secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

K-19

2008-06-21 21:19:26 | 映画(か)
評価点:63点/2002年/アメリカ

監督:キャスリン・ビグロー

ソ連の原水をモティーフにしたサスペンスドラマ。

ボストリコフ(ハリソン・フォード)は偉大な親を持つロシア軍の大佐。
冷戦時代、アメリカの原子力潜水艦に対抗するため、ロシアは独自に最新鋭の技術を用い原子力潜水艦K-19を開発し、
ミサイルの発射テストを行うために北大西洋に向かった。
事前の訓練でミスを犯したポレーニン(リーアム・ニーソン)艦長は、副艦長に降格され、新しくボストリコフが、艦長として出向することになっていた。
若いクルーを執拗に訓練に駆り立てるボストリコフへの反感が、クルー全体に広がっていた頃、見事テストミサイルの訓練に成功した。
しかしその後原子炉の冷却管が破水、原潜は非常事態に陥る…。

▼以下はネタバレあり▼

ハリソン・フォード主演の潜水艦もの。
旧ソ連を舞台に繰り広げられる原潜を巡るドラマであるが、なぜか皆さん英語をペラペラ喋ってくれる。
「スターリングラード」もそうだったが、どうしても気になってしまった。
英語を喋っているのに、メモや文字はロシア語なんだもん。

それはおいておいて、いくつかある潜水艦ものの中では、中レヴェルの出来といえるだろう。
「クリムゾン・タイド」や「レッド・オクトーバーを追え」ほどのインパクトはなかった。
でも一見の価値ありだとは思える。

無茶な訓練を繰り返す主人公に対して、反感をもつ部下たちと、危険な状況に陥っていく潜水艦がうまくマッチしていた。
特に最大の見せ場であろう、放射能漏れの中、決死の覚悟で修理するクルーの姿は感動を呼ぶ。
主要登場人物が全員被爆してしまってもなお、ピンピンしている「トータル・フィアーズ」とはえらい違いだ。
あれくらいの放射能描写のリアルさを持たせれば、いやがおうでも物語は盛り上がる。
彼らの犠牲のおかげで国が助かったが、映画としても助かった。

なぜなら、それまでの展開があまりに、「クリムゾン~」を思い出させてしまうものだったからだ。
部下との対立が起こりそうな設定だったのは確かだが、部下が銃を密かに仕舞う場面を見た瞬間、かなりげんなりした。

それだけではない。
当時最高峰の軍事技術を持っていたソ連があれほどポンコツな潜水艦を
「最新鋭」としてテストさせていたとは、どうしても思えなかった。
確かに今は悲惨な状況であるらしいが、あの当時のアメリカとソ連がそれほど力関係を異にしていたとは思えない。
というのは、どうしてもアメリカ的な角度から、映画を作っているように先入観を持っているからだろう。
(理由は先ほど触れた英語にあるのだが)

放射能対策として何の防護服もなかったというのはリアルだと思うけれど、いくらなんでも、水漏れやトラブル続きの若い部隊などということは大げさに描いている気がする。

潜水艦の画が少し少なかった気がした。
特に出向したてのころにもっと壮大な画を見せておいて、孤独な航海であることを視的にみせておくべきだった。
そうすれば、悲壮感が出たと思う。
どこか小さい箱庭的な世界で、大きなことを言っているような印象を受けた。
氷を引き裂き浮上した画はよかったが、それももう少し引いた画で撮ってほしかった(CGであることは判っているが)。

世界観の狭さは、「敵がいない」という究極的な問題を抜きにしては語れない。
勝手に持ち出した核兵器に対して悶着するのだから、どうしても「自分勝手」な印象はぬぐえない。
だからこそ、それをカバーする演出を期待するのだが。。。
そのあたりは失敗に終わった。

最後の救出された場面。
「貨物船に救助させる」というようなことを言っていたはずなのに、「アメリカに助けを求める」とハリソン・フォードの言った次の画では、ソ連の潜水艦に助けてもらっていたのは何故なのか。
僕が見落としたのかもしれないが、解せなかった。

ソ連軍のことを物語にしているが、とてもアメリカンな思想だ。
別に嫌いじゃないが、徒に「事実に基づいている」というようなテロップを入れないでほしい。
基づいていようがいまいようが、作ったのはアメリカ。
到底信じられませんよ。

でも、そこそこ面白かった。
欲を言うなら「泣かして」ほしかった。

ちなみにリーアム・ニーソンは、「SWエピソード1」でジェダイの師匠、クワイ・ガン・ジンを演じていた人。
観ているときずっと気になっていたが、ようやく判った。
結構好きな役者の一人。

(2002/11/26執筆)

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