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刻塚-(NO-20)

2009-10-15 20:29:51 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-20)

「うん、愛しているよ。風邪ひかなかったか」。
「うん、結婚式なんかいいからこのまま啓太さんと暮らしたいな。ねえ?・・」「俺は良くても麻代のお父さんやお母さんが許してくれないだろ」。
「へへ~ッ、それがね、もう父と母に話したの。そしたら良いって言ってくれたの。どっちみち九月には結婚するんだから二人がいいならって」。
「ほんとかッ!・・・」
「うん、お姉ちゃんは九月まで我慢しなさいって言っていたけど麻代待てないもん。
ねえ良いでしょう」。そう言って甘えながらキスした。
すると電話が鳴った、麻代はスッポンポンのままベッドを出ると受話器を取った。
そして背中を向けて屈んだ。
全く、あの桃みたいな尻。と猿渡は含み笑いを浮かべていた。

「啓太さん、筒井さんが篠ノ井の警察署に行って昼には戻るからって」と、胸と股間を隠す様にベッドに戻った。猿渡は壁の時計に目をやった。
既に午前八時を回っていた。「そう、じゃあ俺達はゆっくりさせて貰おうか」
「うん、麻代お腹空いちゃったよ。もう八時過ぎているんだもん」。
「そりゃそうさ、麻代夕べは何度もいって体力使ったからな」。
「もうっエッチなんだから、そうさせたのは誰かしら。ウフッ・・・」。そして抱き合い、唇を交わし、二人はベットを出るとシャワーを浴びて着替えた。
部屋を出てラウンジに行くと主が食事を運んでくれた。
「おはようございます、済みません遅くなって」。麻代は真っ赤になって頭を下げた。「いえ、いいんですよ。それからお食事を済ませたら少し時間を頂けますか」
「ええ、いいですよ。今日は筒井さん達が戻るまで用はありませんから」。
主はニッコリ頷くと事務所に戻った。
そして、三十分ほどで朝食を済ませた二人は事務所のドアをノックした。事務所には昨日会った主の親戚の七人の顔が揃っていた。

「奥へどうぞ」主の言葉に親戚共々奥の座敷へと場所を移した。十二畳程の床の間には古びた甲冑が無気味に睨みを効かせていた。
その横には六紋銭の旗が立てられていた。
真田幸村に由来があるのか。そんな思いを胸に二人は上座に案内された。右上座に主が座り、高そうな桜の一枚取りのテーブルに四人づつ左右に席を取った。
「猿渡さん、失礼ですが警察官だったそうですね。それも階級は警視正さんだっとか、そこを見込んでお話しがあります」と、主は口を開いた。
「でも今は一民間人です。自分には何も出来ませんよ」。
「息子に聞きました、静岡県警の署長をお断りになって退官されたとか。本題に入ります、警察はこの事件をどう考えているんでしょう」。
親戚一同の視線が一斉に浴びせられた。麻代は一瞬ドキッと体を震わせた。
「どうと言いますと、この事件でこちらに何か不都合な事でもおありなんでしょうか。それから先にお応え頂けないと何とも言えません」。
すると、一同は互いに視線を会わせて頷いていた。

「実は、この殺人事件は26年前の或出来事に関係しているんではないかと。ここにいる親戚一同が言うんです」。と眉間に皴を寄せて苦渋にみちた顔をしていた。
やっぱり何かあったんだ、猿渡はそう感じながら隣の麻代を見た。
麻代も小刻みに二度三度と頷いていた。
「その或ことと言うのは息子さんの貞雄さんに関係ある事ですね」。
その名前と問いに親戚一同の表情は一際険しくなり、親戚同士顔を見合わせていた。どうして知ってるんだ。と言わんばかりの顔をして鋭い視線を向けた。
そして思い詰めた様に主は溜め息を吐いた。そして座り直して猿渡を見た。

「実はその通りです。私と家内が結婚して10年経っても子供に恵まれなくて、26年前、家の主治医の森谷医院と言う村一軒の病院の院長、森谷義の世話で貞雄を養子に迎えました。私も家内もそれは可愛がりました。その三年後に政男が生まれたんです」。すると主は突然涙を浮かべた。
「その先は儂が話す」と、いつ来たのか主の父良造が襖から顔を出した。
「猿渡さんも訊いて知ってるずら、20年前の出来事だに」。
「20年前と言うと貞雄君が一時塚の祟りで狐か狸に取り憑かれたと言う」。
「そうです、そうなる半年前のことです。貞男を養子に迎えた三年後に政男が生まれた。親の心情とすれば養子より実の子の政男を跡継ぎにしたいのは明々白々ずら。

そんな思いが貞男の親が知ってか、突然息子を返して欲しいと現れたんだに。
しかし、はいそうですかと言う分けにも行かねえ。話し合いは山の炭焼き小屋でしただ、じゃが話は纏まらなくてのの、十日一ケ月と経ってしまったんだに。
痺れを切らした貞男の母親は怒り出しましてな、連れて帰ると小屋を飛び出して行ったんだ。わし等は後を追い掛けて、もう少し時間をくれと説得しましただに。
そんな話をしながら谷の道に差し掛かったとき、母親の肩を掴み止めました。
すると、貞男の母親はいいかげんにしてくれと。手を振りほどいた瞬間に体のバランスを崩して谷に転落したんです」。老人は思い余った様に声を詰まらせた。
すると、左にいた初老の男性が体を起こして猿渡を見た。
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