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けっぱれラピット、どろ亀さんに負けるな。ウサギとカメとの競走です。随想、旅行記、日記など、雪の降る街からのお便りです。

眼の光 

2012-01-24 17:06:35 | 紹介
昼時有名人のインタビューの時に、映画監督が新人俳優を引き出す際、「あの子は眼の光があったから」という場面を何度か見たことがあります。「眼の光」が一般人と違うことが、その人の魅力となっていたのです。
今読んでいる谷崎潤一郎の「台所太平記」(中央公論社)の中に、同様のことが書かれていますので、紹介しておきます。
主人の物書きがおり、お手伝いさんを幾人も雇っていました。その中の鈴と呼ばれる女性について、次の様に説明しています。鈴はとびっきりの田舎出で、奉公にあがった時は、まだまったく磨かれていませんでした。
「あの児は美人には違いないけれども、惜しいことに眼に光がない。あれで眼に一種の鋭さがあって、キラリとした閃きのようなものがあったら、ほんとうの美人になれるんだけれど、………そうしたら映画女優にでも推薦出来るんだけど、………もっと上の学校へ入れて教養を積ませたら、きっとあの眼に輝きが出てくるんだかなあ」
このように書き、眼の閃きを付けるには教養を付けることだとしています。
この鈴が出てきたところが、大津から江若鉄道に乗って、浮御堂のある樫田の駅の次の真野というところでした。古くから由緒ある湖畔(琵琶湖)の村でした。
そこで詠まれた歌があるそうですが、美しい詩(うた)が詠まれていますので、紹介しておきます。
式子内親王の歌に、
     夜半に吹く浜風寒み真野の浦の
         入江の千鳥今ぞ鳴くなる
素せん法師の歌に、
     雲はらふ比良山かぜに月さえて
         氷かさぬる真野のうら波
むかしの人は美しい歌を詠うものだと感心しています。