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夏目漱石「門」

2010年02月16日 | な行の作家

宗助と御米とは仲の好い夫婦に違なかった
一所になってから今日まで六年程の長い月日をまだ半日も気不味く暮らした事はなかった
言逆に顔を赤らめ合った試は猶なかった
二人は呉服屋の反物を買って着た
米屋から米を取って食った
けれどもその他には一般の社会に待つ所の極めて少ない人間であった
彼等は日常の必需品を供給する以上の意味に於て社会の存在を殆ど認めていなかった
彼等に取って絶対に必要なものは御互だけで、その御互だけが彼等にはまた充分であった
彼等は山の中にいる心を抱いて都会に住んでいた


友人の安井の妻であった御米と結ばれた宗助
人生の負い目を背負って暮らす二人の日々を淡々と描いています
学生時代は前向きに闊達に生きていた宗助が御米を選んだがため地位も名誉も無い貧しい暮らしを送ることになる
その現実を受け容れ互いのことだけを見つめて暮らす毎日
ある日、友人であった安井の消息に心を乱し救いを求めて禅寺の門をくぐるのだが何の悟りも得られぬまま家に戻る
再び静かな日々が始まるのか、安井との邂逅が待っているのか
物語はどちらも想像させる終わり方をします

倦怠期のような、100%の信頼の上にある安泰な生活のような
夫婦の暮らしというものは現代でも変わらないのだな、と思います

つまらない夫婦の物語と思われる方もいらっしゃると思いますがそれはさておき
漱石の教養に満ちた文章を充分に味わってください


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