6/22 中村浩子 And then 第３９話
益田は弁護士を呼んでくれと言った。
それから言った。
食事が悪いから頭が疲れた。
益田は食事にあまり手をつけなかった。
益田はこんなもの食えるか と食事を前に思っていた。
刑事の前でまず待遇を要求しているのか？と刑事たちは思った。
あんたね、なんでここにいるかわかってんの？
あんたは世にも稀な殺人を犯したんだ。
世にも稀な殺人、益田はつぶやくように繰り返した。
それから思った。
殺すのが目的じゃなかった。
それから子宮を引っ張り出した感触が思い出された。
あいつの意識がはっきりしているうちに子宮を見せてやればよかった。
益田は血が吹き出し流れるのを見ていた。
これがお前のいやらしさの根源の子宮だって・・・・
あいつどういう顔をしただろう？
でも死ぬのはわかっていた。
医者として普通はやらないけど・・・・
それから突然言った。
幸子は俺の頭をつかんで・・・
幸子？ 刑事たちはすぐもう一人やったのかと思った。
幸子がなにをした？
刑事が促した。
益田は完全に浩子を忘れ、幸子が自分にしたことを言いそうになった。
しかし、刑事に幸子がどうしたと言われたとき益田にブレーキがかかった。
益田は再び沈黙した。
それから刑事たちは別な角度で調べるために
これまで益田をチェックしていなかったところ、漏れたところを見直すことにした。
学生のころの益田はあまり記憶されていなかった。
仲のよい友達をこれまでのところいなかった。
幸子の名前で同級生に聞きまわった。
同級生の一人が幸子？ 井上幸子だ。 あいつ井上と仲よかった。
その井上幸子さんは今？
結婚したけど離婚して、それからどうなったか知らない。
刑事たちは井上の実家を訪ねた。
井上幸子の母は健在だった。
覚えていますよ、益田さんね。
医学生で幸子とお付き合いしていて、私たちも医者の卵として
お付き合いを認めていました。
でも、あの二人は喧嘩したらしく、ここに泊まった翌日から
あの人のことは幸子が言わなくなったんです。
幸子さんは今？
吉田さんという方と結婚しています。
刑事たちは一応住所を聞いてます吉田家を調べてみた。
結婚している幸子に昔の男の話を聞きに行くのも問題を引き起こす
可能性がある。
でも聞かないわけにはいかなかった。
刑事たちはチャンスを伺った。
数日後、幸子が外出したときにチェンスを見つけた。
幸子は益田のことをきかれると、すぐ理解したらしい。
どうして、益田さんまだ私のことを？
お友達？ 恋人だったとか？
そう言ったんですか、彼？
いえ、幸子のやつ俺の頭をつかんでって言ったんです。
幸子の顔色が白っぽくなった。
それから急に良家のマダムだったはずの幸子が変わった。
彼、無邪気というか、まだ子供でショックを受けただけよ。
オーラルをちょっとやってみただけ。
そして、あっけにとられている刑事たちに背をむけると
店内に入ってしまった。
だいたいのことは想像がついた。
浩子もそう強いたのか？
そこは確認しようがなかった。
精神鑑定医、内田洋に幸子の話をしてみた。
人妻の浩子が益田にそういうアプローチは考えにくいが、
幸子が原因で益田が女、誰でも女を毛嫌いする可能性は？
内田は益田に会うことにした。
