走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

人生のエキスパート

2020年05月07日 | 仕事
ナースプラクティショナー(NP) の継続教育の一環としてUBCの医学部からのメールを読んでいる。このシリーズメールはThis change my practice と言い、新しい研究や経験の元に昔からの診療を変えたエピソードの紹介。コロナ以来、毎週コロナ関連の内容になっている。

で、今週の内容がserious illness conversation (CIS) 。こちらが元々のサイトこっちはBCのがんセンターが一枚にまとめたもの。先日治療の拒否の意思表明について書きました。日本の方は、北米でさぞこのアドバンスケアプラン(ACP)が進んでいるんだろう、と思われるかもしれませんが、いえいえ100%なんて事はなく、全く考えたことない!と言う人が珍しくありません。だからこのCISは北米の医療職にとっても重要な課題なのです。

さて、心打たれる箇所が何箇所かあったので紹介したいと思います。執筆者は医師です。

「医療者は疾病に関してエキスパートであっても患者個人が個人の人生のエキスパートである、、、」これは私も看護師時代から自分の仕事に織り込んできたこと。医療者はその人の人生のほんの一部しか接していない自覚が低い言動が多い。疾病による痛みも、日常的な活動の制限も死も経験するのは本人であって、医療者ではない。このスタンドは忘れてはならない。

CISはその個人のバリュー(信ずるところ、人生において重きを置いているところなど)を知るためにある。そこを理解することにより患者中心のケア(ケアとは医療チーム全体の医療ケア)のゴールが生まれ、その後に延命治療の拒否について話せる、となるのだ。

実際の会話の進め方は省略。バリューを知るところから始まり、3つ目が延命治療の有無となる。

「がんや心不全などは病状の進行過程があり、人間はその病状に順応していく時間があるが、コロナは発症から死までの進行が早い、、、」確かにそうだと思う。がんや慢性期疾患など、間近で経験していないと、どんなペースで悪化し、活動域が遮られ、どのように死んでいくのか想像できない人にとって、その病気と生きていく先が想像出来にくいと思う。そして体も心も進行に伴い少しずつ順応するので然程辛いとも思わない(標準が随時変わる)。これが疾患の成り行きを理解しにくいポイントなのかもしれない。しかしコロナはそんな順応する時間もなく進行していく。だからこそ、短期間で3つのプロセスがスムーズにできる技量が大切と、その為のハイライト的な執筆だった。そしてこのようなクライシスの中でも効果的に3つのプロセスを進めるにしても、患者のバリューを聞くことで患者中心のケアプランを立てる事が大切と結んであった。



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