2012年 日本
原作 川上健一「渾身」
原作に感動し、映画公開の日を楽しみに待っていました
舞台は島根県の隠岐諸島
親が決めた縁組を破談し、駆け落ち同然で島を出た坂本英明(青柳翔)と麻里(中村麻美)
英明の故郷への思いは深く、厳しい生活が待っていることを覚悟のうえで二人は島へ戻ってきた
親からは勘当され島の人々の冷たい視線に耐えながら漁師やアルバイトで暮らす二人を昔と変わらず優しく見守る麻里の幼馴染の多美子(伊藤歩)
やがて二人には可愛らしい娘・琴世(井上華月)が生れ、島に古くから伝わる古典相撲を始めた英明に周囲の人々の心にも少しずつ変化が生まれてきた
そんな矢先、麻里が病魔に冒され亡くなってしまう
頼る身内のない英明父娘の世話をしていた多美子は次第に英明に惹かれていくのだが、麻里への遠慮から恋心を抑えており、それは英明も同じだった
そんな二人を優しく見守る周囲の人々、多美子を慕う琴世
麻里が亡くなって3年が過ぎ、互いの気持ちを意識した二人はようやく結婚する
島に暮らす誰もが大切にしている水若酢神社の20年に一度の遷宮相撲大会で最高位の正三役大関に選ばれた英明は地区の名誉と家族への想いを胸に土俵にあがる
結びの一番、対戦する相手は強すぎるあまり対戦相手がおらず『取らずの大関』といわれた田中敏三郎(隆大介)の息子・田中敏夫(粟野史浩)だった
息子の取組を見つめる敏三郎、最初は勝敗に拘っている様子でしたが、渾身の想いでぶつかりあう二人に徐々に心持が変わっていく様子がみられました
勿論勝ちは欲しい、しかしそれよりも「自分もこういう取組がしたかった、息子よ、英明よ、踏ん張れ」と思ったのでしょう
英明の両親、多美子の両親、麻里の両親、琴世と一緒に、麻里の写真を胸に取組を見守る多美子
力が入ります
取り組んだ力士同士は義兄弟となり、そのつき合いは実の兄弟と同様生涯続くことになるのだそうです
伊藤歩さんはごく自然体で演じてらっしゃいました
青柳翔さんは演技はもうひとつでしたが、そこが逆に不器用だけれど一生懸命な英明にマッチしていたと思います
井上華月ちゃんが多美子に「帰らないで、一緒に寝て」とワンワン泣くシーンには涙を誘われました
子役にはかないませんね
相撲の取組シーンがもっとあってもいいかな、と思いましたが、伝統を守りながら暮らす人々の心の温かさ、絆の強さがよく描かれていたと思います
原作への思い入れから贔屓目で見ているかもしれませんが、自分には素敵な映画でした
結びの取組で大量に撒かれた塩
出演されていた方々、後が大変だったでしょうね~
隠岐諸島の自然風景が美しく撮られており、隠岐諸島出身の現役力士・隠岐の海さんが特別出演されています
鑑賞の翌日、島根の企業関係の方からチケットを頂きましたのでもう一度観に行こうかと思っています
観た事のあるロケーションもありましたが、やはりこの映像美は、
この土地を愛し、知り尽くしているから撮れた、というような、
全編を通じて感じました。いい作品でしたよね
多美子が、島に残りたいということで付き合っていた人と別れた、というところ。
英明と同様、島への想いが強いのですね。
隠岐諸島、行ってみたいと思いました。