訳・屋代通子
みすず書房
2012年3月 第1刷発行
2013年1月 第7刷発行
379頁
アマゾン奥地に暮らす少数民族、ピダハン
400人を割るという消滅危機にある彼らの言語とユニークな認知世界を30年もの長い時間をかけ調べ上げた著者の奮闘ぶりをユーモアも交えて描き出す科学ノンフィクションです
驚くことに言語のみならず、ピダハンの文化には左右の概念、数の概念、色の名前、神も存在しません
彼らの文化が何百年にもわたって文明の影響に抵抗できた理由、彼らの堅固な哲学とは…?
始め、著者は学者だと思っていたのですが、早いうちに福音派の献身的な伝道師であることが判り、複雑な気持ちになりました
著者は、もともとは聖書をピダハン語に翻訳して教えを伝えられるようにすべくピダハン語を研究するために村に赴いています
奥地にまで信仰を広げようとする意思の強さには頭が下がりますが、来られた側からすれば大きなお世話では?
ピダハン語を難しくしている言語上の特性、ピダハン文化のユニークさを理解することで聖書の翻訳にまでこぎつけているので、言語学者として優れた資質を持っていたようです
ただ、皮肉にも、というか当然の帰結か、ピダハン語とその文化への理解が深まるにつれ著者の信仰は薄れていき、ついにはキリスト教とも家族とも訣別してしまいます
複雑ですね
世界に数多ある文化は、誰かが優劣をつけられるものではありません
決して西洋文化が一番優れているのではありません
ピダハンの人々の暮らし、生き方、考え方こそが人間が本来望んだ不安のない洗練された文化なのかもしれません
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