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小説・鉄槌のスナイパー・二章・NOー(61)&CG合成

2008-10-02 01:56:13 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー・二章・NOー61ー&CG・花の合成

美保は疑心暗鬼ではあった、しかし京平の真剣な眼差しを見て支度を始めた、そしてザックを背負うと京平の後に続いた。
そして一時間も歩くと陽が陰り始めた。二人は国道158号線に出ると登山道には入らず、遠回りになる国道を下った。
京平は道端にある草花を説明しながら歩いていた。そして幾つものパーティーと会うと挨拶を交わしながらゆっくりとした足取りで中の湯温泉へと下山していた。
そして温泉が見えた頃、ポツッポツッと帽子に雨が落ちてきた。乾いた道路には点々と雨が落ちて来た。
「ほんとうだ!・・・雨が降ってきた。良かったここまで来てからで」。驚いたように空を見上げた。すると、二人の頭上は真っ青な空が広がっていた。二人は小走りで歩いた。
そして中の湯温泉に着く頃には真っ黒な雲に覆われていた。ザックを後部座席に入れて乗り込んだ。
「美保。昼は途中まで下ってから食べようか」。
「うん、そんなに空いてないからそれでいいよ。もう山は雨だね。ガスが掛かって何も見えないもの」。
「うん、奴等どうしているかな。山頂付近はホワイトアウトだ。まあ、ハイカーが大勢いるから一緒にビバークしているだろうけどな」。
「なあにそのビバーグとかホワイトアウトって」?
「え、うん。ガスって視界が一~二メートル先も見えなくなる現象をホワイトアウトって言うんだ。そうなるとちゃんとした登山道でさえ分からなくなるからね。百戦錬磨のベテランでも遭難する怖い現象だよ。
ビバークとは露営、知ってる人はそこで止まってガスが晴れるのを待つけど素人は無理して登って遭難する、山は怖い生き物だからね」。
そして駐車場を出た。すると間も無く雨が降り始めた。すると次第に雨脚が早くなりワイパーを始動させた。
そして奈川渡ダム辺りに来るとサイレンの音が聞こえ、次第に近付いて来た。警察のジーブと救急車が上って来た。
「ねえ、怪我人かな、病人かな?・・・」。
「うん、どちらとも言えないな。警察のジープが行ったと言う事は登山者が滑落したか遭難の可能性が強いけどね。こんな日は足元が滑るから良くあるんだ。
せっかく来たんだから引き返すのは勿体ないなんてね。それで無理して登山を続けると大怪我するか遭難して命を落とす。山は怖いぞ」。
「うん、京平さんの適切な行動にバンザイだね」。そう言いながら小さなガッポーをしておどけて見せた。そして波田町に戻り、唐沢に着くと名物の唐沢ソバの専門店に入った。「オ~ッ紺野、来たなら声を掛けてくれよな。奥さんこんちは。なんだ山へ行って来たのか?・・・」。
それは京平の大学の同期の島田英雄の店だった。
「うん、一生懸命ソバを打っていたからさ。途中まで行ったけどこの通り、引き返したよ。それより救急車とジープ上っていったぞ」。
「ああ、遭難らしい。詳しい事はまだ分からないけどさ。それより奥さん、赤ちゃんはまだかい」?
美保は真っ赤になって京平を見た。そして首を横に振った。
「そうですか。紺野、早く作れよ。もう若くないんだぞ」。
「そんな事言ったてさ、そのうち出来るよ。なあ美保」。
「うん、それよりお蕎麦美味しかったです。また京都へ送りたいからお願いします」。
「あいよ、そう言えば小山から電話あってさ。蕎麦の料理を出したいから教えてくれってさ。あいつが料理を教えてくれだなんて初めてだぞ。どう言う心境の変化なんだ」。
「そうか。来月から彼のペンション修理して少し料理を変えたいってさ。いまのままじゃ平行線で利益がないからな。それで出す料理に宿泊料金に合わせて格差を付けるように助言したんだ」。
「そうか、料理にかけては人一倍プライドの高い小山がな。じゃあ俺も協力するか。奥さん、京都の住所は前のところですね」。
「はい、宜しくお願いします。お会計は一緒に」。そして支払いを済ませ、土産を貰って店を出た。雨は本格的に振りつづいていた。
二人は走って車に乗り込むと自宅へ帰った。そして白馬に近付くと雨のカーテンを抜けたようだった。道路が濡れた路面と乾いた路面がクッキリと別れており、雨は振っていなかった。
空はカンカン照りで蒸し暑ささえ感じた二人だった。そして自宅に戻るとザックを降ろして部屋に入った。するとノックして母が入って来た。
「京平、美保さん。遭難したんじゃないかって心配したわよ。さっきニュースで割谷山で何人か足を滑らせて落ちたって言うから。でも良かった貴方たちじゃなくて」。
母良江は青ざめた顔がスッと赤みが差していた。
「そうか、やっぱり遭難か。僕等は逆から登ったからね。それに気圧計を持ってって良かったよ。焼岳で変化があったから山を降りたんだけどさ。それで中の湯に降りたら振って来た。なあ美保」。
「うん、適切な判断でした。ご心配お掛けしまして済みません」。
「いいのよ、京平は一度あの山で大怪我しているから。でも判断を誤る山男じゃないと信じるから。それよりせっかく行ったのに残念だったわね」。
「いいえお義母さん、私もう十分楽しんで来ましたから。それに濡れずに帰って来れましたから」。
「そう、じゃあゆっくりなさいね」。と言い残すと部屋を出て行った。
二人は着替えるとザックの札束をダンボール箱に移し、天袋に押し込んだ。美保は部屋を出るとお茶の支度をして戻って来た。
京平はテレビを点けると五時のニュースを見入っていた。
「今日昼過ぎ、上高知に登山に来ていた中年男性六人のパーティーが割谷山で遭難した模様です。現在山岳救助隊など、地元の消防団など待機しておりますが、天候が悪く、雨が激しく振り続いており、霧でヘリコプターも出せない状況であり、救出には出られないとの事です。
遭難したこの六人のパティーは登山計画書を提出しておらず、氏名年令はいまの所分かっておりません。
しかし、一緒に登っていた登山者の話しですと、上高知から登り、割谷山から焼岳を通って安房峠に向かい、十石小屋から白骨温泉へ降りると話していたそうです。なお、別の登山者の話ですと、遭難した六人のパーティーは、東京、横浜、京都で開業している医師のグループだと話しいたいそうです。
その六人は、登山者の男性が危険だから止めた方が良いと言う忠告も聴かず、ロープで体をつないで登山しており、滑落した現場に差し掛かった所、浮き石を踏んで一人が滑落すると、引き込まれるように次々と斜面を落ちて行き、助ける余裕がなかったと。その登山者は話しているそうです。NO-61