secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ブラッド・ワーク

2008-06-21 09:23:50 | 映画(は)
評価点:67点/2002年/アメリカ

監督・主演:クリント・イーストウッド

クリント・イーストウッド製作の最新作(当時)。

クリント・イーストウッド扮するFBI捜査官マッケーレブは連続殺人の事件を追っていた。
現場には彼を挑発するように毎回メッセージが書かれていた。
その意味を現場で思案しているとき、スニーカーに血のついた男が野次馬に混ざっていることに気がついたマッケーレブは、必死にその男を追う。
フェンスを超えていこうとする犯人の靴をつかんだ瞬間、マッケーレブは激しい動悸とともに倒れる。
心臓発作を起こした彼は、薄れ行く意識の中で犯人に銃を放った。
二年後、彼は病院にいた。
心臓の移植手術を受けた彼は、あの一件の後、第一線を退き、治療に専念していたのだ。その彼の元へ、「姉が殺された」という女性が訪れる。
その姉は、彼に心臓を提供した女性だった。

▼以下はネタバレあり▼

映画の雰囲気が抜群にうまい。
映画の色やカメラワークによってうまく描かれていた。
映画監督としても経験のあるイーストウッドだけある。
統一性のある世界はかなり魅力的だ。

設定もうまい。
自分に与えられた心臓にまつわる事件を解いていくという設定はそれだけで観たいと駆り立てる。
それが事件の犯人を追跡していたときに起こる、という展開も興味をそそる。

でも微妙だ。
その後の展開もおもしろいのだが、いかんせん落ちが弱い。
衝撃的な内容ではあるが、その描き方が悪い。
犯人はわからなくとも、少し先の見える落ちだと思う。
確かに伏線の張り方はうまい。
遺留品から無くなるイアリングやサングラス、そして犯人のせりふに「noone」という綴りを語らせること、
献血カードをさりげなく(いや、ばればれだけど)撮ることなど、非常に丁寧に作られている。
(その他だと、額に入った賞状をマッケーレブに眺めさせ、その直後に出世させた貸しがあると迫ったりする。
ほんの数秒のカットを入れることで、彼とウィンストン警部補との関係がわかるシーンなど。)

しかし、やはりインパクトに欠ける。
それは主人公が秘密にたどり着いたとき、全然動揺したり、怒りをあらわにしないからなのかもしれない。
イーストウッドなので仕方がないが、「そうだったのか!」という感情をもっと露にして欲しかった。
そうすれば、インパクトあるように写ったのかもしれない。

落ちがわかる時期も少し早い気がする。
「noone」という単語を敢えてアルファベットで表記したことと「1がない」という台詞に「no one」というルビを振ったため、主人公が気づく前に、観ているほうは気づく。
だから主人公と同時にその衝撃を味わうことができないのだ。
そのためちぐはぐな印象を受けてしまう。
字幕なので仕方がないが、それは残念だった。

細かいことだが、あの年になって女を抱くというのもついていけない。
抱くなとは言わない。けどあのシチュエーションで普通抱くか?
女も女で、隣に甥っ子がいるのに待ってましたかのように、男のところに行くというのは……。
その前のシーンで甥っ子が「この船にとまりたい」という意思を見せるが、それはむしろグラシエラのほうじゃないのかとおもってしまう。
アメリカ映画にはセックスは付き物だが、それでもこの映画には必要なかった気がする。

あと、二人の刑事への扱いも気になった。
ロス市警と州警察(どっちがどっちか忘れたが)との縄張り争いを演じるのだが、彼らのキャラクターが描ききれていない。
だからマッケーレブが無理やり、「目立ちたがり」的な存在にしようとしているように見えた。
「お前はただ目立ちたいだけだ!」
「俺が事件を解決して一面に出るのが嫌なんだ!」
それはあんたの思い込みじゃないんですか?
確かに縄張り争いはあるにせよ、一面に出たいというようなことは言ってなかった気がするんですけど。
むしろ「どうせ解決なんてしない事件さ、俺たちには他にやるべき仕事があるんだよ!
いちいちほじくり返さないでくれよ」という考えをもった刑事たちだと思った。
目立ちたがりというよりは面倒くさがりという印象を持った。
だから彼らを扱うマッケーレブを見ていると、なんとなく「ワンマン」さが露呈されるようで嫌だった。

それにしてもマッケーレブ元捜査官は、かなり無理な「捜査」をしていた。
職権乱用もいいところだ。
しかも辞めている人間が、あそこまで動けるものなのか。

ちなみに、犯人役のジェフ・ダニエルズは、「スピード」ではジャックの同僚役をしていた人。
その変貌振りには多少驚いた。

タイトル「ブラッド・ワーク」もうまい。
殺人犯も血文字を残し、主人公は心臓移植される。
その主人公は非常に特殊な血液型であり、事件の手がかりは献血。
血にまつわる話をうまくとりいれている。
もうすこし捻れば一級の映画になったのに。

(2002/12/17執筆)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« D&D 完全黙秘(V) | トップ | K-19 »

コメントを投稿

映画(は)」カテゴリの最新記事