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「ウルトラマン」最終回再考

2022年06月12日 | ウルトラ関連



『ウルトラマン』最終回再考


 1967年4月9日に放送されたウルトラマン最終回「さらばウルトラマン」。

 宇宙恐竜ゼットンによってウルトラマンは倒されてしまいますが、命を2つ持ってきたゾフィーによって息を吹き返し、光の国に帰還しました。

 本放送55周年を記念して、最終回の台本の変遷について簡単に紹介します――。







 死ななければならない


 最終回の製作にあたって、サンケイ新聞等でストーリーのアイディア募集が行われました。

 放送継続を望む声も含めて多数の投書が寄せられ、脚本担当の金城哲夫氏は1967年2月22日付の東京新聞でこうコメントしています。


 子供たちの夢は壊したくないのだが、結局ウルトラマンは地上では、物凄い怪獣にやっつけられて死ななければならない。

 その場合、負け方に秘密があり、ウルトラマンの心臓だった部分がやられるが、彼の体から電波を発し、“光の国”へ通報される。

 その通報を聞いてウルトラマンがの仲間が彼のもう一つの生命を持ってやってきて、その強力な怪獣をやっつけて、さらにウルトラマンに生命を与えようとするが、ウルトラマンは「もしその生命を自分がもらったら、地球人のハヤタが死んでしまう」と拒否。

 「地球人は自分の力で地球を守らなければいけない」という結末にする構想を練っている。





 しかし、「ウルトラマンが死ぬ」という噂を聞いた子供たちから円谷プロとTBSに「ウルトラマンを殺さないで!」という声が殺到。

 撮影はかなり進んでいましたが、「ウルトラマンは負けるけど死なない」という現在の脚本に変更になったそうです。



 ゼットンを倒すゾフィ


 準備稿では、ゾフィがゼットンを倒しています。以下、第39話「さらばウルトラマン」準備稿より引用します。





 ウルトラマンの仲間、上空からゼットンに対してシュペシューム光線を発しながら急降下してくる。ゼットン、光線を浴びて、そのまま火の海に埋没する!

 ガーウオオ!断末魔の叫び!

 と、平野の大型円盤が飛び立つ!
ウルトラマンの仲間、目から光線を発射する。大型円盤吹っ飛ぶ!

 ウルトラマンの仲間、それを見届けると、ウルトラスピンでクルクル回転をはじめ、みるみる赤い球(第1話で登場の)に変わる。



 叩き潰されるカラータイマー


 決定稿の台本には、ゼットンがウルトラマンのカラータイマーを叩き潰すト書きがありますが、残酷すぎるということで光線に変更になっています。


 ゼットンに組み伏せられているウルトラマン。
 カラータイマーが激しく点滅する。

 N(ナレーション) 「ウルトラマンの体は地球上では急激に消耗する。エネルギーがなくなると胸のカラータイマーが鳴る!ウルトラマン立て!」

 よろよろと立ち上がるウルトラマン。
 と、ゼットンが、ウルトラマンのカラータイマーをグシャッと叩きつぶす。

 ウルトラマンの悲鳴!動きが止まってしまう。

 氷水を浴びたように立ちつくす隊員たち。言葉はもとより、声さえ失う。





 「うつ伏せに倒れたのに次のシーンで仰向けになっているのは、ゼットンが仰向けにしてカラータイマーを叩き潰すシーンが残酷すぎるとカットされたから」

 ウルトラマンの体の向きと台本の内容から、こういった都市伝説も生まれています。



 ウルトラマンの死


 金城氏の「ウルトラマンは死ななければならない」という言葉通り、準備稿ではウルトラマンはハヤタに命を譲って絶命します。





 声 「迎えに来たのだ。さあ、私と一緒に光りの国へ帰ろう、ウルトラマン」

 ウルトラマン 「仲間、私の体は、私だけのものではない。私が帰ったら一人の地球人が死んでしまうのだ」

(中略)

 ウルトラマン 「仲間、それならば、私の命をハヤタにあげて、地球を去りたい」

 声 「お前は死んでもいいのか?」

 ウルトラマン 「かまわない、私はもう二万年も生きたのだ。地球人の命は非常に短い。それにハヤタはまだ若い!彼を犠牲には出来ない」

 声 「よろしい!では、そうしよう」

(中略)

 アキコ 「どうしたのかしら?」

 ムラマツ 「ウルトラマンが死んで、仲間が迎えに来たのだ」






 この時のゾフィには、ウルトラマンのスーツアクターの古谷敏氏が入っており、自著「ウルトラマンになった男」で、複雑な心境だったと明かしています。

 このシーンで、倒れているウルトラマンには誰が入っているかについては「完全解説・ウルトラマン不滅の10大決戦」に書かれています。





 なお、下記のブログ記事に「さらばウルトラマン」についての詳細な考察が書かれているので、さらに深く知りたい方は一読下さい。




 編集後記


 『シン・ウルトラマン』では、ウルトラマンは神永に自らの命を託して絶命しました。

 ウルトラマン第39話 (最終回)「さらばウルトラマン」も、最初はウルトラマンがハヤタに自らの命を託して絶命する設定でした。

 つまり、本来のカラータイマーが無いデザインと、最後にウルトラマンが死ぬ本来の最終回の設定に立ち返ったのが、『シン・ウルトラマン』なのです――。




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