瀧澤美奈子の言の葉・パレット

政を為すに徳を以てす。たとえば北辰の其所に居りて、衆星の之に共(むか)うがごときなり。

福島第一原発事故を正しく怖がる試み(5)

2011年03月19日 | ひとりごと
 物理学を研究している友人から、福島第一原発について素粒子コミュニティで回覧されている情報を教えてもらいました。

「福島原発の放射能を理解する」
http://ribf.riken.jp/~koji/jishin/zhen_zai.html

というもので、カリフォルニア大学のBen Monreal助教授(高エネルギー物理学)の解説を日本の研究者らが翻訳したものです。(Ben Monreal氏のHPには英語の解説もあります。)

詳しくは本体のPDFをご覧いただくとして、私なりにポイントをまとめてみます。

現在福島第一原発で起きている深刻な事象として、
■2号炉での燃料棒融解と閉じ込めの失敗
 →ジルコニウム被覆内:燃料+核反応生成物+アクチノイド※
       ※アクチノイドとは原子番号89から103までの15元素の総称 
  冷却水中:核反応生成物(セシウム、ヨウ素、テクネチウムなど)
  蒸気中:核反応生成物(キセノン、クリプトン、ラドンなど)

 →つまり、環境中にキセノン、クリプトン、ラドン、セシウム、ヨウ素、テクネチウムなどが漏れ出ている可能性があるということ


■3、4号炉での燃料棒融解と燃料発火(※燃料が発火したかどうか報道にばらつきあり)
 もし燃料発火も起きていれば、
 →ジルコニウム被覆内:燃料+核反応生成物+アクチノイド

 →つまり、環境中に燃料+核反応生成物+アクチノイドが漏れ出ている可能性があるということ。
 これは非常に深刻な事態。でも(爆発炎上の際に核分裂した)チェルノブイリほど悪くない。しかも燃料棒は100日前に原子炉から取り出されていたため、放射能の危険はチェルノブイリに比べて100分の1。

Monreal氏の結論は、
*********************************************************
・チェルノブイリの事故と違い、情報があるのでmSvを数えて対応を決めればいい
・福島原発の放射能災害は、最悪の場合でもコントロール可能で局所的(初期避難と食品中のヨウ素131摂取をコントロールする必要がある)
・地球規模災害の恐れはない
・津波被害者と50人の福島原発の作業従事者のためにみんなのエネルギーを集中させよう
*********************************************************

さらに、被爆量について頭に入れておくと便利な数字。

1.数ミリシーベルト(mSv)の被爆はまったく心配する必要はない(しかしmSv/時を長時間蓄積するのは良くない)

2.(ガンの発生率のデータから)1Sv=1000mSvを被爆することは運転中に携帯メールを打つ危険と同じ程度のリスクで、避けたほうがよいのは確か。

3.(急性の放射線障害のデータから)5Sv以上=命の危険:逃げる

注意すべき核種は、ヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム90、プルトニウム241。火災発生の場合は、ジルコニウム95、モリブデン99、ルテニウム103、セリウム141、バリウム140が粉塵に含まれる可能性あり。

ということです。

 今日は東京消防庁による「スーパーポンパー」という放水車で、号機のプールめがけて7時間連続放水し、1200トン以上(プールをほぼ満水にする量)の海水を入れています。事態の好転を祈りながら静かに見守りたいと思います。

修正情報:19日の東京消防庁による放水は4号機ではなく、3号機に対して行われたものです。すみません書き間違えです。Tさん指摘してくださってありがとうございます。(2011/3/21追記)
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