goo blog サービス終了のお知らせ 

走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

司法と薬物依存

2015年02月24日 | 仕事
バンクバーの違法薬物の歴史

1908年に中国からの移民者と共に持ち込まれたのオピウム。バンクバーにはオピウムを娯楽の一部として楽しめるパーラーが数カ所あった。もちろん違法ではなかった。それから約40年後オピウムに関連した犯罪行為が増え薬事法に違法薬物が加わった。その頃アメリカではWar on Drugsが真っ盛り。一気に取り締まりが唯一の解決策のように社会は動いていった。
エイズやBやC型肝炎の増加に伴い、医療問題の考えが深まる。1989年北米では初めてのSafe Injection site (薬物依存者が滅菌処理された注射や吸い込みに必要な物品をタダで使用できるスペース) が作られた。ハームリダクションの思想だ。

ハームリダクションによる介入が始まって25年経つ現在。このビデオはバンクバー警察によって2003年に作られたドキュメンタリービデオ。
警察官と薬物依存者の関わりが映っている。

日本では薬物依存は都会だけの話、芸能人や著名人の話と思う人が多いと思う。しかしそうでしょうか?合法な薬物を治療目的以外で使用している人の数は増えていっている。インターネットによる販売は都会も田舎も関係ない。
警視庁のデータを閲覧してもイタチごっこのような終わりのないWar on Drugs が伺える。

このいう問題は医療と政治、司法の全てから取り組んでいかなけれなならない。司法に頼りきった結果がどうなったのかビデオを見ればよくわかると思う。

ビデオにはOD(致死量を投与)した男性が助けられるシーンがある。蘇生されリハビリから戻ってきた同じ男性が映っている。
裕福な家庭に育ち15歳の時に薬物と出会い、家族の繰り返される回復へのケアの甲斐なく売春婦となった女性も。彼女は自分の事を薬物依存の奴隷だと言う。

警察官の視点は個人性に目をやること。薬物依存者にも愛する家族がいて、人並みの人生があった。自分たちと同じ人間であることを忘れないでいく。シンプルだがほぼ廃人化された薬物依存者を前に、その気持ちを保持していく難しさ。簡単ではない。燃え尽き症候群にかかる警察官も多いとか。

注目して欲しいのはこのビデオの中で彼らの仕事は薬物使用者の取り締まりではない。地域の治安を守るためにパトロールしている。その最中に薬物使用者に人間として声をかけ、安否を気遣っている。

ビデオは52分と長いし、もちろん全て英語ですがどうぞみてください。

あ、昨日今日とビデオに映るバンクバーを見てとんでもないとこだと思わないでください。オリンピックで見たように素敵な街ですから! 北米でもヨーロッパでもアジアでも大なり小なりあっても存在する問題ですから。バンクバーの凄いところは、この問題に正面から向き合ってオープンな所ですよ。隠したりしても消える問題ではないですから。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。