![100万回生きたねこ (佐野洋子の絵本 (1))](http://ec2.images-amazon.com/images/I/51X6CWQKYHL._SL500_AA300_.jpg)
あるところに、みつるという男の子がいました。みつるには、お父さんもお母さんもいませんでした。
あるとき、みつるは自分で命を絶っても100回までは生きることが出来る命を神様からもらいました。
100回生きるということは、100回死ねるのです。
生きることが嫌になったら、死んで、また生きることが出来るのです。
みつるだけ、どうして100回分の命をもらったかと言うと、みつるは、まっすぐでいい子なのですが、すぐに死にたくなってしまう癖があるので、神様は心配していました。これは、みつるだけへの特別のハカライでした。
一度目、みつるは、学校で虐められ仲間外れになって、学校に通うことが苦しくて死にました。
二度目、みつるは、頭が良くて優秀な成績だったので、大学に入学できると思っていたのに、試験の結果が悪くて、落ちてしまって格好悪いよと悲しくて死にました。
三度目、みつるは、初めて好きになった女性と結婚の約束をしていたけれど、振られてしまって、彼女がいないと、僕の人生は意味がないと言って死にました。
四度目は、ある時、みつるは社長さんでお金がいっぱいありました。でも、お仕事が忙しくなって仕事が楽しくなくなりました。辞めたいけど辞められないし、会社のお友達との仲が難しくなったりで仕事をしなくてよくなったらラクになるかも…と思って死にました。
五度目、みつるは普通のサラリーマンでした。ある時、みつるは友達に頼まれて、お金を貸しました。友達はお金を返さなくなり、みつるはお金を全部取られてしまいました。そのお金で、お店を開こうと思っていましたが、夢が叶わなくなるし、騙されたことが悲しくて死んでしまいました。
一人が寂しくてつらくて、みつるは死ぬことにしました。
頑張って美容師さんになって、お店を開いたのですが、ある日、みつるがカットしたお客さんが髪型が気に入らないと言って、何度も悪口を言いに来て、下手くそだと噂されてお客さんが来なくなりました。やがてお金もなくなり、みつるは悔しく悲しくなり、死ぬことに決めました。。
そして、元々は真面目なみつるは、自分の演技に自信がなくなって来ました。
演技が下手だから仕事がないのだと思いました。それからみつるは自分の動作、声、全てが硬くなり、いつもの演技ができなくなっていきました。タイミングが悪く、お仕事がその月は少なくなり、もう俳優としてはダメだと思い、死んでしまいました。
みつるは自分の自由なときに、何度も死ねました。命を自由にできると思いました。そう、100回までなら、やり直せるからでした。
何度死んでも、神様によって、生き返りました。
そして、みつるは何度も生き返る中で、いつになったら本当に死ねることができるのか不安になりました。
なんども生きると死ぬを繰り返して、もう、3000年以上経ちました。
みつるだけが一人でずっと生きているように思えて寂しくなりました。
みつるは、とうとう生きることに疲れてしまって、本当に死んだら、悲しくつらく苦しむことのない、安らげる居心地の良い世界に行けるに違いない。そう思いました。
そして、100回目になり死にました。でも、また生き返りました。
何度、同じ方法で死んでも、みつるはすぐに生き返りました。
見かねて、神様がみつるのところに来ました。
みつるは言いました。
神様は悲しそうに言いました。
100回までと言ったのは、自分で死ぬことがどんなに虚しいか、あなたが死ぬことをやめて、生きるしかないことを知ってほしかったからです。
どんなときも、どんな人生でも、穏やかで豊かな気持ちで過ごせるように。
小さな幸せも心からよろこび、大きな喜びに育てるまでの十分な時間だと思ったからです。
あなたには言っていませんでしたが、命の中には、私の心をわけてあります。
あなたが死ぬたびに、私の心は悲しみ、痛みました。
生きていると苦しいこともありましたが、もう少し生きていたら、やがて解かれる苦しみでした。
一時的な苦しみから逃れるために、あなたは100回以上も死んでいたのですよ。
私は生きたかったけれど、あなたの意志によって100回も死ぬことになりました。
私は死ぬ瞬間、あなたと一緒にいました。
自分で死ぬとき、あなたは自分のことしか考えていませんでした。
あなたが中心の世界で、私はあなたによって死ぬしかない道を選ぶことになりました。
自分さえ死ねばそれでいいと思う気持ちは、とても勝手なのです。
生きたい私の心を無視して、死んで行ったのです。
とても、悲しかったです。あなたが、もっと生きたいと思ってくれたら、私もあなたに心をわけてよかったと思えます。
私もあなたの心の中で生きることができて、とてもうれしいでしょう。
あなたのその命を大切に生きて、生まれて来てよかった。
逃げないで生きることに前を向いてください。
私と一緒に生きてください。
あなたが挫けそうなとき、私がいることを思い出してください。
あなたはひとりではありません。
私が心にいることを信じてください。」
みつるは、今まで命を使い捨てのようにして、死なせてしまったことを反省しました。
「どんなに苦しくても死ねないんだ。」「生きるしかない」と、やっとわかったのです。
「悔いのないよう、今度こそ生きて、神様に喜んでもらおう。
僕に命をあげて、よかったと思ってもらおう。僕が生きたことで、神様が喜んでくれるなら嬉しい。
みつるはそう思って、また、やり直すことにしました。
そして、目を覚ますと みつるはベット中でした。
みつるは、自分で死のうとしたけれど、助かってずっと病院のベットで眠っていたのでした。
長い長い夢を観ていたのです。
「気がつきましたか?」
そう、笑顔で声をかけたのは、夢の中で会った神様にそっくりな女性でした。
彼女はみつるの部屋の看護士さんでした。
おわり
生きるしか道がないとわかったら、前を進むしかないですね。
くじけそうな時もありますが、進むのなら自分の意志で進みたいですね。
読んでいただいてありがとうございます。