175Rと130R

175Rと130Rの関係性を多角的に考察し、新しい日本のあり方を模索する。

大長編~酒に呑まれた男の話~

2004年12月08日 | Weblog
誰もが1度や2度は、酒に呑まれたことがあるに違いない。
私も、幾度となく酒に呑まれてきた。
ところで、一般に「酒に呑まれる」というと、寝ちゃったり、つぶれちゃったり、吐いちゃったり、暴れちゃったりして、周囲の人間に迷惑をかける、というパターンが主流である。
そして、呑まれ方、呑まれる頻度こそ人によって違えど、当然のことながらそこには、目撃者、事件の証人たちがいる。

しかし!
世の中には、誰もいないところでひっそりと、なおかつドラマチックに呑まれちゃう、というアンハッピーな、誰にも報われない呑まれ方があることを皆さんはご存知だろうか。


★エピソード1 ホモ拉致事件の記憶★

大学に入ってすぐ、あれはテニサーか何かの新歓コンパだった。
いくら飲んでもタダ、ということでテンションが上がりきっていた私は、ひたすらに飲んだ。
そして楽しく、気分よく帰路についた。
いつのまにか私は、乗り継ぎ駅である池袋駅西口の植え込みあたりで、ひとり、座り込んでいた。
おそらくは、気分が悪くなったため、風に当たって休もうとしたに違いない。

しばらくしてオジサンが、「おい、車で送ってやるよ」と声をかけてきた。
子供の頃、「知らないオジサンに声を掛けられても付いて行っちゃダメよ」と散々言われながら、一体全体どこにそんな阿呆がいるものかと思っていた。
しかし、事実いたのである。

私は、オジサンが赤の他人であることなど全く意識せず、タクシーでもないのに自分を家まで運んでくれるという善良な人間の登場に、「まじラッキー」と思った。
そして、ホイホイと付いて行った。
ちなみにオジサンの車は、軽トラックだった。

何のためらいもなく助手席へ乗り込み、オジサンに住所を告げた。
そして、寝かけた。
寝かけたけど、「アレ?なんかおかしくないか?」ということに、遅ればせながら気付いた。
隣りを見れば、相当気色の悪い、熊のようなオジサンが車を運転している。
「コイツは誰だ?」
ちょっとしたパニックに陥りながらも、酔いは覚めず、まあ家まで送ってくれるならいいや、と呑気なことを考えながら、テキトーにオジサンの話し相手をつとめる。

しばらくして、オジサンが、ハンドルを握っていない方の手で私の太もものあたりに手を伸ばしてきた。
その日は短パンを履いていた。
しかし、そんなことをされても、意味がわからないだけだった。
たとえシラフの人間であっても、まさか自分がホモに拉致されているなんていう事実をすんなりと受け入れられるはずがない。

オジサンは次第に、私の太ももを、さすり始めた。
その段になってようやく、私は全ての事態を把握した。
「こいつ…、こいつホモや!」
なんで関西弁なのか?という疑問、それは、プロゴルファー猿がなんで関西弁なのか?という疑問と同じくらい、無意味である。

全身から冷汗が出てきた、なんてもんじゃない。
今まで経験したことのない種類の恐怖に、心底ゾッとした。
抵抗すればできないことはなかったが、しかし、車はけっこうなスピードで走っている。
相手の精神状態もわからない段階で下手に抵抗して、車ごと事故られては元も子もない。
この判断、酔っ払いにしては相当クレバーだが、それほどまでに私が追い込まれていたということである。

結局、逃げ出すチャンスがないままに、私はマグロ状態で太ももを触られ続けた。
相手を油断させるために、トークの面でも相手に合わせ続けた結果、私はオジサンの自宅の前まで連れて行かれた。
いや、きっと最初っからオジサンはそうするつもりだったに違いない。

私のマグロっぷりにだまされてすっかり油断しきっていたオジサンは、ガレージのシャッターを開けるため、私を置いて車の外に出た。
「このチャンスを逃したら、おれの人生は終わる!」
そう思った私は、バッグを引き寄せ、即座に助手席のドアを開けた。
そして、わき目もふらずに、星空の下を駆け抜けた。

星空の下を駆け抜けた、なんて言うとやたらロマンチックだが、実際には、ケツを掘られないために駆け抜けたわけである。
もちろん後ろは振り返らなかった。
私にとっては死ぬか生きるかの戦いであり、その時の走りは、全盛期のカール・ルイスを彷彿させた(に違いない)。
とにかく、無我夢中で走った。運良くコンビニを発見した私は、藁にもすがる思いで駆け込んだ。

そして息を切らせながら、「タクシー、呼べますか?」と店員に聞いた。
「呼べません」
…愕然とした。ホモ野郎がすぐそこまで迫っているかもしれないというのに、タクシーがつかまらないという。パニックパニックである。

しかし冷静になって外を見るとそこは大通りで、普通にタクシーが走っていた。
安堵した。
コンビニの店員は相当いぶかしげに私を見ていたに違いないが、そんなことはホモのオジサンに掘られることと比べれば鼻くそみたいなものである。

無事タクシーに乗り込み、現在地を運転手のオジサンに聞いた。
池袋から、自宅方面に近づいていた。
ラッキーだった・・・かどうかはわからない。

このタクシーの運ちゃんもホモだった!なんていうオチはない。
が、帰宅後、落ち着いてその日の出来事をひとつひとつ振り返ったとき、私は衝撃的な、そして取り返しのつかない事実を思い出してしまった。
オジサンに住所を告げるとき、メモ帳に、住所を、書かされていたのである!
以来しばらく、住んでいるマンション付近で軽トラックを見つける度に、私は怯えた。

この事件は、男だからといって決して油断はできない、ということを私に教えてくれた。
そして、ありがたくないことに、私がホモ野郎に好かれる種類の人間である、ということも。


★エピソード2 トイレに一泊★

これも大学1年の時の話。
友達と、いつものように楽しく飲んでいた。
そこまで大量に飲んだ覚えはないし、はた目にも、ひどく酔っ払ったりはしていなかったという。
しかし、どういうわけか私は、帰り道、みんなとはぐれてどこかへ行ってしまったらしい。

出発する電車の中から、ホームを歩いている私を見た、という目撃情報もあり、みんなと一緒に駅の改札に入ってホームまで降りた、ということは確実のようなのだが、
何を思ってみんなとはぐれたのか、それはいまだもって謎である。

その後の記憶は断片的であるが、
とりあえず、駅周辺の商店街をフラフラと彷徨って、転んで、倒れて、寝ちゃってた。
オマワリさんか誰かに起こされて、なぜか逃げた。ダッシュで。
その後、駅の外周にあるトイレの個室に入って、しこたま吐いた。
ここまでは、なんとか覚えていたのだが。

次に私が意識を取り戻したときは、すでに朝だった。
私はなぜか、そのトイレの入口で、寝ていた。
ご丁寧にも、着ていたナイロンパーカーを自分に掛けて寝ていた。
外は雨が降っていたが、そんなことよりも問題は、カバンがない!ということであった。

ヨロヨロと立ち上がり、とりあえずトイレで小用を足す。
ふと、背後の個室を覗いてみた。
悪夢のような光景が、私の目に飛び込んできた。

カバンとともに、その中に入っていた私の持ち物が、個室の中に散乱していたのである。
散乱していたのは私の持ち物ばかりではない。私のゲ○もまた、飛び散っていた。
当然、持ち物は、ゲ○まみれになっていた。
例えば中国語の教科書。
それは強烈なニオイを放っていた。帰宅後、香水をかけまくったが、無駄であった。
仕方なしに、それ以来私は、中国語の授業で、教科書のコピーを使う羽目になった。

そして、いつ落としたのかはわからないが、いくつかの持ち物が、なくなっていた。
ケータイの充電器、文庫本「ブリジット・ジョーンズの日記」、図書館で借りていたいかつい本、などである。
「ブリジット~」なんかは本当にどうでも良かったが、図書館で借りていた本は当然、弁償させられた。

ただ、自宅のカギと財布が、和式便器の脇10センチのあたりで生存していたのは、不幸中の幸いであった。
よくなくならなかったものである。よくぞ便器に落下しなかったものである。
しかし最大の発見にして最大の驚異は、トイレで一晩を過ごせてしまった、それもグッスリと眠れてしまった、私自身のプライドの垣根の低さである。
無意識ではあるが、はっきり言って、私のとった行為は、人間未満である。
犬猫サルでも、トイレでは寝ないだろう。

私は本当に落ち込んだ。
ホモ拉致事件同様、話のネタとして友達と笑ってはいたが、二度とこのような失態は犯すまい、と強く心に誓ったものである。


上に挙げた2つのエピソードは、今になって考えれば考えるほど、ありえない出来事である。
そして最近、自分の中に、これらの事件をなかったことにしようとしている自分がいることに、気が付いた。
しかし、忘れてはいけないのである。
それを忘れたら最後、私は、同じような過ちを再び犯すだろうし、事実、「二度とトイレで寝ない」と誓ったにも関わらず、私はその後、友人の家のトイレで寝かけたことがある。

そう。ここに挙げた特異なエピソード以外にも、私は幾度となく、酒に呑まれてきた。
高校時代のウイスキー逆噴射事件に始まり、大学では所属していたサークルのパーティーで好き勝手に暴れ、またある時は、友人宅で阿呆のように騒ぎ。
駅のホームでピュークした回数も、1回や2回ではない。

なんだか書いているうちに、非常に沈鬱な心持ちになってきたが、
飲んでいる回数を考えれば、呑まれる確率はわりかし低いので、そして基本的には平静を保って飲めるので、悪しからず。
とりわけここ1年は、事件らしい事件も起きていない。

でも、だからこそ、そろそろ何かが起きるのではないか。
そんな思いから、自分を戒める意味で、このブログを書いた。社会人になってから、酒に呑まれることがないように。カッコいい大人になるために。

ここまでこの長い長い私的な文章を読んでくれちゃったアナタは、相当の物好き、もしくは酒好きである。
そんなアナタに私が言えることといえば、ただひとつ。「時間を大切に!」

ご精読、ありがとうございました。

4 コメント

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Unknown (よーよよ)
2004-12-15 02:05:00
今日は久々に酔っ払いを観ました・笑
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Unknown (mi)
2004-12-16 13:31:47
そしてあの店に掛かってた絵は、ディープインパクトであると同時に、ホントに謎でした。
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Unknown (だいさく)
2004-12-22 23:36:31
久しぶりに見ました!

相変わらずの文才だね☆

ちなみに昨日の午後21時43分、加藤が永眠したよ。

 ほんとに残念だけど、仕方ないよね。。

 お通夜が明日の午前9時から品川水族館であるから来れたらきてください。
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Unknown (mi)
2004-12-23 04:22:03
水族館でお通夜だなんて、新しいな。しかも朝早いな!

でも明日はバイトだから行けないや!

いやいや、ちがうがな。そういうブラックジョークは、ネットだと笑えないから・笑



それから、本文で、「そろそろ何かが起きるのではないか」なんて無責任なことを書いていますが、つい先日、本当に悲惨な事件を起こしてしまいました。罪を背負いながら生きていこうと思います。
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