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刻塚-(NO-18)

2009-10-07 04:08:29 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-18)

それは四人の被害者の捜査資料だった。
「いつの間にこんな物を集めたんだ」筒井さえ知らない群馬と山梨で惨殺された二人の捜査資料も含まれていたのだった。

「蛇の道は蛇ですよ、見て下さい。四件の殺人事件には必ず老夫婦が出て来ます。
善光寺裏で死体を発見したのは早朝犬の散歩をしていた老夫婦です。群馬の高崎観音の公園で遺体を発見したのも朝の散歩をしていた老夫婦です。
山梨の身延山の久遠寺の参道で死体を発見したのも参詣に来た老夫婦が東屋で発見して、住職に届けて警察へ。偶然とは思えませんよ」.

「そうか、静岡の駿府公園でも通報して来たのはジョギン中の男性だが。その後の捜査で老夫婦がいたな。五時ころ散歩していた老夫婦が被害者からおはようございますと声を掛けられたと言う証言を得られた」。筒井と南田はサッと蒼白した。

「では大谷さんの言っていた事が正しかったんだね」すると、猿渡は不意に睨んだ。麻代はまずい事を言ったのかと肩をすぼめた。
「間違っていたから殺されたんだろ、一人で調べにさえ行かなければ殺されずに済んだんじゃないのか。警察の捜査と言うのは二人ないし数人でするチームプレーなんだ。それを大谷みたいな我が強いアウトローは殺されてしまうんだ。先輩はこんなことが起こらない様にしたくて、少しきつい位に怒って帰したんだよ」
「そう言う事か、じゃあ犯人は一時塚の事を知っている山田一族の人?・・」。「いや、違うな。あの人達は祟りとか悪霊を信じ切っている」。
「そうだよね、あの目は祟りじゃ祟りじゃって信じているっている目よね。じゃあ誰が大谷さんを殺したの?・・・」。猿渡は黙ったまま、さて誰だろうと言う様に一人一人の目を見て伺った。

「もしそうなら、昔し狐だか猫になって父親に炭焼き小屋に閉じ込められた後に逃亡したと言う山田刑事の兄さんか・・・でも死んでいるしな」。
「先輩、誰が死んだって言ったんです。村の人達を頼んで山狩りしたけど見付からなかったんじゃないんですか」。そうだったか、と言う様に筒井は皆を見た。
「確かそう言っていました。当時六才の子供ですよ、それもたった1人で山中で生きて行けますかね。一週間だか探したそうですよ。それも、村の人達には知り尽くし山なんてすよ。川あり谷ありで子供が死んでいても気が付かないだろうし。生きてはいないでしょう」。

南田は筒井の考えに同じていた。しかし、猿渡は死体が見付かっていない以上、生きていると考えるのが妥当だと思っていた。
でもなんで姿を見せない、本当にその子供は狐憑きか狸に取り憑かれたのだろうか。もし、誰かの入れ知恵でそんな真似をしていたとしたらどうだ。
猿渡は腕を組ながら麻代を見詰めると、黙ったままじっと考えていた。
「先輩、山田さんの母親の事と兄弟の事を内密に調べてくれませんか」
「エッ・・・それは何故だ。この殺人事件に山田刑事が拘わっていると言うのか」。と困惑したように目を見開いた。

「いえ、何とも言えません。もし自分の考えている事が正しければ、母親の死と子供の頃の事が関連しているんではと思うんです」
すると、コンコンッとノックして山田刑事が入って来た。「警部補、大谷の司法解剖が終わったそうです。外傷も薬物反応はなく死因は心臓麻痺だそうです。死亡推定時間は昨夜の八時から八時半の間だろうと言う事でした」。

「そうですか、山田刑事、お兄さんは何て言う名前だったんです」。
「兄ですか、貞男です。兄は20年前に亡くなりました。何かこの事件に」
「いや、そうじゃない。ただ何と無く聞きたくなっただけですよ」と、筒井は司法解剖のファックスを受け取ると目を通していた。

「では自分は今から署に戻りますので、失礼します」と、出て行った。
そして猿渡と麻代も自分の部屋に戻った、麻代は風呂の支度をして隣に座った。
「ねえ啓太さん、警察を止めたのはあんな理由じゃないんでしょう?・・・」

「エッ・・・どうしてそう思うんだ?・・・」。
「うん、なんかそんな気がしたの。だって警視庁にいたんでしょう、どうして静岡へ来たの、転属なの」。猿渡は隠しても孰れ分かると、話す事にした。

「俺の転属の内示は県警の署長としてだったんだ。先輩は俺の部課になるって事だろ。俺はあの人が好きだ、人間としてな。溝を作りたくなかったんだ。
それと、俺は内勤より現場に出て仕事がしたかった。その事を話したら、官僚は現場より内勤で力を出してくれと言われてさ。
それで警察官が嫌になって知り合いに話したらこう言う事になったって分けだ」。
「やっぱり、でも警察官していたら私達遭えなかったね」。

「そんな事ないさ、縁があればどんな仕事していても巡り会えるさ」。
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