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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ワイルド・ワイルド・ウェスト(V)

2008-10-02 08:59:44 | 映画(わ)
評価点:42点/1999年/アメリカ

監督:バリー・ソネンフェルド

1999年のアメリカのゴールデン・ラズベリー賞、作品賞受賞の「最低」映画。

舞台は西部開拓時代。
大虐殺の首謀者とされるマグラス将軍を追うウエスト(ウィル・スミス)は、マグラスを発見した場所で、政府の捜査官ゴードン(ケビン・クライン)に出会う。
ゴードンとのやりとりに手惑いマグラスを取り逃がしたウエストは、大統領に呼びつけられ、二人はコンビを組むことに。
二人は敵のパーティに潜入、敵の場所を突き止めるが、追っていたマグラスは黒幕のラブレス博士(ケネス・ブラナー)に殺されたあとだった。

日本のCMでは、派手なCGがウリのように紹介されていたので、知っている人は多いだろう。
しかし、この作品はアメリカでもっとも不名誉な映画賞、ラズベリー賞の作品賞に輝いた、ある意味稀有な映画である。
手を出そうかと迷っていたが、いい機会なので見ることにした。

▼以下はネタバレあり▼

話に聞いているほど悪くはない印象だった。
いや、決して完成度の高い映画だとか、面白い映画だとかいうつもりはない。
しかし、「人に嫌悪感をあたえるか」という観点から見れば、それほど劣悪な作品ではないように思う。
人間誰しも「やってしまいたい」時があるものである。
そういう暖かい目でみれば、まだ「観られる」映画だと思う。

全体の展開やモティーフは、西部劇にSF要素を加味した、007風の刑事ものだと言えるだろう。
まったくタイプの違う二人が、犯人逮捕のためにコンビを組み、そして犯人を追う、という展開は、もう飽きたと言えるほどの典型である。
この映画は、その展開に、007のようなハイテクを用いて、舞台を西部開拓時代にしたのである。

007風ののりなので、ヤリスギ・ハイテク・マシーンがバンバン登場する。
靴からナイフは常識で、ビリヤード台がくるくる回り、人造人間が登場し、西部なのに戦車が駆ける。
これに笑える人は幸せだが、おそらく、笑えないだろう。
失笑するくらいが限度ではないか。なぜなら、全てが中途半端だからだ。
やるならもっと、徹底的に「近代化」した兵器がみたかった。
遊び心が少々足りないように思う。
「それはどんな状況で使えばいいの?」的な、意外性溢れる武器がなかったのが残念である。

この映画をジャンルで言えば、アクション・アドヴェンチャーになるようだ。
その次にくる単語は、「コメディ」だろう。
しかし、この映画の失敗は、このコメディ性にある。
アメリカで最低映画賞をとるようなコメディが、日本で受けることはまずない。
なぜなら、すべて日本の悪しき習慣である、オヤジギャグの発想の笑いだからである。
良い言い方をすれば、「韻を踏んでいる」ということになるが、いかんせん、字幕であれ吹き替えであれ、日本語に置き換えると無理が出る。
しかもアメリカでウケなかった笑い。日本で通用するはずもない。
字幕の上に、傍点でギャグであることを示してくれているが、笑えない。
「あ、そこギャグなんだ」程度である。
典型的な展開で、笑えないギャグとくれば、観客は失笑するしかない。

しかし、アクション・アドヴェンチャーとして楽しむ、または、CGの美しさに感動できる映画ならまだ救いはあった。
この映画はその二つともでコケた感があるのが、つらいところだ。
話の展開が、典型的であるのは先にも言ったが、この映画は、その典型以上に、流れがわるい。
いかんせん、主人公たちが敵に捕まりすぎなのである。
大方三回は敵に捕らえられる。
その三回とも、主人公たちを敵は殺せないのである。
もちろん、主人公たちがピンチに陥る展開は、絶対に必要である。
しかし、三回も敵につかまったにもかかわらず、脱出できてしまうのでは、ピンチが逆に裏目に出てしまう。
極端な言い方をすれば、「スティーブン・セガール」である。

そして人二人殺せない敵は、敵として失格ということになってしまう。
博士でありながら、あまりにバカである。
それではアクション・アドヴェンチャーとしてもつらいものがある。

美しい女性がたくさん登場するわりに、誰がヒロインか解らないという007風にしては致命的な欠陥も目立つ。
最初にちちくりあっていた黒人の女性はどこにいったのだ?
っていうか家族殺されたから復讐してたのに、そんなことしていていいの?

映画館でみればどうかはわからないが、CG技術も荒すぎる。
どうみても、あの列車は模型である。
「スターシップ・トゥルーパーズ」のほうが、よっぽど綺麗だ。
哀愁漂う巨大タランチュラも、「スター・ウォーズ」並と言える。

それでも、僕はそれほど「つらく」なかった。
おそらく全体的に軽いノリだったので、ある程度、許せてしまったのだろう。
よくもわるくも「なにも残らない」映画だとおもう。

(2004/2/26執筆)

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