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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2427 子供が欲しくない理由

2023年06月19日 | 社会・経済

 2月21日に総合情報サイトの『BIGLOBE』がリーリースした「『将来、子どもがほしくない』 Z世代の約5割」と題する未婚の若者へのアンケート調査の結果が、ネット上で話題になりました。

 2月7日からの3日間で実施されたこの調査。全国の18歳から25歳までの未婚で子どもがいない男女457人を対象に、将来の結婚と子どもについて以下の4択で質問をしています。

 結果、「将来結婚して、子どもがほしい」が44.9%、「将来結婚というかたちにこだわらなくても子どもはほしい」が9.4%で(合せて)約半数。一方、「将来結婚はしたいが、子どもはほしくない」が9.6%、「将来結婚もしたくないし、子どももほしくない」が36.1%を占め、概ね46%が「将来、子どもがほしくない」と考えていると報じたものです。

 2022年の出生数(79万9728人: 人口動態統計)が国立社会保障・人口問題研究所の予想より10年以上も早く80万にを割り込んだ状況に、政府としても(「異次元の少子化対策」として)ようやく重い腰を上げた観のある現在の日本ですが、若い未婚世代自体が子供を望まないとすれば反転攻勢への道程はかなり困難な状況と言えるでしょう。

 それにしてもなぜ多くの若者たちが、子どもを持つこと、さらには結婚することにさえ(これほどまでに)躊躇するようになったのか。

 今回のBIGLOBEの調査結果に関し、金沢大学教授の金間大(かなま・だいすけ)氏が4月7日の経済情報サイト『東洋経済ONLINE』に「Z世代の若者はなぜ子どもがほしくないのか~子育てにお金がかかるから説に異議あり!」と題する一文を寄せているので、参考までに小欄に概要を残しておきたいと思います。

 BIGLOBEのプレスリリースによると、「子どもがほしいと思わない理由」として、「①お金の問題」を選択したのは17.7%。同様に「②お金の問題以外」を42.1%が、「③両方」を40.2%が選択しており、①と③合わせて6割近い若者が「お金が課題」と回答していると、金間氏はこの論考に記しています。

 「結婚・出産を控える最大の要因は経済的な貧困化にある」…たしかに同様の指摘は以前からされていて、政府もこれらの結果を受けて、経済的支援の充実を検討する構造にある。しかし、ちょっと待ってほしい。「本当に今の若者は、もう少しお金があったら結婚・出産するのか?」と氏はここで疑問を呈しています。

 クルマ離れ、旅行離れ、お酒離れ、恋愛離れ、結婚離れなど、若者たちの間で進んでいると言われる「〇〇離れ」。これらの主な原因として「若者の貧困化」を挙げる人は多い。日本の経済状況が不安定化し安定した雇用や定期昇給が見込めない中、若者たちは結婚や子育てを諦めるしかなくなっている…というわけだが、私(←金間氏)はこうした「若者の貧困化」説に違和感を覚えるというのが氏の見解です。

 仮に若者が貧困化しているとして、確かにそれは「子どもを持つことを望んでいるが、それを選択できない理由」としては成立するだろう。しかし、そもそも「子どもを持ちたくない理由」に適用していいのかどうかは疑問だと氏は話しています。さらに言えば、なぜ若者は、子育てにそんなにお金がかかると思うようになったのか?具体的に何をイメージして「お金がかかる」と考えているのか?というところも、もう少し深く考えてみる必要があるということです。

 さてそこで、以上の論点を踏まえた(結婚や子育てに消極的な現在の若者の意識に関する)金間氏の「見立て」は次のようなものです。

 今の若者、特に「いい子症候群の若者たち」は、平均的水準にとどまることを絶対の最重要課題のように捉えていると氏は言います。ここでいう平均とは、自分の周りを観察した結果から得られる平均的姿を指し、そこからこぼれることに強い恐怖を感じるというもの。なので、そこから抜け出し目立ったり、成功したりすることに、ほとんど興味関心を持たないというのが氏の認識です。

 このことは、子育てへの意識にも当てはまる。BIGLOBEのデータを見ても、「(自身と同様もしくは以上に)習い事や進学が難しいなら、子どもはあきらめるか人数を減らしたい」という人が63.7%もいる。逆に、「(自身と同様もしくは以上に)習い事や進学ができるような支援があれば、子どもの人数を増やしたい」という人は66.5%に上っているということです。

 自分や周りの人を見渡し、その平均的水準からこぼれ落ちるようなことは絶対に嫌。当然、子どももそんな状態には置けない。周りに合わせることが「正解」であって、自分もそう育てられた。そのために、お金が必要だ。しかし、それだけの稼ぎが得られるとは思えない。だから子どもは諦める…ということか。

 仮にこの説が正しいとすると、今の若者の多くは「子育てはお金がかかる」というより、「周りに合わせた子育てはお金がかかる」と考えていることになると氏はしています。

 「(少なくとも)人並みには育てなければ…」「子育てで失敗はしたくない…」などと考えているうちに身動きがとれなくなる、自信が無くなるというのは確かにありそうなこと。スポンサーの意向などを背景に、あれもこれもと子育ての大変さを煽るメディアにも(それなりの)責任あるのかもしれません。

 確かに子育ては大変かもしれないけれど、所詮、完璧な子育てなんてできるはずもありません。自分の将来を不安視して腰が引ける気持ちはわからないではありませんが、「なんとかなるさ」と(気楽に)思えないのが、現在の日本が抱える宿痾なのかもしれません。

 自分が生きるだけで精一杯…それ自体が(年寄りの眼から見れば)何とももどかしい状況だが、実はこの仮説について周囲の人に話すと、現在進行形で子育てをしている人ほど「わかる」と言ってくれると話す(この論考における)金間氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。



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