.4%、「6~10年くらい」で14.6%と、彼らが入社前から早期退職をイメージしていることが改めて浮き彫りになったと、佐藤氏はこの論考に記しています。

 社会人2年生ともなれば、帰属意識はさらに揺らぐ。「定年まで(今の会社で働きたい)」との回答は、15.6%と新入社員と比べ10ポイント近く低下し、「すでに辞めたい」との回答が21.4%と最も高くなっているということです。

 調査によれば、その理由に挙げられているのは、入社前に抱いていたイメージと1年間働いて感じた生活とのギャップが大きかったこと。入社後に「がっかりしたこと」のトップは「給料が少なかった」(28.8%)で、「同期で集まる機会が少なかった」(25.6%)、「ボーナスが少なかった」(21.8%)と続き、報酬面での不満が退職意向につながっていることがうかがえると氏は説明しています。

 ただし、単に収入面で見れば、必ずしも「Z世代」の待遇が他の世代と比べて劣っているわけではないというのが氏の認識です。

 産労総合研究所の「2022年度決定初任給調査」によると、「初任給を引き上げた」企業は41.0%と前年度から10ポイント以上も増加。「据え置いた」とする企業も55.4%に上り、大卒で21万0854円、高卒は17万3032円とされる平均初任給は、過去最高の水準だということです。

 実際、Z世代の「仕事観」は、収入面のみで評価することは難しいと氏はここで指摘しています。

 公益財団法人「日本生産性本部」と一般社団法人「日本経済青年協議会」が2019年公表した「新入社員働くことの意識調査」によれば、働く目的は「楽しい生活をしたい」が39.6%とトップを占める一方で、働き方は「人並みで十分」が過去最高の63.5%に達している。私生活を中心にしたいとの回答は17.0%に上り、「仕事中心」(6.0%)との差は開く一方だということです。

 さらに、若いうちに「好んで苦労することはない」と考える新入社員も過去最高の37.3%で、就労意欲の低下も目立つ。

 「職場の上司、同僚が残業していても、自分の仕事が終わったら帰る」は49.4%で、5年前に比べて14.3ポイントの増加。「仕事はお金を稼ぐための手段であって面白いものではない」(42.3%)は同9.6ポイント増、「職場の同僚、上司、部下などとは勤務時間以外はつきあいたくない」(30.1%)も同8.9ポイント上昇しており、ワークライフバランスを重視する傾向が浮かび上がると氏は説明しています。

 一方、コロナ禍の学生生活と就職試験を経験し、不確実性も増す中で「Z世代」には堅実な面も見られるというのが佐藤氏の見解です。

 先のソニー生命保険の調査によれば、新入社員の初任給の使い道は「貯蓄に回す」が56.6%と最も高く、貯蓄志向は高まりを見せている。社会人2年目の4割超は初めての給料で貯蓄し、1年目の貯蓄額は平均62万円と前年比4万円増加。30歳時点の目標貯蓄額は、平均すると847万円に及ぶということです。

 こうした状況を踏まえ、5人に1人が年収200万円以下という時代に社会へ飛び立つ若者の価値観は、ここにきて大きく変容していると氏は話しています。

 内閣府の「人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査」(2021年度)によると、独身者の結婚願望は20代の男性で54.4%。女性も64.6%にとどまり、30歳時点での未婚割合は男性50.4%、女性40.5%に上っている。

 2021年の婚姻件数は戦後最少の50万組で、結婚したくない理由としては、仕事や家事・育児・介護の負担増に加え、結婚生活を送る経済力がないとの回答が上位を占めるということです。

 自分の身は自分で守り、目立つことは好まず高望みはしない。個人としての嗜好や生活を大切にし、仕事や家庭との距離感を大切にする若者たち。どうやら意識の変化は、少し前の世代が思っているよりも大きいようです。

 新時代を担うZ世代の価値観が変わる中、企業や社会はどのように変化していくのか。国が副業を推奨し、岸田文雄首相は「貯蓄から投資へ」と表明したが、こうした流れに順応するのは(もしかしたら)年長者よりも「Z世代」かもしれないとこの論考を結ぶ佐藤氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。

 



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