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長野まゆみ「デカルコマニア」

2011年10月17日 | な行の作家

 

新潮社
2011年5月発行
280頁


1901年から2210年
代々続く資産家、ドラモンテ家の物語です

ただ時間を追って進む物語では面白みに欠けるのでしょうが
23世紀に開発された『デカルコ』というタイムマシンの存在が物語を俄然壮大なものにしています
アモル、ソラ、ロマン、アルク、レモン
様々な名前で登場する少年たち
この子とこの子は同一人物かしら
この子はあの時代のあの子かしら
頭が混乱して、途中で家系図と人間関係を書き出したほうが良いかしら、と思いつつ先を読みたくて突っ走りました

2/3くらいまでは、各時代のそれぞれの独立した物語りの様で、これでどうなっていくのか心配でしたが
終盤に一気に謎が解き明かされすっきりします
また、各時代に登場する占い師の予言が重要なキーワードとなっており、読者に予測と休息を与えてくれます
最後に分る彼女の真の姿
なるほど、それならあの予言も納得、です

また、物語の主な舞台であるシトラスカ湾、バルビラス半島、ポルトラノという場所は20世紀には半島の先端だったのが地盤沈下と海面上昇により23世紀には離れ小島になっている、とか、紫外線に強い野菜が開発された、などという描写があり現在の人間の経済活動への警鐘がさりげなく語られています


長野さんは以前読んだ「箪笥の中」がもうひとつだったので避けてきましたが、これを機会に少しずつ読んでいこうと思います

 


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