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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

逆境ナイン

2009-04-13 22:04:42 | 映画(か)
評価点:87点/2005年/日本

監督:羽住英一郎

っていうか、野球してないし、ナインもあまりそろわない……。

全力学園、野球部は、万年一回戦敗退の弱小チームだった。
そんな状態を憂いた全力学園学園長(藤岡弘、)は、キャプテンの不屈闘志(玉山)に廃部を告げる。
逆境にたたされた不屈は、学園長に甲子園に行くと約束し、できなければ廃部にしてもかまわないと言ってしまう。
その手始めとして甲子園の優勝候補である日の出商業に練習試合を申し込み、勝つことまで約束してしまう。
おしりに火がついたナインは、いつもの三倍練習するが、それがたたって部員は次々とリタイヤしてしまう。
部員がまともに練習できない日が続き、いよいよ練習試合の当日がきてしまう。

一部の漫画ファンに絶賛された「逆境ナイン」の映画化。
かつてないほどの力の入れ方で、CGなどの最新技術を駆使して作られた、B級映画である。
原作を知らない人でも十分楽しめるほど、お馬鹿な映画になっている。

僕個人で言えば、「少林サッカー」なんて足下にも及ばない。
やはり日本人向けのコメディは、日本人にしか作れないだろうとさえ思える。
 
▼以下はネタバレあり▼

かつて日本でも話題になった「少林サッカー」。
しかし、僕はあまり乗れなかった。
延々と続く同じようなテンポ。
同じノリのギャグ。
おなかいっぱいになるCG。
理不尽ともいえるほどの自虐的なネタ。

日本人でありながら、なぜあんな舶来ものがこれほどまで売れるのか、僕は不思議だった。
だが、日本にはもっとお馬鹿な映画人がいた。

「逆境ナイン」、それがこの映画である。

言うまでもなく、この映画はコメディであり、そしてB級映画である。

テーマを問うことさえ難しいが、非常に逆境に置かれた主人公たちが、いかにしてその逆境をはねのけるか、というのがテーマだろうか。

しかし、問題はその逆境なるものの大きさである。
万年一回戦敗退の弱小チームが、いきなり甲子園出場常連校である高校に、練習試合を無理に挑む、その物語の発端そのものが「逆境」というより、「無茶」なのだ。
だがそれだけで驚いていたのでは、この映画では心臓発作に見舞われる。
勝つために、いつもの三倍練習する(三倍ではとうてい無理だと思うが)。
その無茶がたたって、部員のほとんどが試合に出られないという、これまた逆境以前の問題に陥る。

このようにして、おおよそあり得ないほどの「逆境」に追いつめられ続けるのである。

だが、このあり得ない状況を楽しませるための工夫が随所に見られる。
例えば、キャラクターの色分け。
時間の都合上、九人を平等に描くことができないため、キャプテンの不屈闘志、マネージャーの月田、学園長、野球素人の監督、相手バッターのスナイパー東郷など、主要となるキャラクターの色分けと強烈なインパクトにより、感情移入しやすく、そして彼らの設定がわかりやすいため、進もうとしているストーリーに安定感が出る。
あり得ないストーリーだが、彼らならそれもあり得るかも、と思わせるようなキャラクターになっているのだ。
これにより観客を必要以上に離すことなく、物語についていかせることが可能になっている。

そして、彼らに好感が持てるのは、あまりに馬鹿だからだ。
甲子園に行く = 食い倒れる
甲子園に行く = モテる男になる
など、非常にわかりやすく、しかもお馬鹿な一面を見せてくれるので、嫌悪感ではなく、好感さえ持つことができる。
そしてあり得ない状況だけではなく、あまりに馬鹿な彼らによっても、笑いを誘うことに成功している。

またこの映画で大きな役割を果たしているのは、CGによる演出だ。
「スターウォーズ」などの超大作には当然劣るが、本作では丁寧に作り込まれているため、違和感がない。
「そんなに過剰にしなくてもいいじゃん」というところを、敢えて丁寧に過剰に描き出すことによって、笑いが生まれる。
そして何より制作陣の心意気を感じ、馬鹿な映画に、ここまでやってくれた彼らに感謝したくなる。

CGの出来がこの映画を左右しているとはとても思わない。
だが、このCGの力の入れように、この映画に対する強い意気込みを感じることができる。

しかし、出来のいいCGも頻繁に見せられると飽きてしまう。
その失敗は「少林サッカー」で充分である。
同じ笑いを何度もCGに頼ってしまったため、すぐに飽きてがきてしまい、ただ苦痛な連続にしかならない。
だが、この映画はそうではない。
要所要所で丁寧なCGによる演出でみせることによって、物語にメリハリが生まれ、映画的な「見せ場」となっている。

とくに感心したのは、「魂が乗り移ったボール」である。
あれほどのいいネタがあれば、一本の映画の中で何度も使いたくなるところである。
だが、そこをぐっとこらえてラストのただ一度だけ使ったところが、この映画の良さを象徴しているのではないだろうか。

「逆境ナイン」というタイトルを付けておきながら、ほとんど野球するシーンがなく、野球以外のところで逆境になっているのは、いかがなものか。
また、「ナイン」がほとんどそろうシーンがないのも気になる。

だが、これほどまでに馬鹿なキャラクターを必死で演じた役者もすごいし、こんな訳のわからない映画にGOサインを出したプロデューサーもすごい。
日本にもまだ、こんな骨太(?)な映画を作ろうとする人間がいることが、何より嬉しい。

それにしても月田君に、不屈じゃないけど、惚れそうだ。
役者・堀北真希というより月田君にね。

(2005/7/10執筆)

思えば、堀北真希は当時それほど有名な役者ではなかった。
それが今では、ひっぱりだこの役者になってしまった。
もう少し、良い映画やドラマに出してあげれば、きっともっと輝くだろうに。
なんかもったいないね。

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