童謡詩人、金子みすゞの作品には、
はっとするものが多い。「大漁」もその一つだろう。
朝焼小焼だ/大漁だ/ 大羽鰮(おおばいわし)の/大漁だ。/
浜は祭りの/ようだけど/海のなかでは/何万の/鰮のとむらい/
するだろう。
浜辺の人間たちは大漁を喜んで祭りのごとく騒いでいる。
けれども、彼女は まなざしを海の中に向けて、
弱く、小さく、虐げられた者たちに思いをはせるのである。
中部空港に愛知万博。
元気な土地と全国から注目される名古屋の周辺だ。
みすゞの詩のように「大漁だ」と多くが繁栄をおう歌する
印象ではある。
けれど、その奥底では不景気やリストラで喘(あえ)ぐ
人たちがいて、つらい悲劇が起きている。
季節も世間も春爛漫とて、追いつめられた弱い立場の人が
いることを忘れてはならないのだろう。