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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ドラゴン・キングダム

2008-08-19 10:35:19 | 映画(た)
評価点:52点/2008年/香港

監督:ロブ・ミンコフ

二人のJはこんなもんじゃない(怒)!

カンフーオタクのジェイソン(マイケル・アンガラーノ)は、懇意にしている質屋(ジャッキー・チェン)に、不良仲間から強盗に入るように強要される。
止める店主に抵抗した不良仲間は、発砲してしまう。
伝説の棍棒を持ち主に返すように託されたジェイソンは、棍棒を持って逃げる途中、ビルの屋上から落ちてしまう。
気づいたとき、そこは古代中国の田園風景が広がっていた。
ジェイソンがいた村に訪れた学者のルー・ヤン(ジャッキー・チェン)は、その棍棒は孫悟空(ジェット・リー)のものだと語った。
かくしてジェイソンはその棍棒を孫悟空に返すべく、旅をすることになる。

ストーリーを書いてみると、この話がいかに荒唐無稽な物語かということが思い知らされる。
だが、そんなストーリー性などもとより誰も求めていない。
この映画の最大の魅力は、ジャッキー・チェンとジェット・リーという二大カンフースターが、初共演するということだ。
その一点にあり、その一点にしかない。
よって、ストーリーなどどうでもよいのだ。

長らく友人関係にあった二人は、今回ジェット・リー主演の企画に、ジャッキー・チェンが参加する形で、夢が実現した。
一方で、これは一つの象徴と言ってもいい。
僕はこの競演を聞いたとき、一つの出来事を思い出した。
それは、スクウェアとエニックスの合併である。
唐突に思うかもしれないが、この競演とゲーム会社の合併とは同じ記号の中にある。
つまり、両者が落ち目になったとき、仕方なく一緒に物作りをしないといけない、という意味において。
昨今はジェット・リーにしても、ジャッキー・チェンにしても、マンネリ化している嫌いがある。
もっと言えば、人々はカンフーに飽きたのだ。
同じシチュエーションで展開される物語にインパクトを与えるためには、どうしても「夢の競演」という目玉が必要だったのだ。
これがいい意味での化学反応になれば、おもしろいと思うのだが、きっと状況は打開できまい。

▼以下はネタバレあり▼

先にも書いたように、この映画の最大の魅力は、二人のアクションである。
だが、残念ながら、この映画はその要求を見事に裏切ってくれる。

物語の筋は、いわゆる「浦島太郎」型なので、わかりやすい。
主人公の青年ジェイソンが、異世界に迷い込み、また現実世界に戻ってくるという成長譚の典型だ。
その帰ってきたときに、異世界にいた少女にそっくりな娘が思わせぶりな態度をとるというのも、典型だ。
「そんなわけねーだろ」と思いつつも、世界は連続している、という世界観の一貫性みたいなものを感じさせるためには、彼女の再登場はやむを得なかったのだろう。

それはさておき、大味で何のひねりもないようなオーソドックスな展開だが、致命的ななのはやはりアクションだ。

この映画を観ていて、素直に感動できるカンフーファンはいまい。
この映画が少しでもおもしろいと思えたのなら、「酔拳」を見直すべきだ。
あるいはジェット・リーがリー・リンチェだったころの作品を見直すべきだ。
そうすれば、僕が言っている意味が少しは理解できるだろう。

彼らの魅力を出し切るアクションになっていない。
僕が感じたのは、彼らの加齢による体力の減退と、スピード感のなさである。
ああ、彼らも年をとってしまったのだなぁ、と素直に悲しかった。
全然彼らの魅力を出そうという気概を感じないし、ただ、これまでの経験と小手先のアクションで、お手軽に撮った、という印象しか受けない。

そもそも、武器を使ったシーンが多すぎる。
棍棒はまだいいとしても、あまりにも武器を使うので、彼らの魅力が十全に発揮されずに勝ってしまうシーンが多い。

また、アクションができない主人公は物語上いいとしても、アクションができない素人ヒロインを出すのはいただけない。
彼女らが映画的に必要なのは十分に理解できる。
だが、彼女らのアクションは、本当にけがをしないかという別の意味でのハラハラ感がある。
力が弱いのが画面を通して見えてしまい、武器を操っているようには見えない。
だから、アクションシーンが見せ場にならずに、作られた偽物のアクション、というイメージを植え付けてしまう。
どうせ女型がひつようなのなら、「グリーン・ディスティニー」のときのように、本物のアクションスターを用意すべきだった。
ジャッキー・チェンの知り合いなら大勢無名の美人カンフースターはいるはずだ。
その安易さがとても残念だ。

そもそも、「ドラゴン・キングダム」というタイトル自体が安易きわまりない。
実際のタイトルは「禁忌王国」だ。
英語のタイトルは「フォービドゥン・キングダム」。
中国だから「ドラゴン」だろう、という発想が見え見えで、偏見を助長している気がする。

雑誌「ぴあ」の満足度には高得点が記されていた。
興行収入がどれくらいになるのか僕にはわからないが、この程度の映画で制作者サイドが満足しているようでは、これから先のカンフー映画はますます衰退していくだろう。

大味な話でもいい。
無理矢理な設定でもいい。
けれど、カンフーを楽しませるアクションがなければ、きっと香港映画に未来はない。

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