瀧澤美奈子の言の葉・パレット

政を為すに徳を以てす。たとえば北辰の其所に居りて、衆星の之に共(むか)うがごときなり。

中小規模の石炭火力からのCO2回収・貯留

2015年11月11日 | 新聞連載「想像から切り開く科学技術の世界
 時事通信社から配信される月一回の子ども向け科学コラムが今日校了しました。
 今回取り上げたのは、「中小規模の石炭火力からのCO2回収・貯留」。

 地球温暖化問題に対して、今月30日から世界の代表がパリに集まり、二酸化炭素の排出削減目標を決める会議(COP21)が開催されます。
 対策のためのポイントのひとつは、皆さんご存知のように、電気を作るのに二酸化炭素をいかに出さないようにするか、です。

 欧米各国はCOP21に狙いを定めたかのように、脱石炭火力発電の政策目標を相次いでを発表しています。現在、世界全体の電気の約4割は石炭火力発電で、そのCO2排出量の多さが問題になっているからです。しかしながら、石炭は埋蔵量が多く、安くて手に入りやすいため「CO2の排出をなくすことができない限り」、という条件つき。つまり先進国も技術によってCO2排出をゼロにできるなら、石炭火力発電を使い続けたいということです。また石炭火力発電は発展途上国を中心に、今後も長く使われると思われます。
 
 そこで、先進各国では、石炭火力発電で発生するCO2をすべて一カ所に集めて取り出す技術開発を行っています。
 とくにコスト面も含めて実用化に近いとされるのが中小規模向けの「ケミカルルーピング」と呼ばれる方法です(大規模向けにはまったく別の技術が確立されているが、コスト高で導入できない)。
 ケミカルルーピングは、数年から10年後をにらんだ近い将来の実用化の段階では、中小規模の自家発電所をもつ化学プラント、鉄鋼、石油、セメントなどの企業向けの施設になる見通しです。発電容量でいうと日本国内のすべての石炭火力発電の数%だそうですので、規模は限定されますが「チリ積」の第一歩ではないでしょうか。
 ただ、集めたCO2は地下などに貯める必要があります。すでに地下貯留を認可している国もありますが、日本では環境影響の研究が行われている段階です。ここの部分は確かにしっかりやっていただきたいところです。
 もちろん長期的には再生エネルギーや蓄電池の技術の進展や普及が期待されますが、足元ではこのような研究もされているということを今回紹介しました。

「どこでも窓」

2015年10月18日 | 新聞連載「想像から切り開く科学技術の世界
 今月の時事通信社の子ども向けコラム「想像から切り開く科学技術の世界」が先日配信されました。今月とりあげたテーマは「どこでも窓」。まずは4K、そして将来は8Kの高精細な大画面映像をリアルタイムで遠くに送る技術です。まるですぐそこに別の世界が広がっているように感じられたら面白いと研究者が期待をこめて「どこでも窓」と呼んでいる技術です。遠隔医療への応用を念頭に実験を行っている慶応義塾大学の当麻哲哉先生にご登場いただきました。

 インターネットを使って、世界の裏側にいる人ともほぼリアルタイムにコミュニケーションができるようになりました。数年前、スカイプで外国にいる人と相手の表情の変化を見ながら初めて会話したときのドキドキは今でも忘れられません。それをもっと高画質、大画面で実現できたとき、私たちが感じるのはまた別の感覚なのでしょうか。

 灼熱の砂漠に照りつける日の光にクラクラし高と思ったら突然舞い上がった砂嵐から思わず顔をそむけたり、真っ暗闇の深海の底をチョウチンアンコウのほのかな光のあとについて探検したり、樹齢数千年の巨木を見上げてため息をついたり。旅行中の友人とつないで、一緒に旅をするのも楽しそう。「あ、もっと、右右!そう、そこを倍率を上げてもっと注意深く観察してみて」、「まるで苔の森のなかに住む小人になった気分!」なんていう会話が生まれるかもしれませんね。


地球の大気のダンスをリアルタイムに鑑賞

2015年10月05日 | 新聞連載「想像から切り開く科学技術の世界
先月の時事通信の私のコラムには、気象学の茂木耕作さん(海洋研究開発機構)にご登場いただきました。

天気予報の精度が向上していることを感じる昨今ですが、それでもまだ長期予報は難しいといいます。とくに1ヶ月予報の精度に影響を与えそうなのが、MJOという、インド洋からインドネシアあたりで起きている不思議な現象だというお話でした。

当たり前ですが、気象は日本周辺だけで起きているのではなく、地球全体がつながっています。そんなことを実感させてくれ、最近私が暇なときにうっとり見てしまうWebサイトがあります。

earth:: global map of wind, weather, and ocean conditions(http://earth.nullschool.net/jp/

実際の気象観測情報をもとに、風や温度をまるごと地球の地図上に表現してくれます。3時間ごとの更新です。拡大縮小、回転も思いのまま。
風を眺めているだけで高気圧や低気圧の場所も分かります。風が陸地の影響を想像以上に受けていることも分かります。
なんで面白いのでしょう・・・、あ、そうか。目に見えない大気のダンスを鑑賞させてくれるのですね。
(小さな渦も、大きな渦も、右巻きも左巻きも、すべて理由があってつながりながら変化していく美しさ)

未来を拓くイマジネーション

2015年07月09日 | 新聞連載「想像から切り開く科学技術の世界
4月から、時事通信社の子ども向けコラムで月1回、「想像から切り開く科学技術の世界」と題してコラムを執筆しています。

これまで、自然環境や生物のつながりなどのテーマで書いてきました。その第3弾として今年4月からは、自然も技術も大きく含み、未来に焦点を合わせてみようというもの。
もちろん、将来を正確に見通すことなどできないですが、将来の社会に大きなインパクトを与えそうな技術を研究している人たちを取材して、できるだけワクワクする世界を想像してみようとしています。私のつたないアイデアでも、世の中の人のもっと優れたアイデアを触発するもの(とくに子どもたち)になればいい、という願いをこめて書いています。

先月の人工知能に引き続き、本日配信したのが「コミュニケーションロボット」。ソフトバンクのペッパーが発売されたばかりということもありますので、開発段階からの所有者のひとりでロボットの未来について研究もされている村沢義久さん(立命館大学客員教授)のオフィスを訪ねました。
ひとしきり、未来のコミュニケーションロボットのドギマギする展開の話(村沢さんの大胆予測により)で盛り上がったあと、ペッパーと目が合ってドキっとしました。

すでに、私の中でロボットに対して人格に似た何かを感じるものが芽生えている・・・そう感じた瞬間でした。