2008年 イギリス・ドイツ
原題 GOOD
1930年代のドイツ
ベルリンの大学で文学を教えるジョン・ハルダー(ヴィゴ・モーテンセン)は善き人であろうと心がけて生きる平凡な男
痴呆が始まりかけた母を介護する善き息子であり、妻の代わりに家事をする善き家庭人であり、プルーストの講義に情熱を傾ける善き教師であり、ユダヤ人精神分析医モーリスの善き友人であった
ごく平凡に暮らしていたジョンの生き方を一変させる出来事が起こる
過去に書いた小説がヒトラー総統に気に入られたことからナチスに入党せざるをえなくなってしまったのだ
入党しなければ職を失い、家族を養えなくなる
しかし、入党することは友人モーリスを裏切る行為でもある
やがて反ユダヤの動きが活発化、SSの幹部に出世していたジョンは国外脱出を願うモーリスを手助けしようとするのだが…
母の自殺未遂と死
妻・ヘレンとの別居
元教え子・アンとの再婚
モーリスのその後
歴史に名前が残るようなことをしたわけでもない平凡なひとりの人間が世の流れの中で何を考え何をしたのか
ヴィゴ・モーテンセンが抑えた演技でジョンの幸せや苦悩、葛藤を見事に表現しています
アーリア人として最高のブロンド、碧眼を持つアンが、まるでナチスドイツの象徴であるかのようにジョンを出世に導き、やがて悲しみに突き落とす行動をします
映画の序盤では妻のヘレンがジョンを苦しめており、アンが彼の救いとなるかのようでしたが、実はそうではなかったのですね
ナチス社会で生き残るにはアンの行動は至極当たり前のことだったのですが、ジョンにとってはこれ以上の罪はなかったということです
ここは衝撃的でした
度々妄想で音楽が聞こえていたジョン
ラスト、ユダヤ人収容所で聞こえてきた音楽を探す長回しは映画を締めくくる最高の演出だったと思います
妄想ではなく「現実」だった音楽
ナチスの制服に身を包んだ彼は、もう「善き人」ではなくなったのでしょうか
深い感動の残る映画でした
残念なことが、ひとつだけ
全編英語でしたが、この映画はドイツ語で観たかったです
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