はと@杭州便り

中国杭州で仕事&子育てしているはとぽっぽのページです。

報われない

2012-03-22 16:31:48 | 中国企業で働く
会社の同僚の契約更新があった。

同僚といっても今一緒に仕事をしている翻訳チームは、ほぼ全員派遣社員。
労働契約、正社員は確か3年に一度の更新なのだが、派遣の人たちは1年に一度。

私の会社でも相方の会社でも、ここ数年派遣社員が増え続けている。
彼らの労働契約はあくまで派遣元の会社との間の契約で、保険や年金などはあるものの労働契約は一年更新。正社員と同じような仕事をしていても福利も待遇も差があるのは周知の事実。

最近でこそ仕事も随分落ち着いて、残業することもなくなったのだけど、
昔、ピークに忙しかった頃は皆腱鞘炎になるんじゃないかと思うくらいバリバリ働き、
病気になって熱が出ても休むと言えずフラフラになりながら仕事をしなければいけない時期もあった。
最初は大勢いた派遣社員の人たちだが、業務の忙しさに自分からやめていった人や、逆に日本語の能力が足りないためこちらからやめてもらった人もいて、そんな中最後まで残ったのが今の7人。
正直正社員の人たちより日本語のレベルも、仕事に対する姿勢も処理能力もずっと優秀な人たちである。

彼女達の多くが超一流ではないけど有名大学の日本語学科を卒業し、中には日系企業や貿易会社で数年の勤務経験をもつ人もいる。皆日本への留学経験はないけれど、日本語の読み書きの能力は新卒の人でもかなり高い。断言はできないけど日本の新卒と比べたら、中国の新卒の方が優秀な人が多いと思う。

それなのに彼らの給料は驚くほど低い。
日本の大卒初任給が20万2千円という記事を見たが、私の知る限り中国の大卒初任給はこの6~7分の1。
中国は物価が安いでしょうと言われるけど、都市部の物価は年々上昇しているし、不動産なんかとっくに日本の地方都市より高い。
都市部では食品や衣類などの生活必需品、賃貸アパートの家賃などは少なくとも日本の2~3分の1程度ではないかと思う。それを日本の6~7分の1の給料で必死にやりくりしているのである。

去年日本で震災があったとき、会社でも募金活動をしてはどうかという声があがった。
有難いと思う反面、私の中でそれは何だか違うんじゃないかという気持ちがあった。
家族用のアパートを3~5人でシェアしたり、トイレもキッチンもない農家の間借りをして暮らしている同僚達。この寒い杭州で冬には暖房もなく、給湯器もないため暖かいシャワーも浴びられない、一日の食事の何食かはカップめんやふかしたじゃがいもでしのぐ同僚達を知っているからだ。
言い方は適切でないかも知れないが、正直普段の生活レベルが日本の被災者かそれ以下という人もたくさんいる中で、日本への募金をお願いするなんてやっぱり何かがおかしいと思った。

私が入社した約10年前。
会社には地方出身者も新卒の正社員もまだ多かった。
10年前の新卒の給料も今と大して変わらなかったけど、同時はまだ物価が安かったし、
切り詰めた生活をしていても今頑張ればきっと3年後、5年後は収入も増えて良い生活ができるようになるはずだという神話をまだ信じることができた。

今会社では地方出身者が減って地元杭州の人が増え、そして新卒の正社員はほとんど採用されない。
中国では日本のように新卒と既卒の採用枠を分けてないため、同じ職種の募集であれば既卒で職歴のある人がどうしても有利になる。というか、最初から新卒はお断りだと書いてある求人も多い。
地方出身者はこの杭州で家賃と生活費を払い、ギリギリの生活をして何年働いても貯金はほとんど残らない。貯金どころか実家からまだ仕送りしてもらわないと生活できない人もいる。この現実の前に彼らは夢をもつことができず、何年か働いて結局地元へ戻ってしまう。

地元へ戻ったからといって職が簡単に見つかるはずもないし、大学で学んだことを生かせる仕事なんかまずないとわかっていても、もう疲れ果てて帰るしかなくなってしまうんだろうな、と思う。
ここ2、3年、そうやって別れをつげてやめていく人たちを何人見送ったことだろう。

今日契約更新に望んだ派遣社員の人たちも、ほんのわずかの給与アップを希望していた。
会社側の回答は恐らくNO。
上司が陰で「彼女達が今の待遇が不満でやめるんだったらやめてもらっていい。どうせ代わりなんかすぐ見つかるんだ。」と言っているのを聞いてしまった。
この1年グチも言わずに努力してくれた彼女達に、悔しいけど私がしてあげられる事は何もなかった。

大卒の就職が厳しいのも、派遣社員の現実が厳しいのも日本だって同じじゃないかと言われるかも知れないが、中国のそれは日本よりずっと厳しいと思う。
有名大学に入るために小学校から厳しい競争を勝ち抜いて、本人はもちろん家族もどれだけの苦労をし、犠牲を払ってきたのだろうと思う。
大学に入ってからも多くの学生が試験やレポートに追われる中、少しでも就職を有利にしようとダブルスクールや資格試験の勉強に明け暮れている。
それらの努力があまりにも報われない現実に、もうため息しか出てこない。

GDPは年2ケタ成長で高度成長期にあるはずの中国、日本旅行で金を湯水のように使いブランド品を買いあさる富裕層がいる中で、大多数の若者はこんな状態なのだ。
この先景気が良くても正社員の募集は減り続け、大卒初任給も上がらないだろう。
こんなことではもっと先、中国の景気がマイナス成長になった時、いったいどうなってしまうのだろうと思う。

すみません、今日はグチでした。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
うちの社員も (wadako)
2012-03-25 23:50:19
うちの社員も、ちゃんと考えてほしい!
安い安いって言っても、手当はしっかりついてるんだから。
こういう風に必死になって働く人がいる中で、
あんた達は出勤時間の1/3はどっかでヒマつぶしてるでしょう!!
・・・・・・私もグチでした。
(mixiのDaDaoさん所から来ました)
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Unknown (はとぽっぽ)
2012-03-27 17:38:25
>wadakoさん

コメント有難うございます。
出勤時間の3分の1はヒマつぶし…うちの会社にも多いですよ、そういう人。というか、中国企業って実はそういう人のほうが多いのでは?と思います(苦笑)。
でも正社員も給料安いですからね~、上は知りませんが下の方は正直誇りを持って仕事できるような金額じゃないですから。

でも日系企業も話聞いてると、中国人の給料は安いですよ。それで中国企業より仕事きつい、責任重い、とくれば割に合わないと思って辞めてうちの会社来た人も多いです。

本当に子供の頃から一生懸命勉強して大学卒業してもこんな給料じゃ、夢が持てないですね。能力はあってもそれに見合った仕事も企業もここにはないと思います。

結局派遣社員のうち1人は、会社を去ることになってしまいました。
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はじめまして! (Hiroshi)
2012-03-30 20:10:35
買分のことといい、今回のことといい生々しい話、参考になります。本に書いてない素顔の中国でしょうか?
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Unknown (はとぽっぽ)
2012-03-31 11:56:04
>Hiroshiさん

コメントありがとうございます。

日本に帰ると「中国って今景気よくって、日本のバブルの時みたいに皆お金持ちなんでしょ?」みたいなことを言われることが多いんですが、確かにそういう成金の人達も多いとは思うんですが、それ以上に不動産や物価の高騰で逆にますます生活が苦しくなっている人も多い気がします。

給料なんて会社入って何年たってもほとんど上がらないですよ。むしろ初任給は下がり続け、福利もどんどん無くなっていると思います。

景気がいいにも関わらず、若い人たちが将来に夢を持てないのが一番問題だと思っています。
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