瀧澤美奈子の言の葉・パレット

政を為すに徳を以てす。たとえば北辰の其所に居りて、衆星の之に共(むか)うがごときなり。

克己復礼

2020年04月07日 | 科学ニュース
 新型コロナウイルスの国内感染が拡大の一途をたどっており、本日緊急事態宣言が出される見通しです。新型コロナに関するさまざまな情報が往き交うなかで、確かな情報を得て、冷静に対応することの重要性を感じています。私自身、国内の科学ジャーナリストに向けて、志を同じくする仲間と有用な情報を整理・発信したいと考え、新しいサイトの立ち上げでこの数日を費やしました。

 しかし、その作業の傍ら、重苦しい通奏低音のようにいつも頭の隅から離れないのが、やはりAMEDを取り巻く問題です。

 4月1日の人事で、大坪寛子厚労審議官が健康・医療戦略室の次長を退きました。しかし、健康・医療戦略室のトップである室長は、あいかわらず和泉洋人補佐官のままです。また、大坪氏にしてみても厚労審議官の任を解かれたわけではありません。一方で、末松理事長は再任されず(その理由も明らかではありません)、代わりにまったく専門外の新理事長を迎えています(この理由も明らかではありません)。こうしたことが、国民に選ばれた人間ではない人物によって密室で行われているのです。
 ある秘書官の関係筋の情報によると、安倍首相は末松理事長に「和泉からの情報しか上がってこなかった。申し訳なかった」と伝えたと言われています。

 一連の不祥事に対する謝罪も説明も引責辞任もないまま、すでに新しい年度が始まっています。和泉補佐官と大坪審議官のこれまでの関係性を考えれば、AMEDへの影響力は実質的にはこれまでと変わらないか、むしろ新型コロナウイルス対応という「大義」を得て、さらに無理を強いるのでは、とまわりから見られても、何ら不思議ではない状態です。

 「克己復礼」という言葉があります。他人を打ち負かすのではなく、私情や私欲に打ち勝って、礼、すなわち正しい生活規範と社会のルールにもどり、それを通じて自己の意志を行ってはじめて、社会に働きかけることができるのです。組織の支配・管理・運営ができる能力があるかどうかということに極めて重要な部分を占める「徳」の本質です。残念ながら、これからもAMEDの置かれている異常事態を注視しなくてはならないようです。


 


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