僕は一人電車に乗り、向かっていた。
少し前の事。 3月なのにこの静岡に雪が舞う日、仕事を休み目的の場所へと向かう。
どうしても行きたい場所だ。
電車待つホームは強い風が吹き、雪が飛んでくる。春が見えた矢先なのに鼻と耳がキンとする程寒い。
はやく電車の中に逃げ込みたい気分だ。
だが、当の電車といえば雪・強風のためかなりの遅れが出ている・・・
何とも迷惑な風だろう。
数十分の遅れで電車に乗り込む事ができた。こんな事なら真冬着で出てくれば良かったと少しの後悔。いや、結構な後悔かな。
予定よりもかなり遅れて静岡に到着。
さあ、目的地までは徒歩10分くらいかな… よく歩いたコースを久しぶりに歩き出す。
歩き始めて少しすると、こころなしか足早な自分に含み笑い。
次第にこころなしなどではなく、完全に早足になっていく。
思い人が待つ場所へと向かっている訳ではないのだけどね。 まぁ、ソレに近いモノとでもいうのなか?
さすがの早足で半分位の時間で目的地へ到着。
ドキドキというのでもなく、緊張というのでもなく、ちょっと表現しにくい想いがジワリジワリとにじみ出てくる。
初めて見る階段を初めて登っていく。その先に初めてだけど、久しぶりともいっていい扉が待っていた。
そして僕はひっそりと笑顔を噛み殺しつつ「カチャ」と扉の向こうへと入っていく・・・
特等席からのあの窓の景色はもう観られないけど、それでも「もう一度の奇跡」に心から感謝とありがとうでいっぱです。
ダークグレーの空の隙間から射した細くて柔らかな光は春の訪れを感じるには十分すぎるほど暖かくて優しいものでした。