祝 永田満徳『肥後の城』 俳誌「秋麗」2025年7月号より
※「文學の森 各賞贈賞式」は2023年5月16日(火)、新宿の「京王プラザホテル」で行われました。
「文學の森大賞」を受賞して
永田満徳
このたび第十五回文學の森大賞を頂き、身の引き締まる思いです。選考の先生方、文學の森の方々には心よりお礼申し上げます。第一句集刊行後ご指導を頂いた「鷹」の奥坂まやさん、選句においては「秋麗」の藤田直子さんにお世話になりました。その他にもたくさんの方のお力を得たことをありがたく思っています。
俳句大学三賞の選考委員の松野苑子さん、木暮陶句郎さん、辻村麻乃さんにもご参加頂き、感謝申し上げます。
『肥後の城』は『寒祭』に次ぐ、第二句集です。平成二十五年より令和三年までの八年間の句の中から三四四句を収めました。二十五年間の句業の集大成である『寒祭』に比べて、短期間の句業を収めることができたのは、インターネットやSNSなどの情報通信技術の恩恵に浴するところが大きいです。
私が代表を務める「俳句大学」では、例えば、インターネットの月に一回の「俳句大学ネット句会」、或いは、 Facebookの「俳句大学投句欄」に於ける、辻村麻乃さんらの講師による「一日一句鑑賞」、会員による「一日一句互選」や週ごとの「席題で一句」「テーマで一句」「動画で一句」、特別企画の「写真で一句」などを行っています。ほとんどの企画は野島さんにお世話になっています。この場を借りてお礼を申し上げます。
そういう取り組みの中で、投句し、講師として選句も担当してきました。私の作句数は月に五〇句を超えることがしばしばで、八年間で五〇〇〇句以上の俳句を残せました。近年のコロナ禍にあっても、より積極的に、より活発に活動できました。
ちなみに、俳句大学は国際俳句の分野においても活動していまして、そのお手伝いの英語の担当の中野千秋さん、ちょっとお立ちください。毎日、五〇句を五七五に訳して貰っています。
『肥後の城』は、平成二十八年四月に起こった熊本地震の句を起承転結の〈転〉の部分に当てるつもりで編集を進めていました。一度は文學の森で初校まで出来ていたところ、令和二年七月、郷里の人吉を大水害が襲ったため、二つの大災害を悼むことにしました。
元「未来図」の方も多く来て頂いていますが、元「未来図」の鍵和田秞子主宰の「あなたは熊本にいるのだから、熊本城や阿蘇、天草を詠みなさい」というご助言を頂きました。
また、「火神」からも牛村蘇山さんに来て頂いていますが、元熊本大学教授で「火神」主宰の首藤基澄先生の阿蘇への思いの集大成とも言うべき句集『阿蘇百韻』に促されて、熊本城、阿蘇、天草を詠み込んだ句を多く残しました。テーマ性と郷土色を盛り込んだ読物になるように心掛けました。
その点、選評を頂いた最終選考委員の能村研三先生は「寒日和窓てふ窓に阿蘇五岳」という句を挙げて「句集掉尾の句だが、 「窓てふ窓に」という措辞に郷土熊本を真に愛する心持が出ている」。古賀しぐれ先生は「故郷熊本への愛を自然体に詠みこまれているところに好感を抱いた」と評して頂きました。昨年の「俳句界」十一月号では本日お見えの岸本尚毅氏より「熊本の風土を背負った句集」と言って頂きました。
また、夏目漱石は熊本にて運座(句会)を開き、「俳句はレトリックの煎じ詰めたもの」と語りました。しかし、今日、漱石俳句の継承者はいません。そこで、私は漱石の後継者を自認し、漱石の言葉である「俳句はレトリック」に倣い、連想はもとより、擬人化・比喩・オノマトペなどを駆使して、バラエティーに富んだ、多様な俳句を作ることを心掛けました。
これについては、第一次選考委員の望月周氏より「心の表現に適う修辞を自覚的に探りながら、郷土・熊本への熱情を多彩な詩に昇華しており、強い印象を残す」と言って頂き、我が意を得たる心境です。
郷土色の強いとあまり印象の良くない、しかも、技巧的と評判の悪いレトリックを使っています。そんな句集を選んでいただいたことは本当にありがたいことだと思っています。
「文學の森大賞」は選考委員の方の慧眼の士によって頂いた賞だと思い、感謝の念に堪えません。この大賞を励みにして様々な読みにチャレンジしていきたいと思っています。
高野ムツオさんを熊本に歓迎したときに、「東北は蝦夷、熊本は熊襲。蝦夷と熊襲との連合軍を作って頑張りましょう」とおっしゃいました。もちろん、中央を攻めようとは言いませんが(笑)。
これからも、熊本の地で頑張りたいと思いますので、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いします。
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