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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

Over The L’Arc-en-Ciel

2014-12-23 09:11:12 | 映画(あ)
評価点:81点/2014年/日本/100分

監督:レイ・ヨシモト

L'Arc-en-Cielとは何なのか。

アメリカ(マディソン・スクエア・ガーデン)に挑戦することを一つのテーマとして掲げた、2012年のワールドツアーの様子を、L'Arc-en-Cielの音楽を交えながら伝える。
なぜアジアやヨーロッパにも多くのファンがいるのか。
その意義と理由を、ファンや4人のメンバーのインタビューを通して伝えていく。

2012年に行われた、L'Arc-en-Cielのワールドツアーの様子を捉えた、ドキュメンタリー映画である。
8日間だけという限定公開で、ほとんどファンのための劇場公開となった。
ファン以外はそういう映画が公開されていることを知らないだろうし、知っていても興味も無いだろう。
誰かに無理矢理誘われたりすることがないかぎり、ファン以外は見ない映画だろうと思う。

こういう映画を公開するあたりに、このワールド・ツアーがいかにお金が掛かってしまったかを暗に示している。
だが、しかたがない。
見にいかないわけにもいかないので、平日のレイトショーに仕事終わりに劇場に向かった。
小さめのシネコンの劇場は、ほとんど満員状態だった。
この批評をアップする頃には、すでに劇場公開は終了していることだろう。

▼以下はネタバレあり▼

私はL'Arc-en-Cielのライブコンサートに初めて行ったのは、2000年の前後だったと思う。
それ以来、大阪に来るならほぼどれかの日程のライブは見にいっている。
ファンクラブの先行予約を利用したり、当日券を並んで購入したり、もちろん、このワールドツアーのユニバーサル・スタジオの野外コンサートも行った。
しかし、最近は会報を見る時間も無く、ワールドツアーの情報もほとんど入手していない。
私の家族がちょこちょこ情報をくれるので、それで知っている程度だ。
雑誌の特集も以前ほどは目を通していない。
だから、一つ一つのシークエンスで、どのような状況で発せられたものなのか、正直ほとんど予備知識が無い。
見にいった多くの人が、そういう映画外の状況を把握しているものと思われるが、私にはその解説はできない。
たとえば、ラストで涙を浮かべながら歌う「bye-bye」の前に誰が亡くなったのか私は知らない。
(後で教えてもらったけれど)

もし、そういうものを期待されるのなら、ここからの内容には満足しないだろう。
私は、ある意味フラットな一ファンとして、この「映画」の批評を書こうと思う。

ドキュメンタリー映画についても私は明るくない。
(といっても、そもそも何も映画については専門的な知識は持ち合わせていないけれども)
昔「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を見て、「なんじゃこれ」と衝撃を受けて以来、ほとんど見ていない。
だから、ドキュメンタリー映画がどうあるべきなのかという点からもこの批評を書くことはできない。
純粋に、一本の映画としての批評を書こう。

ドキュメンタリーである以上、起こったすべての出来事を記録することはできない。
もしそれができたとしても、それを上映時間にあわせて圧縮することもできない。
だから、それをどのように切り取るか、という点が最大の焦点になり、またそれこそが監督の手腕であり、メッセージとなる。

はじめの香港公演から、最後のハワイまで時系列で彼らの姿を追っていく。
だが、単なる時間の配列でその様子を描いていくのではなく、きちんと分節している。
(1)L'Arc-en-Cielとはどんなバンドなのか
(2)世界のファンからみたL'Arc-en-Ciel
(3)お互いが続けられた四人の関係性とは
(4)L'Arc-en-Cielのメッセージ

タイトルは私が勝手につけたものだが、四つのパートに区切りながらインタビューを貼り合わせている。
だから見ている方はそれほど違和感なく、そして退屈せずに追うことができたはずだ。
物語としてわかりやすく切り取られている。

特に、最初と最後で物語のはじめと終わりで同じ場面を入れ込むことで、完結性ある映像となる。
このドキュメンタリーのテーマは、彼らは音楽で語るバンドだということだ。
ラストで四人の友人が死んだことが断片的に描かれる。
しかし、どんな友人で、なぜ死んだのかなど、ほとんど説明されない。
観客にも説明されない。
それが、彼らのスタイルだし、語る必要の無いことは語らない。
歌でそれを届けられたら良い。
そのことが判るラストだった。

観客は先にも述べたが、ほとんどファンだ。
だから、亡くなった人が誰なのか、当然知っていることだろう。
そういう意味では「語らないバンド」ではない。
しかし、この映画でそう切り取ることで、20年以上続いているバンドであるその意味をきちんと伝えられている。
もちろん、それは監督のメッセージである。
それをうまく「真実」であるかのように切り取っているのも監督の手腕によるところだ。
hydeが「いいんじゃない、全て撮ってしまえば。あとでいくらでも編集できるんだし」と言うカットを入れることで、これが彼らの全てを映し出しているように錯覚させる。
錯覚というのは言い過ぎかもしれないが、500時間を越えるテープを2時間弱に抑えたのだ。
やはりそれは、「意味を持たせた編集」と言わざるを得ない。

それでも、ファンの期待を裏切るような作品ではない。
なぜ私たちはL'Arc-en-Cielに魅了されるのか。
そのことを、海外のファンにもう一度教えてもらえる。
4人が紆余曲折を経てこのツアーに挑んでいることも伝わる。
もちろん、伝えることに対して妥協を許さないほどのプロフェッショナルであることも。

そういう意味ではこの映画は映画として、ドキュメンタリーとしての価値を十分に有する良い作品だと言えるだろう。

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