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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ユヴァル・ノア・ハラリ「21Lessons」

2022-01-28 17:11:02 | 読書のススメ
★ネタバレなし★

ずっと読もうと思っていたが、ついに文庫本になったことを知って購入した。
文庫本でもずっしりと重い分量があり、時間がかかってしまった。

基本的には歴史学者としての立場から、人間社会がこれからどのように変わっていくかということを描いたものだ。
「2030年」を読んだ後に、こちらを読み始めたので、こちらはずいぶんと悲観的な未来を描いている、という印象を受けた。

すでに多くの人が指摘していることもあり、驚きは少ない。
けれども、しっかりと認識しておくべきなのは、私たちは短絡的にしかものを見ることができない、という絶対的な前提だろう。
どれだけ聡明な人でもこれだけ情報が溢れる時代にあって、どうしても視野狭窄になってしまう。
危険なのはその点に気づかないということだ。

職業はますます専門性が高まる一方で、「考えておくべき事」「知っておくべき事」がわんさかある。
自分の専門分野について語る人は、必ず「一人一人が関心を寄せるべきこと」「知らないでは済まされないこと」と警句を述べるけれども、これだけ知っておくべき事が増えてしまうと、もはや異常な好奇心の持ち主以外全てを網羅することなどできない。

自分は物を知らない、偏見と思い込みで生きているのだ、ということを常に頭に入れて生活しなければならないのだろう。
だからこそ、こういう本を読んで、「そういう視点もあるのか」と自己を相対化する作業が不可欠だ。

しかし、ここには「答え」はない。
絶対的な誰かが与えてくれる便利な解答を求めてこの本を読んでも腹が立つだけだろう。
危険は訴えていても、決してそれを回避する秘訣を与えてくれはしない。
彼が指摘していることがすべて正しいとも限らない。
一人の人が与えてくれる知識が、絶対的優位に立つような世界はもはや失われた。

ますます混迷するこの世界で、自己のことをいかに相対化して人間社会を抽象化するか。
そのためには、やはりハラリ以外の人の本も読まなければならないし、彼がこの本の中でも言うように、正しい情報を手に入れたければお金を払うしかない。

お金を払わずに流される情報に、正しい、公平な、正確な情報があるはずがない。
刺激的な本ではあるので、時間がかかっても読むべきだと思う。

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